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【落武者魂】 [LA600km 1017 RUSA]第二話
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落武者魂

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[LA600km 1017 RUSA]第二話

 闇は心を蝕みます。沈黙のまま集団が進んでいきますが、単独になったら辛いだろうなー。日本の闇とは何かが違うように感じるのは、やっぱり自分が異郷にある人だからでしょうか。闇が僕を拒絶しているようにも思えて来ます。そしてこういう無駄なことばかり心に浮かんでくるから嫌なんだよね。とはいえこの季節だと12時間くらいは闇の中を走らないとなりませんから、心を強くもたないと。

 霧もでてきた。いきなり何も見えなくなる。なんでみんな速度を落とさないでいけるんだろう?路面もひどくてディスクホイールを履いているエリックのリカンベントの近くにいるとガンガンと音が。自分自身も何度が穴に突っ込んで、ハンドルが前に下がってしまいました。いきなりこれか。しかもケアレスミスでライトの充電がカラになってしまっていることが発覚。3灯つけているので1灯なくてもいいのだけど、念のためにC2.1Eは残しておいて乾電池ライトで走る。周りはなんだか知らないけど、超強力なライトばかり。C2.1が弱く見えるもの・・・。

 霧が濃くなってのダウンヒル。怖くてついていけない。ちょっとぼんやりすると上下感覚が麻痺してしまうから。この何も見えなさをカメラに収めようとしたらカメラが無いとあわてる。路面が悪くて跳ね回っているのでどこかでふっとんだのか。さっきはGPSも台座からふっとんでいったものなあ。カメラが無いとかなりしょんぼり。ちょっとトラブル多すぎ・・・。CP1でライトは見つかったのだけど(バッグの中がぐちゃぐちゃになって奥に落ち込んでた)気分はかなりナーバス。自分でグリスアップしたヘッドセットも大丈夫かねえ(大丈夫じゃなかったわけです)。

 モントレーの近辺ではすでに一人旅。80km地点のCP1までは単独になりたくなかったなあ。多分自分の前に10人くらい、後方に8人くらい(全部で20人か19人だと思う)。いきなりアップダウンがあったからジョーンズ夫妻のタンデムなんかは遅れてしまったようだ。一緒に走りましょうと言っておいたのに、悪いことしたな、とか思いつつ有名観光道路17milesドライブを数百メートルだけ走って太平洋岸自動車道(PCH)へ出る。キューシートに「ここから40km補給不可」とあったけど、まだ暗くダブルボトルも半分以上残っているのでCP1まで直行することにする。あとで「80km補給不可」という荒野の山岳があるのだけど大丈夫かなあ、トイレ的に。

 右足は足のアーチを支えるテーピング、踵からアキレス腱を支えるテーピングもしてみて、クリートも前日にずらしてみたのが正解だったのか、思ったより問題無い。でもあまりトルクをかけずくるくるだらだら走ることにする。アップダウンが続いてペースがあがらないけど、悪くならなければ問題無いだろう。うーん、これは行けるかも。若干の追い風もあって心が乗ってくる。だんだんと空が茜色に。茜色の夜明けが近づいてると口ずさみながら走る。いや、これがまた素晴らしい光景。紫雲がたなびき、うっすらと明けていく荘厳な海岸線。なんという美しさ。今俺は仏陀に祝福されてここにあるのだ

 でもカメラは無い。なので記憶だけにとどめるしかない。ずっと変わりゆく空の色を眺めつつ第一CP Big Sur General shopのあるあたりに到着・・・するけど無いなあ。Big Surはキャンプ施設とかそういう感じのホテルとかが点在しているエリア。キューシートの距離あたりには何もなかったので1マイル程もどったところの店の人に「この紙に書いてあるここって、これ?」と聞くと「3マイル先だぜ」とのこと。やれやれ。停車のついでに、下がってしまったハンドルの角度を直す。しかしまあ、随分下がったもんだ。ハンドルを揺すってみたりするが、まあ大丈夫っぽい。

