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【落武者魂】 本当はキビシいSR600 Fuji その二
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落武者魂

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本当はキビシいSR600 Fuji その二

 碓氷峠はそれほど厳しい峠ではない。斜度もそれほどではなく、ただダラダラと続くだけ。てっぺんに到達するとそこは軽井沢だ。少し先にあるマクドナルドへみんなで吸い込まれる。また休憩。1000kcal以上を誇るメガポテトを頼もうと思ったが、普通のメニューにしてしまう。しかし台湾の男性参加者は躊躇なくメガポテトを注文。負けた……。

 軽井沢からは浅間越という峠道を登っていく。意外と斜度があって、一気にみんなに引き離されている。でも気にしない。だってこの中の誰よりも僕は弱いから。そして弱者には弱者の生き延び方がある。肉体にダメージを与えないように与えないようにと進んでいく。実のところ、すでに全体平均速度は15km/hを割ってしまっている。これが何を意味しているかというと、通常のブルベならすでにタイムアウトしているということ。休憩を削る作戦のはずが、大休憩と雨具への着替え休憩を繰り返してしまっているので当然だ。標高が上がるにつれ霧が濃くなる。標高1400mほどの峠の鞍部に近づくと、路肩のコンクリブロックに腰掛けてk氏が眠り込んでいる。通過するついでに撮影しとこうかとか思っていたら目を覚まされたようだ。しかし気温も10度くらいだろうに、この霧の中よく眠る気になるものだ……。前日もほとんど寝ていないそうなので苦しそうだ(でも楽しそうでもあった)。



 その少し先で、先行集団が再び防寒具を着込んでいるところに追いついた。ここからは長いダウンヒルなので一旦脱いでいた雨具を着込んでいるのだろう。僕はそもそも脱いでいなかったので、そのまま下りへ突入。長野原へむけて落っこちていく。その底まで降りてしまうと空気は暖かい。雨具を仕舞いこんで近くのコンビニでまた休憩。渋峠への準備を整える。ここで時刻は午後4時半。ざっと考えるに渋峠の頂上には予定の一時間程度遅れになる。つまり睡眠時間も一時間減るということだ。ちなみに元々の予定では、上田に午前1時までに到着し、5時間の休憩を得ることになっていた。一時間遅れるということは4時間の休憩になる。もっとも7時間の余裕が有るのだから、上田からの出発時間を遅らせるというのもあるわけだ。

 そんなことを考えながら、まずは草津へ向かって登っていく。実はこの区間は草津までの登りがけっこう辛い。斜度があって交通量も少なくない。霧はあるものの、雨はもうあがっているようだ。天気予報ではもう雨は降らないはず。ほんとかな。空模様の暗さを見る限り、いつ雨が降りだしてもおかしくはないが。

 コンビニで休む台湾軍団を横目で見ながら淡々と登り続け、草津のコンビニで少し休む。バームクーヘンを食っていると、IさんとKさんがやってきた。そのまま渋峠を登っていくので、僕もそれについていく(もちろんすぐに引き離される)。すでに陽は落ちていて、街灯もない山道は暗い灰色に埋められていく。この峠は……長い……。

……長い……暗い……。

 ああ……ようやくこれは……殺生河原か……。
 停車するなとか言われても、どうしようもないよなあ。停車はしてないよ……ただ遅いだけでさ……。

 もっとも殺生河原と言われても見えてるわけじゃないんだよね……匂いでわかるだけ。

 とか思っていたら、どこからかブザーが響く。「有害ガス濃度が上昇中、危険な状態になりつつあるので、速やかに移動するように」のようなアナウンス。そういえば風があまり吹いていない。ガスが溜まっているのかな……。

 殺生河原を越えているということは、森林限界も過ぎているのではないだろうか。おそらく日中ならば上下方向に雄大な景色が広がっているはずだ。でも、今ここから見えるのは闇。ただ、なぜだかその闇の先には何もない空間がひたすらに広がっているということは肌で感じられる。

