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【落武者魂】 [LA600km 1017 RUSA]第三話
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落武者魂

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[LA600km 1017 RUSA]第三話

 ああ、少しだけ大事なことを忘れていた。木曜日の天気予報ではこの週末は気温20度くらいということになっていて、夜間に峠を登るので思い切ってウィンタージャケットを持って来ていた。ただベースメントはいつも通り、半袖ジャージを略することにして昼間の暑さに対処、という感じ。昼間は背中に背負ったキャメルバッに冬装備をつっこんでおく。・・・と暑い・・・。陽が昇って来たらぐんぐん気温が上昇、どう考えたって20度とかじゃあない。つうか曇りのはずだったよね?追いついて来たライダーに「天気予報じゃ曇りだっていってたのにー」というと「そーそー、気温5度以下も覚悟してたんだけど、木曜”夜”の天気でがらりと変わって一部じゃ100度(30度を遥かに超える)もありうるってよー」とのこと。なんだそりゃあ。ついにダブルボトルの水を全て飲み干し、立ち止まってジャージを脱いでスキンズだけに。もじもじくんそのものの姿に変身・・・。下着で走ってるみたいな気分だ。休憩地点で「お前真っ黒い格好だけどどうなのよ?」とリカンベント乗りに言われる。「死にそう」と返す。彼はそのあと上半身裸になってルートへ復帰していった。

 さすがに小さいキャメルバッグには脱いだ冬物長袖ジャージは入らないのだけど、なんというのかバッグのベルトにくくりつけるようにしてクリア。昔の兵隊の背嚢みたいな感じになってしまっている。問題なのは大量の汗がお尻のシャーミークリーム(自転車用パンツのパッドとお尻の間の潤滑クリーム)を流してしまっていて、さらに水で濡れたパッドのせいでお尻の穴と毛がこすれて痛くなって来ていること。ジャーミークリームをけちったのが悪かったか。今回はシャーミークリームを持っていたのでトイレのたびに塗り直しでクリア。つうか、座り方がおかしいんだな、そこはパッドにあたらないはず。うーん、しばらくちゃんと乗ってなかったからなあ・・・。

 しかし自転車でバッグを背負うのってものすごく否定されることが多いけど、ウェアをいくつかつっこんどく程度なら特に問題は無いと思いますよ。登坂が続くと少し肩がこるなあとも思うけど、搭載量を欲張らなければ大丈夫。かと。




 さて、グレッグが戻ってこない。ようやく戻って来たら「胃が痛いんだ」と。僕も良くなりますよだいたい400kmくらいから。でも今回はまったくその予兆がないなあ。いいことだと内心で。リサがグレッグに「ジュンも一緒に走ってくれるって」と伝えると「ありがたい!でも少し待ってくれる?」はいはい、もちろん。

 そのまま彼は床に寝転がってしまう。どうも体調が悪いようだ。どういった類いの体調の悪さかはわからない。僕も相当お腹が悪くなることにかけては知っているので、その類いならトイレを恐れつつも走ることはできるだろうと思う。彼はこのブルベを主催しているPCHランドナーズの会長で、ベテラン。速さはないものの、淡々とペースを守ってクリアしている。一般参加者と走るときには後方をまとめて走っていることが多い。彼らと走ればペースを整えられるし、多分仮眠も考えがあるだろう。これは助かるし、闇の中をお互い単独で走るのは辛いから。

 結局、前に出発した人たちの1時間遅れで僕らもスタート。今思えば少し横になってうつらうつらしておけばよかったなあ。もう外はすっかり暗くなっていた。彼らのタンデムは初めのうちこそゆったりだったものの、だんだんと調子が乗ってき30km/h弱で安定する。なんだ、これなら大丈夫だろうと併走。登りではさすがに待たなきゃならないけど、下りでは見失うほどの差がついてしまう。いずれにしろ、このあたりは前回の300ブルベと同じルートなので気が楽だ。

 見るからにつらそうだったグレッグも、落ち着いてきたようなので(英語スキル的に)がんばって世間話をしたり。これならつらい夜もだいぶ楽になるなあ。

 待ったり待ったり待ってもらったりしながらも、悪くないペースで「ここより先80km商店なし」のマクドナルドへ。9時くらい。次のコントロールはインフォコントロール、その先が80キロ先のブルトンという町で、そこには4時55分までに到着すればいい。200メートルと500メートルのヒルクライムを含む田舎道の山岳というのが悪いニュースだが、なんやかんや言って7時間ほどあるというのは良い情報。ブルトンには仮眠所が設置されているというので2時間以上休んでもCPのクローズタイム前にリスタートできるかも。そっからがんばればCarpentiliaの町まで100キロも走ればバイクショップがある。うまく行けへっどを調製してもらう時間もとれるかもしれない。


いい自転車に乗ってるな!?ドナルドよお!?  !?

