ちなみにキューシートはRIDEwithGPSが自動生成したものそのままだったはず。
初めのしばらくは緩い下り。ぐんぐん進むが、忘れ物をしたんじゃないかと心配になる症候群のせいで路肩に寄せて、持ち物を確認する。大丈夫。しかしひとりになってしまった。さらに幹線道路へ出るところでウィンドブレーカーを脱ぐ。陽が射してきた。ここからは昨日の続きで北へ向かう。風が出てきているが、体を動かし初めてしばらくたっているので寒くはない。
道は緩やかだけどひきつづき登り基調。時間が経つにつれて風がだんだん強まってくる。今日も一日これかい、とうんざりする。
2時間くらいたってようやく最後尾(途中でパンク修理の数人を見たので正確な表現ではないな)の方をパス。さらに少し前方でワシントン州のブルベ団体、シアトルランドナーズの面々を見つけたのでなんとか食らいつく。
シアトルランドナーズは、正式名称をシアトル・インターナショナル・ランドナーズと言って、その名のせいなのか主立った1200クラスのイベントには必ず顔を出す人たちだ。僕らは「シアトル軍団」と呼んでいる。ちなみにシアトル軍団のリッキーというおじさんに「なんでインターナショナルなの?」と聞いたが「よくわからん。ACPと関連するらしい」と言われた。あとでシアトル軍団代表のマークに聞いてみようと思っていたが忘れてしまった。
さて、なんとかくっついたトレインはマークとリッキーのシアトル軍団に、ラスというオーストラリア人。昨日、干上がった川を渡河するときに「ここなのか本当に」といぶかしがってた人。ときどき主催のクレイグらが増えたり減ったりという小集団。
この300kmは1000mクラスの大きな峠が二つと、小さな峠がいくつかある。まず初めの1000m級峠リーバイス・パスへさしかかっているのだけど、向かい風と登り基調でペースは微妙だ。ひとりになればもっと微妙になるだろう。

峠に近づくにつれてキツくなる斜度に、もしかしたらPC1までにタイムアウトしちゃうんじゃないだろうかと、焦りながらリーバイスパスへ到着。うっすらと霧が流れている中をダウンヒル。登りも長いが、下りもそれなりに続いていて、時間を稼ぐことができた。
スタートから100kmほどはコンビニや商店どころか、民家さえ見えなかった。考えてみれば、この道沿いにはガソリンスタンドだって140kmほど無かったはずだ。そんな漠野を走り続けてPC1に到着したのは、すっかり晴れ上がって気温もヤバげなお昼頃。112km地点にちょこんとあるカフェだ。

しっかりとランチを取り、トイレや補給をすませて皆について店をでる。次のPCは約60km先のマーチンソン。65号線、通称「シェナンドウ・ハイウェイ」をずっと走るだけの簡単なお仕事だが、つらい。なにしろ暑い。そしていくら絶景でも飽きることは飽きる。とにかくグループからはぐれないようにして3時間、ただただ我慢我慢。
マーチンソンのPCはこの町であればどこでもいい、というやつ。グループにくっついてあまりぱっとしないスーパーへ入り、サンドウィッチとジュースで空腹を抑える。他の人たちはアイスクリームを食べたりしていて、ちょっとうらやましいが僕は内臓弱いからなあ。

ここからまた登り基調を60kmでPC3のセント・アーノード。地図で見る限り、街という街があるようにも思えない。湖のほとりでちょっと人家があるくらいのようだ。途中、先頭交代で後ろに下がろうとしていたところで首筋に衝撃。痛み。どうやらミツバチに刺されたようだ。いや先頭にいるときだったらわかるけど、交代して下がっているところでやられるなんて解せぬ。強い痛みではないけど、じんじんと痛むなあ。だんだんと腫れてもきた。もしかしたらこれはどんどん悪くなってしまうのではないだろうか。この300もDNFせざるをえないかも。そして今日以降のライドはキャンセルすることになるかも・・・など走らなくていい理由が頭を占めるが、とりあえず今のところ走れているので走り続けるしかない。
だいたいどのライドでも120kmあたりをすぎると盛り上がっていた気持ちも途切れ、飽きてきて疲れもあって「やめていい理由」がたくさんわき上がってくる。けれども決定的ではないのでだらだら続けてしまう。決定的でない理由で辞めたら、次もなんとなく辞めてしまうだろうという漠とした不安がある。いろいろくだらないことを考え続けているが、しかし風が強いな。ようやく200kmを過ぎた。ここを越えればゴールは海面高度まで下がる。とりあえず進もう。

セント・アーノードまでの登りは存外に緩かった。日が傾いてきて気温が下がってくれたのもよかったのだろう。メンタル的にはずいぶんやられてきている(疲労や退屈、蜂さされ、さらに10日ほど前の落車の擦り傷がふさがっておらず、ちょっと困っていた)。PCは湖畔に面した駐車場かキャンプ場らしかったが、そこに到着しても誰もいない。いや、キャンプを楽しむ人たちはいるのだけど、ブルベカードをチェックするべき人たちはいない。キャンプサイトで水をくんだり、トイレに行ったりするが、やがて湖畔から戻ったところにガソリンスタンドがあったから、そこでサインとレシートをもらおうというような話になった。本来はスタッフが常駐しているはずなのだけど、買い出しでも行ったのだろう。
と、幹線道路に出るところで見慣れたバンがやってきた。運転しているのはオーストラリアの女性だ。200kmをDNFしてスタッフへ早変わりしたらしい。ちなみに彼女はこれからほぼ一人で300と400のスタッフ&サポートをすることになる。すごい。
さて、やはり彼女はいろいろな補給物資をゴールの街へ買いだしに行っていたらしい。皆に水やコーヒー、果物やスナック菓子をどうぞと示す。ぼくらはブルベカードにサインをもらい、補給をいただいて走り出す。ここから先はゴールのリッチモンドまで70km、ほぼ下りしかないはず。いや、いくらか大きな登り返しもあるな。
ずっと一緒のグループで走ってきているが、なぜか下りでは僕の方がやや速い。平坦や登りでは引き離されてしまうので、下りで追いついて抜かして先行する感じ。体重やなんやかんやを考えてみるに、彼らの方が下りが遅い理由がないので、おそらくは意図的にある程度以上の速度を出さないようにしているようにも感じる。たぶん安全策なのだろう。
ようやく陽が落ちる。街頭などはまったくないので真っ暗だ。暗くなると気分がぐんと落ち込む。心の余裕がなくなる感じ。登りでグループにまったく追いつけない。最後の登り返しを終えると一人になってしまっていた。ここからは下りが続く。一生懸命こぎ倒してなんとかグループに戻った。斜度が緩くなると振り切られそうになるので、なんとか食らいついていく。街灯が現れた。文明に帰ってきたんだ。あの信号機はリッチモンドの町だ。交差点の一角にあるモーテルへ到着。入り口近くの部屋が受け付けになっていて、そこへブルベカードを提出。16時間ちょっと。ほぼノンストップで走ってきてこのタイム。RIDEwithGPSの累積高度よりGPSの実測値はやや低く信号もないのだから、あと1時間は早く到着するくらいが想定だ。先行きに暗雲立ちこめる。400kmは事前情報ではもっとも累積高度があるのだ。
とにかく明日は休養日。今は休みたい。
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