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【落武者魂】 2011年のパリ・ブレスト・パリ。 もどるもどる。
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落武者魂

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2011年のパリ・ブレスト・パリ。 もどるもどる。

PC CARHAIX-PLOUGUER 残り距離527km 到着時間18:00 閉鎖時間19:21



 ブレストの次のCP、Carhaixにたどり着く頃に思ったより随分時間が押していることに気がつく。下りでブン回した割にはかなり遅くなっている。大きなアップダウンでは下りの勢いで登り返せる量が少なくなってそれが速度低下につながっているのか。CharhaixのCPで食事をと思ったが、やっぱり臭いがこもっているのでチェックだけ済ませて自転車へ戻る。こんなことならCP手前の街中のカフェで食っておけばよかったよ、と愚痴を言いつつブレストの方へ戻るように走りだし下ったところにあるロータリー沿いのマクドナルドに入る。入口にはタンデムが一台、他の自転車が数台。まだタンデムなどのスペシャルバイクがあるのを見るとほっとする。CPからの残り527km。まだPCのクローズ時間には間があるけど、眠る時間が欲しい。なんとしても。断固として。



次の中継点のSt Nicolas du Pelemは補給だけのポイント。行きはレストランテントの中のベンチで仮眠した(結局、このブルベ中に仮眠所を使わなかった。どこにあるかもわからなかったし探す気力さえなかった。仮眠所は意外と親切なシステムだったらしい)けど、今回はトイレだけでスルー。だいぶ日も・・・といっても曇天だけど・・・傾いてきた。スタッフが参加者にライトの点灯と反射ベストの着用を求めている。



 ルディアックへ戻る途中に日が落ちてしまう。予定に対しての貯金を若干削ってきてしまっている。ルディアックでも最低90分の睡眠時間、ほんとうは3時間以上を確保したいと考えているが、前後の準備&片付け時間も考えると行動予定を変更したほうが良さそうだ。行動予定といっても大したことではない。コース進行上、ルディアックPCよりルディアックのホテルが手前にある。だから本来はホテルへ入り、仮眠したあとにPCへ向かってブルベカードにチェックをもらいドロップバッグ(着替えなどの入った袋)を預けるというのが無駄の無い動きだ。しかし、現在の進行タイムからすると少しホテルで寝過ごしたり片付けなどに手間取ったりすると制限時間オーバーになりかねない。そこで無駄な動きであることを承知の上、先にカードにチェックをもらってからホテルへ戻り、休憩後ふたたびドロップバッグを預けにPCに行くことにした。動線的には2kmほどの無駄。ルディアックのPCはフェンスで作られた細長い誘導路を行かなくてはならないので、めんどくさいのだけどそれも二回やらないとならない。それでもルディアックでタイムアウトさえしなければ完走はほぼ確実と思っているので、大事をとった作戦にしたのだ。

 ルディアックへ近づけば近づくほどなかなか近くならないもどかしさを感じる。もちろん、現実にはそんなことはないのだけど。暗闇の中でアップダウンを繰り返してもさっぱり達成感がわかない。進んでいる気がしなくなる。遠くに街の灯りらしきものが見えて・・・それだってさして明るくはないのだけど・・・ルディアックかなと思うが違う。ようやく町外れかな・・・と開いているバルの戸口にたつ男が「3km!3km!アレアレ!」とか叫んでいるので、もうすぐだと思うと街が途切れる。街が途切れるとあたりはすっかり暗くなって心も途切れそうだ。ほんとに3kmなのかよ。とても信じられない。だからルディアックのなんとなく見覚えのある景色に出た時の高揚感はひと味違う。うれしくもあるけど、同時に急いで睡眠まで行動を行わねば!という追い立てられ感。まだ450kmも残っていることに気づくのだけど、なんとか一番きつい日が終わったという思いもある。とにかく一番きつい日である中日が終わった。このときはそう思っていた。ルディアックのPCでスタンプを貰ってからホテルにもどりアルファ化米の赤飯をくって寝る。

