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【落武者魂】 GRR1200km 長征750哩の巻
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落武者魂

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GRR1200km 長征750哩の巻

「お前は完走するとわかっていたよ」 クリストファー・ハンソン

 部屋から自転車をだすとすっかり夜はあけていた。少し肌寒い。走り出すとちょうど数人のサイクリストが来るところ。Co-Motion製のタンデムに乗るジェフとメアリー、カナダからの参加者ケン、そして薬をくれたピーター。一緒にSusanvilleからJanesvilleへ走る。僕も Co-MOtionのタンデムを発注しているんだ、とか話す。ジェフとメアリーは「君は奥さんと乗るのか。それはすばらしい。僕らは夫婦じゃないんだ」とのこと。彼らの配偶者たちは自転車に興味がないので、自転車ライドで知り合ったふたりでタンデムライドをしているという。案外、そういう人たちは少なくない。夫婦ともに自転車に乗ると言っても1200kmを付き合ってくれる人はそうそういないだろうし。



 さあ、ついにやってきましたJanesville grade。平均斜度10%以上、最大19%。800km以上走ってきて現れる悪魔の壁。ここで集団は解散し各々のペースで走ることに。僕は29Tの力と 4時間の睡眠、そしてまだ本格化していない胃腸のトラブルという状況を利用して、脚をつくことなく登りきった。ただし蛇行(Tic-Tac=蛇行)を駆使して。800kmを超えてでてくるから恐ろしい感じがするが、そうでなければちょっときつい程度の坂でしかない。19%超の部分は数百メートル程度でしかない。舗装があれてたけど。ただ見ている範囲でも何人かは押してあがっていた。登れないと言うより、ここで無理に脚を使いたくないということなんだろう。





ふたたびGRR最高地点。そのアップダウンを繰り返すが、さすがに体力も多少は回復して睡魔も去り、往路よりも景色を楽しみながらのサイクリングだ。再び訪れたAntelope lakeのCP(相変わらず食事を避けてホットチョコレートのみ)をでると向かい風が始まるものの、比較的勢いのある下り坂のため苦にならない。お昼頃にはTaylorvilleまでたどり着く。すっかり暑い。ここからもずっと下りなので気楽にしていたのだけど、気になるのは向かい風。saganoさんのレポートによると、向かい風のせいでペダルを回さないとすすまない下りなのだそうだ。大げさかな、と思っていたら近くに座っていた参加者たちがちょうどその会話を。一語一句違わず「下りだけど、向かい風だからぺダリングしないとなんないぜ」と。はあ。まじかよ。でも下りだからなんとかなるだろう。




ここではパスタを作ってもらった。さすがに何も食わない走行で今日の400kmをクリアできるとは思えない。しかも昨日も最低限しか食ってないわけだし。胃腸さえもうすこし頑張ってくれれば楽なのになあ。そういえば、今日の出かけに右足首が痛かったけど、回しているうちになんともなくなった。でも傾けるといてえな。傾けなきゃいいや。

900kmをともにしてきたキャメルバッグをドロップバッグへしまう。結局水を入れることはなく、ただの防寒具入れで終わった。ここからは気温もあがるし薄手の長袖ジャージとウィンドブレーカーだけあればなんとかなるだろう。

Taylorvilleからも下り。ここから先はTobin resortの先にあるJarbo gapという初めに登った峠以外はまともな登りは無いのだ。心の中ではすでに大勝利!便意が襲ってくる以外にこれほど何もないブルベでよいのだろうか?そんな楽なことが僕に許されているのだろうか。許されているのです。


向かい風のせいで速度が伸びないけど”遅くてもいいや走法”の僕には関係ない。やがてさっきのタンデムたちが追いついてきて接続。こういった長い緩やかな下りでのタンデムの勢いといったら。向かい風など苦にせず、まったく手を着けられないあばれっぷり。



Tobin resortまであっと言う間に到着。PCH randosの人たちがいたので「この向かい風、Davisまで続くのかな」と聞くと「違うといいけどな。でもずっと続くと思うぜ」とのこと。彼らは同行の女性のペースにあわせて走行しているようだ。たしかTwitterで実況しながら走ると言っていたはずなので、そのことを聞いてみると電波が通じなくってできなかったそうだ。確かに僕の電話もSusanville以外では電波が入らなかった。



Tobin resortでもしっかり食って(トイレもしっかり二度行って)、ジェフやピーターたちと走り出す。Jarbo gapのところでタンデムのジェフたちが先に行ってくれとのことなのでOrovilleで会おうと先行することに。Jarbo gapも北側からだとそれほど長い峠ではなく、暑すぎない日差しの中で気持ちよく上り終える。その先は行きには暗闇の中に小さく赤い灯火が並んでいた坂。を下る。スピードはでるが路面のひび割れがひどい。腰を浮かしっぱなしでも何かが漏れでてくる気配はなかったので、その姿勢で下り続けていると何かカツン!という音が。なんだろう?と思ってふと手元を見ると何かが・・・あ!GPSが無い!フルブレーキで減速し、Uターンをしたところでストラップでなんとか脱落を逃れたGPSがぶらんとぶら下がってるのを発見。しかしホルダーは壊れてしまったようだ・・・。






ここから先にこそGPSが必要になるのに面倒なことになったなあ、と思いつつミスコース。いきなりこれだよ、と復帰。前のLA600でGPSをバッグにしまったまま走行しているのでなんとかなるだろうとは思うものの厄介は厄介だ。やがて景色が荒野から住宅地に変わりOrovilleのCPへ到着した。