 標高は2000mを越えている。
 霧が濃くなってきた。そんな時に、路肩に自転車を寝かせてIさんが座り込んでいる。どうしたのだろうと声をかけると、脚が攣りまくるのだという。その先ではKさんが佇んでいる。眠いのだという。あたりは完全に闇。自転車のライトだけが煌々と霧を照らす。パラパラと弱い雨が降る。渋峠では天気予報などなんの役にもたたない。もし、ここで誰かが低体温症などになったらどうしようと考える。携帯はつながるんだろうか? 少し……進めばロッヂがあるから人がいるはず。あるいは自転車にまたがることができることなら、草津まで下るのが最善手か。いずれにしろ、ここに救急車を呼ぶことになっても、すぐに来るとは到底思えない。一瞬、不安がよぎる。

 ふと見ると、九十九折の下の方からいくつかの白い明かりが近づいている。台湾の人たちだろう。やはり強い。頂上近くではついに追いつかれてしまった。渋峠の頂上近くは、稜線をナイフで水平に切り取ったように道が続いていて、そこからの景色はもちろん絶景なのだけど、今は何も見えない。そして雨が強くたたきつけてきた。自転車を路肩に寄せてゴソゴソと雨具を装備する。台湾のふたりも雨装備をしている。霧も酷く、やや風もでてきた。残雪が壁のようになっているこのあたりでは、風はときに酷く冷たい。ギシギシと最後の登りを続ける。そろそろPC3の国道最高地点の石碑があるはずだ。道路の右側にちょっとしたスペースが有ってそこに。
 だが霧のためまったく見えない。
 マジかよ。
 台湾のふたりが先の方へ行っている。彼女らがいるあたりまでは石碑はないのだろうか、と思っていたが道はすでにやや下りになっている。これはおかしい。先の方で彼女らが看板が見つからないと叫んで戻ってきた。僕は看板じゃない、石碑なんだ、と叫び返してUターン。進んできた道を戻り始める。
 石碑は本当に道から3メートルほどしか離れていないはず。なんで、それが見えないんだ。ずっと道路の左側を見つめながらゆっくりと進んでいると、ふと霧が薄くなって石碑が。
「ここだッ」
 石碑に自転車を寄せると、風が吹いて霧が流された。



 普通にフラッシュを炊いて撮ると、雨粒と霧が反射して何もわからない写真になる。台湾のMさんが「別のライトで照らすから」と撮影を手伝ってくれる。そんなことをしていると、台湾の他のメンバーも上がってきた。皆それぞれ通過照明の写真を撮って、そして下りの準備を始める。ここからは標高差にして1500mほどのロングダウンヒル。ほんとはここで時間を稼ぎたいところだ。しかし霧は薄くなってきたと言っても、ときには10m先も見通せないこともある。山頂のロッヂを抜けて本格的な下りに入ったところで危険を感じて道の脇へ寄せて止める。まるで見えない。とりあえずサングラスをはずしてみると少し視界が改善するようだ。もう一度トライ。GPSをサッと見てこの先のカーブの状況を確認、霧の向こうで輝く反射光を頼りにダウンヒルを開始する。



 サムイッ! 寒すぎるッ! 体幹がブルブル震える。先も見えない。けれども僕の自転車はこんな時のために作られた。AvidのBB7ディスクブレーキはまったく不安のない制動力を発揮してくれて、ダウンヒルベタな僕でも思い切ってこの霧の中へ切り込んでいける。1600m地点のあたりで霧が晴れた。気温は8度。ちなみに1200mの場所でも気温は8度を表示していた……。