PC Loudeac 残り距離448km 到着時間22:51 閉鎖時間01:26

 最終日・・・が始まった。またまた深夜発。深夜のスタート&ライドは嫌いだ。必要も無いのにわざわざやるものじゃないと思っている。今までの1000kmを超えるようなライドでは途中からはせめて夜が白み始めるタイミングで起き上がれるようにできていたけど、今回はまるでそうならない。制限時間の問題があるのと、平均速度の問題がある。だからまあ仕方がない。とにかく1時間半は眠った。大丈夫。俺は寝た。そうだ寝たんだ!口に出す。考えるまでもなく、もはや貯金はマイナス、こっからどれだけタイムアウトまでの貯金を積み直せるか、それが勝負。積みませなくとも、なんとか次のクローズ時間までには滑りこまなくっては。完走できるか否かだけがブルベでもとめられる結果なのだ、と後席に向かって言う。実際には折れそうな心の自分へ言っている。細君の心は全然へたれていない・・・。完走できるかだけ、それに破れればパンの耳ももらえない厳しい競技なのだ。わかったか!パンの耳ももらえないのだぞ!と細君(と自分)によく言い聞かせてルディアックを出る。

 フランスの田舎道の闇は実に深い。街と街はほとんど闇の中を走っているようなものだ。街だって明るいわけじゃない。橙色の灯火がわずかに照らしているだけ。静まり返った街を行く・・・と行きにはあまり見られなかった様子が見えてくる。街の平坦なスペース、あちこちに自転車が無造作に置かれサイクリストたちが倒れ込んでいる。そのままの格好で・・・あるいは銀色のアルミホイルのようなエマージェンシーブランケットに包まって・・・。そういう人たちが大勢いるのだけど、やっぱり街は静かだ。自転車が行き過ぎる音だけが響いているかのよう。そんな亡霊に占拠されたような集落を過ぎると今度は亡霊さえいない真っ暗闇の田舎道。あたりは平原なのか森なのか村落なのかさえもわからない。そんな中でも時折、道端に赤いランプが止まっていたりしてごろ寝している参加者たちの姿。眠い・・・眠い・・・こちらにまでその眠気の呪詛が届いてきそうだ。そしてこれまでと違ったことがもうひとつあった。かなり寒い。急激に冷え込んでいく・・・。ウィンドブレーカーでは足りないくらいなのでモンベルのレインジャケットを着こみ、さらに細君はレインパンツまでも履いた。昨日までは湿気ゆえの暖かさだったのか。これからが本来の寒暖なのかもしれない。

 道半ばにして路上で明るい棒を振っている・・・スタッフが現れた。シークレットコントロール?どうやらそのよう。本来は深夜のロングライドの丁度いい箸休めになるストップだけど、今の僕らにとっては平均速度を落としてタイムアウトにさせる罠。チェックとトイレだけすませてできる限り速やかに立ち去ることにした。これで気が抜けたのか、このシークレットからあとのことはよく覚えていない。特にふらついたとかはっと目が覚めたということもないので、記憶力が低下していったのだろうか。全体的に夜の本当の闇の中でのことは思い出そうとしてもとっかかりがないので思い出せないのだ。走っている時は随分退屈で苦痛なのだけど、思い出せない。まあ、思い出せなくて幸せだ・・・。だいたい精神的にもつまってきてるし。



 そんなわけでシークレットの次のPCであるTINTENIACには明け方に到着したはずだ。予定より明らかに遅れ始めたのがこのあたり(これまでも1時間遅れだったが)。この時既に「シークレットから後のことはあまり思い出せないなあ」などと思っていたことを思うと、すでに相当やられていたようだ。なにしろふと気づいたら足首がかなり痛くなっていて驚くほど。いったいいつ、何がどうしてこんな捻挫痛が起こったのか!?おそらく記憶していないどこかでペダリングが変なことになってしまったのだろう・・・。普通にペダリングしている間はとりたてて差し障りがないので気にしないことにする。それにいつの間にか痛くなくなっているかも知れないし。さて、これまでは休憩時間を予定より減らすことで遅れを拡大させないこともできたけど、もうそれは無理な頃合い。もっとも予定時刻表の計算は後半ちょっと理想が入っていたので気にしないこともできる。それにこれ以降に大きな仮眠の予定は無いから、休憩込みでブルベルールの制限時間を守ればよいだけ。今のところ、それはなんとかなっている。自転車の走行ペースとしてはこれ以上落ちることはないだろうからPCやその他での休憩などに気を付けていけばいい。

つづく
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