 ところがグレッグはマクドナルドのプラスチックのベンチで倒れたまま動かない。リサもいくらか食べるとテーブルにつっぷして仮眠。僕も背もたれによっかかって目をつむるものの、眠るには至らない。残り時間とコースを考え続けてしまう。

 ようやく10時半をまわって動きが。グレッグがものすごく寒いと言い出す。いや、たしかに僕は冬装備だし、あなたは薄着だけど・・・そこまで寒くは無いよなあ。明らかに彼の目の下が青い。遠回しにリタイヤをほのめかすが、そのつもりはないかのよう。あるいは僕が一緒にいるから悪いと思っているのかもしれない。そうだったら悪いことしたな・・・。いずれにしろ、ブルトンまで行けばいろんな選択肢があるよ、と自転車を準備。もうタイムアップを考えないとならない時間になってきたし。

 ややあって、しかしまだマクドナルドの店先。彼はもううずくまってしまって動けない。もう続行は無理なのは誰の目にも明らか。リサが「You had better go」と僕に。いや、僕も付き添いますと言うのも彼らの負担になるだろうと、一人での出発を決意する。辛い。あそこでどうやって助けを求めるのか、自分があの立場なら途方にくれてしまうところ。電話は・・・彼らの電話はつながるだろうか。僕の電話は電波がとれなかった。店の人に電話を借りることはできるだろうが、少なくとも僕がブルトンにたどり着ければ状況を報告できる。しかし同時にもとより一人で走っておけば2?3時間は余裕ができてたなというセルフィッシュな思いも。一緒に走ったことにまったく悔いはないけど。

 しかし、こうなってくると俄然足が回るようになってくる。なんだか高揚してきたほど。歌を歌い、ケイデンスをあげて真っ暗闇っをつっきっていく。もはや楽しいとまで言えた。なんというこのわくわく感。峠もその調子であっさりと突破。インフォコントロールまで全体平均速度を回復し、つまりタイムリミットまでの余裕も増やせた。ここらで320キロ、20時間ほど。つまり300キロなら20時間を切っているわけで、十分まにあう。月曜日のことを考えなければ。

 その次のルートで快進撃も終わる。一番辛いセクションと見込んでいたところだ。おそらく腹が減っているんだと思うが、なぜだか補給食に手がでない。長い登りが続く。1台の車がすれ違い際に僕に道を聞く。知るもんか。しかしよく彼も12時頃に半径20キロはろくな集落もないような場所を走っているサイクリストなんかに声をかけるものだ。つうか、乗せてってくれ・・・。

 前を走るライダーとは3時間ほどの差があるはずだというのも気を重くさせる。でもこの500メートルの峠を越えればあとはダウンヒルで次の有人CPへ行けるはず。2時半くらいかな。と、思うものの闇が心をさいなむ。長く緩い登りが続く。なかなか高度があがらないのがいやな感じだ。と、残り1キロを切ったところで残り高度が100メートルほど。やっぱなにか腹に入れておくべきだったと29Tを使って10%超えの坂としばし格闘。街灯が少ないというか皆無なので、流れ星がキラリ・・・というよりギラリと流れるのが見える。オリオン座も美しい、ふと見上げると満天の星空だ。他のグループがここらで寝転がって星空を眺めたというのを後ほど聞くことになったが、そうするだけの勝ちはある。

 登り終えてさてさあ下ろうと思うが、路面が思ったよりひどい。見通しも悪く20キロ以上は出せない。ちょっと不安になって自転車を止め、ハンドルを揺するとやっぱりひどい。ヘッドセットのボルト?が手でゆるむ。ベアリングまで見えてしまう。深いため息。自転車にまたがったまましばしハンドルにつっぷして目を閉じる。こりゃだめかもなあ。

 さらに残念ながらダウンヒルは期待していたようなものではなかった。少し下って、少し登っての繰り返し。ときどき走りながら手でヘッドを締める。ようやくブルトンまで下ってきたらなぜだか恐ろしく寒い。高度は下がっているのになんだこれは。なんとかブルトンのモーテル6へ到着。午前3時半前。CPになっている213号室へ入り、ヘッドの調子が悪いんだけど工具借りれますか?と言う。工具はあるわよ、その前に寝る?食べる?とスタッフのキャシーが聞いてくるので「とりあえず寝る」と床に倒れる。グレッグたちが体調不良で前の補給地点で止まってることを告げる。それはすでに伝わっていて、なんらかの解決が行われていたようだった。ほっとしつつとりあえずうつらつら。部屋に出入りする人たちもいるので寝た実感は無いけどいつの間にか5時20分頃になっていた。ここのクローズに対し40分ほどのビハインド。工具箱を見せてもらうが、レンチがかろうじて一個だけ。締めてもやはりうまくいかぬ。あーもう、だめだ。いろいろ思いはあるものの、なにより走る気がぜんぜん無い。しばし自転車を見下ろし、それから彼女に振り返って「DNFします」と告げた。



 それからベッドに倒れて目を瞑るとこんどはすっかりと眠れた。2時間ほどで目を覚まし、あまりに臭いので顔を洗う。着替えをここへ送っておけば良かったのだけど、ゴールまでほぼ休まず走りきるつもりでいたので荷物は全部向こうだ。幸いにもクリートカバーだけはある。ふとメンバー表をみるとDNFがやたら多く見える・・・ってなんですでに10人も死んでるのよ? 朝飯を食べながら聞くと、どうもあのイヤなセクションとイヤな寒気のあとにモーテルで休んでいるうちにリタイヤを決めてしまった人が多いようだ。特に部屋をとっていて着替えも送っていたらもうだめ。なにしろ、ブルトンでやめると巨大なスタッフカーが待っているというのが最悪。

 それでも先頭は26時間でゴール。コース設定者でリカンベントの彼は、途中途中でコースの注意点を携帯メールで発信しながらのゴール。次は例のクリス・ハンソンだったようだ。まだ結果はみていないけど完走者が50%を切ってるという妙に完走率の低いブルベとなった。ブルトンを出発できれば、ほぼ完走できたようだった。やっぱり悔しいね。
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