まだ18時40分ごろとあってスポーツジムも営業中。入り口にもうけられたスタッフ席で到着を報告しトイレへ。ここにはシャワーもあって、なぜかそちらへの方向指示に日本語も。GRRスタッフが書いたの?それとももとからなの?GRRスタッフだとすると、僕のために?結局よくわからなかった。



長いトイレをすませると、タンデムのジェフとメアリー、ピーターらがこっちへ来いと。俺たちはシャワーを浴びるがどうするかと言うので僕は浴びない、少し寝ると答える。じゃあ、起こしてやるよ、ということになったので部屋の端へ行きヨガマットをしいて横になる。ということはここから先はみんなで一緒に走ることになるな。GPSを失った僕にはこの上ない助けだ。

スタッフが枕と毛布を持ってきてくれるが、こんなに明るく真上に蛍光灯もあり、あたりはがやがやしていてやかましいのに寝れるわけもないよな、と思っていたら起こされた。まったく記憶にないが1時間弱は寝ていたらしい。驚き。



今から出発するグループは7台8人。残り130kmを向かい風と平坦、そして迫り来る夜に立ち向かって走る仲間たちがそろった。時刻はサマータイムもあって20時を回っているがまだ明るい。あと1時間くらいは明るいはずだ。妻には2時くらいに到着するとメッセージを送ったが、それはあまりに希望的な予想だった。タンデムに引っ張ってもらいながらも、僕らの体力は徐々に削られていく。前を走る大柄な参加者の足下が素足にサンダルであることに気づく。聞いてみると「左右どころか前後にも自由にうごかせるんだぜ」と言う。それはただのサンダルとフラットペダルか!固定すると足首が痛くなるからずっとそれで走っているとのこと。もう何年も。ピーターからも「そういうレーサータイプのクリートよりMTBタイプの方が楽だぜ」と言われる。それぞれの人がそれぞれの考えでいろんなことを試行錯誤している。それがブルベのおもしろいところ。誰かが教えを垂れる「効率」なんか関係ない。自分のやり方を突き通して走るからこそ1000とか1200とかを走る力がでてくるのだ。リカンベントがいてシングルスピードがいてフラットペダルがいて荷物満載のツアラーがいて、誰もが正しい。

あっというまに深夜。レシートチェックのコンビニでたむろっていると、クルマでやってきた若者が「バイクがたくさんだな。お前らヘルスエンジェルスかい?」と言ってくる。ばかばかしいけど、このセンスが楽しい。誰かが「そうだ」と答える。もちろん。



そして真っ暗。街灯も何もない水田地帯を僕らは走る。GPSがおっこってるのでスピードも何もわからない。気分的にはローラー台をこいでいるのと少しも変わらない。しかも向かい風のせいで速度がでているようで実際には期待ほどでていないようだ。そして皆の相対位置が変わらずひたすら直進していると、動いているのかどうかもわからない。昔、中島悟が「たくさんのクルマがものすごいスピードで怖くないですか?」と聞かれたときに「みんな同じスピードだから怖くないですよ」と答えていたが、よくわかる。暗い部屋でみんなでローラー台をこいでいる状態というのが今の僕らだ。暗闇の中、遙か遠くに赤色 LEDの明かりがチラチラ見えるが追いつかない。それは結局PCH randosの明かりだったのだけど、最終的に彼らは僕らより1時間先行していた。つまり1時間先行している人の光が見えるような距離感で僕らは走り続けていたわけだ。



やれやれ、いい加減走ることにも飽きてきた。Orovilleまでは盛り上がっていた気持ちも、あまりに変わらない・・・130kmにわたって夜の水田・・・光景にやられてきた。心が疲れてくるのだ。でも、ここで萎えたと集団から離れてしまえばもっと厳しいことになる。なんとしても離れることだけは避けなくては。

歌を歌う。ゴールドラッシュの歌を。さよならブルベ。1200kmを走りきればとりあえずひとつの終末を迎える。ひとつの・・・区切りだ。もう終えたい。早く終えたい。200kmでも300kmでも400kmでも600kmでも1000kmでもいつも早く終えたいと思っている。早くかえって暖かいシャワーをあびてふかふかのベッドに眠るのだ。もうこんなのはやってられん。最後のシークレットコントロール。午前1時をまわってこの寒い中、料理を用意した野外コントロールを用意して待っているスタッフの方々には頭が上がらない。マッシュポテトはどう?アップルパイはどう?と明るく振る舞ってくれる。妻に3時半ごろになるとメッセージ送信。また、あの退屈な平坦に戻るのか。

もう本当にへとへと。脚は回ってるし便意は降りてきていない。気持ちだけの問題。心はとっくに折れてる。折れてなお、走る。だってどこにやめる理由があるのか。やめてどうなる?早く終えたいという一心が集団に食らいつかせ続ける。思えばこういう集団でゴールまで行ったのは2月末のSD400以来かな。いつも一人だから。


唐突にゴールの公園へ。ここ自体が町外れだから盛り上がる要素がない。深夜なのでなおさら。駐車場へ入り受付小屋へ。自転車をたてかけ、ドアをあけて「one-thirteen,Sato」と、告げた。コングラチュレーションズ、と皆が口々に言う。コングラチュレーションズ!今ここに僕のGold Rush Ranonneurs 1200は終わった。今はとにかく眠りたいだけ・・・。

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