PC4の道の駅には予定の1時間遅れで到着。体は芯まで冷えきってしまっていたので、とりあえず自販機コーナーへ。だがしかしッ! なんたること! 「あたたか〜い」飲み物が無いッ! ゴウランガ……おお。ゴウランガ……。自転車のボトルをベンチの上において探すが、やはり暖かいドリンクは此処にはないようだ。道の向かいにセブン-イレブンが見えるが、ちょっと距離があるし、もう少し下れば市街地だ。そこまで進んでしまおう……。

 そういえば、今日走っている他の人達はこのあたりで仮眠を取ると言っていたな。僕だけがここからさらに菅平を越えて行くわけだ。明日の再スタートの時間も違うだろうから、もう誰にも会うことはないかもしれない。そんなことを思いながらボトルを取ろうとすると手がスカる。あ。脳裏にボトルをベンチに置いていた光景がよみがえる。っていうか、あんなところに置いたら、絶対に忘れるから注意しようとか思っていたよな……。ほら、忘れたじゃん。どうすんの?


※ボトル最期の姿

 とりあえず市街地だったのでコンビニに突入。水を買って考える。さっきのPCからも下ってきている。ここから往復すれば1時間以上はかかってもおかしくない。ボトル無しで行けるか? 明日は上田、ある程度の規模の街だからボトルか、代替品の入手も可能かもしれないが……一般的なお店の開店時間の前には通過してしまうだろう。だが戻るのは嫌だ。だらだらと決断つかずに進むと、もう湯田中の街は出てしまったようだ。空気はちょっと蒸していて温かい。雨具を着込んでいると蒸すので路肩で全部脱ぐことにした。ついでに携帯の電源を入れて「ボトルを無くした」と書き込む。
 ついでに休憩がてら読んでいると、K氏が「これから国道最高地点」と書き込んでいる。ってか、あの渋峠のてっぺんでいままで仮眠し続けてたの? あれ、ハビタブルゾーン限界を超えてたよね……。まあいい、ボトルの回収を依頼w もちろん回収してもらえなくてもそれは仕方ない。

 菅平を登り始める。
 そういえば、何年か前のスーパーアタックの菅平も雨で夜でって状況だったなあ。そもそも菅平って本当はどんな景色なんだろう? てっぺんがスキー場と宿泊街だってことしか知らないぞ。標高差は700mほど。途中で空気が冷え込んできたのでレインジャケットを羽織る。菅平に到着したのは午前2時すぎだったか。予定時間より2時間の遅延だ。ということは睡眠時間も2時間減らさなくてはならないということか。


 当初予定では1時頃に上田に到着して、6時に出発するつもりだった。5時間中、4時間を睡眠に割り当てようと。だが2時間遅れているということは、3時頃に到着して3時間休憩。睡眠時間は1〜2時間。うーん。どうせ7時間の余裕時間があるのだから、ここで使ってしまうのはどうだろう。思い切って10時まで休むことだってできるはずだ。まあ、そうするとせっかくの日中の走行時間が失われてしまうから、7時か8時……。2時間遅れたから2時間遅れてスタート、というのも良い。
 えーと考えなおそう。前半の300kmに22時間かかった。後半も22時間ですむとすれば44時間。8時間の余裕。でも疲労を考えれば、後半も22時間なんてありえないだろう。じゃあ24時間? すると6時間余る。ここで5時間使うと残り一時間。うーん、微妙。やっぱ一時間は我慢して、7時起きかな。

 菅平を下るが、すぐに寒さにやられてストップ。レインパンツも装着することにする。しかしまあ、雨や寒暖の差で何度レインウェアを着たり脱いだりを繰り返して時間を徒に費やしてしまっている気がするよ。少なくとも脱着によるタイムロスは1時間くらいはあると思う……。

 ぐだぐだと考えながら上田の宿泊予定場所に到着したのは午前3時。4時間、休むんだ……。
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コメント

* ナラクの呼び声

「愚かなりフジキド。イクサの最中にボトルを忘れるとは、カラテが足りぬわ」
2013/06/07 【ささき】 URL #u/hKjTvU [編集] 

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