 次のライダーがやってきたので「ここじゃないよ」と言う。「え、そうなの?」といいつつかれも確認。先に出て行った。少しあとを着いていく。しかし行っても行っても当該の店は無い。かなり登ったところで彼は停まり「もしかして通り過ぎちゃったかなあ」と。いやー見てないぜーというと彼はCPの店へ電話をかける。どうもこの山をさらに登ったところにあるようだと確認がとれる。ほっとした。

CP1ではレシートを受け取るために朝ご飯を購入。ブレックファーストブリトー。けっこう大きい。そして熱い。なかなか食えない・・・。しばらくふたりでもぐもぐしていると、リカンベントの二人が到着。さらにジョーンズ夫妻のタンデム。初手から結構遅れちゃってるね、という会話をして僕らは出発。たしかに80kmを5時間近くかけてしまっている。おかしいなあ、そんなにまでスローペースだった記憶も無いのだけどなあ。



 登りあれば下り有り。でも平坦がちっとも存在しない。伊豆みたいな感じかな?延々とそれが続く。CP2までは100km近くあるのだけど、後半は補給できないので補給地点がキューシートに紹介されていた。しかしリカンベントやタンデムには過酷な道じゃないかね、これは。













 いやー景色だけは本当にすばらしいなー。でも飽きた。飽きた頃に補給地点へ到着。ダレダレ状態の人たちがくつろいでる。



 やたらでかいツナサンドイッチをゆったり食う。なぜだか結構みんなゆったり休むんだよねえ。だいたいこのころで8時間経過かな。このペースだと寝なくても36時間くらいかなあ・・・。みんな景色がいいからまったりなのかな?とか思っていたが、このころ既に先頭は200km突破していたはず。うーむ。



 ようやくアップダウンが緩くなる。追い風も復活、期待していた程ではないけど平均速度が30km前後まで復活する。リカンベントの人たちも楽しそう。しかしこのカーボンリカンベント、僕の鉄血長征号より全然軽いのです・・・。





 モロベイへ到着。たしかサーフィンなんかで有名。湾の中央にモロロックという岩があります。強烈な向かい風が続いて僕はスローダウン。しかし、なんか有名なコーヒー屋なのか、皆がそこでくつろいでいる間にごぼう抜きです。どうも視界に全員が入らないくらいの5名程のゆるーやかーな集団?が形成されているような模様。モロベイの先の街のラルフズというスーパーマーケットがCP3。200kmくらいだったかな。はじめの160kmで2000メートル以上登ったねえ、みたいな話をした記憶があります。今回は一応7000メートル超とアナウンスされてるからねえ、というような会話。SD1000が初めの600kmで9000メートルくらいあったから、なんとかなるだろうと思っていたけど、僕自身は月曜の朝から外せない用事があるんだよな・・・と嫌な気分。翌日どうとでもなるのだったら、走行終了後、バタンキューしてそれからゆっくり帰ってもいいんだけどねえ。

 ふと自転車を前後にゆすると・・・ガタガタ・・・というかがっこんがっこんしている。ヘッド周りにあふれたグリスがてんこもり・・・。さらに暗い気分。手でまわせるところまで締め込んでみるが、どうにもなるまい。

 走り出すとリカンベントチームが「あと少しでビッキーの家だぜ」と言って追い抜いていく。足首を労って追わない。ビッキーは参加者の独りで、この「ゆるやかな集団」になぜかまじっている。なぜか、っていうのは彼女は恐ろしく速いライダーのひとり。こないだの300kmブルベの後半を用事があるから問いって150kmを3時間ちょっとで帰ろうとしだしたほど。さすがに周りが着いていけず諦めてたけど。彼女の家がCPになっていて、食事なんかも用意されているはず。さらに工具だってあるだろう。そこまで行けばなんとかなるかな。

 

 モンキーレンチが一本のみ。うーん、とりあえずこれでやってみるしかないな。でも工具がちゃんと揃っていても出来なかったのだから、どうにかなるものでもないだろう。とにかく残り距離をごまかし走れればいいのだけど、と締め込む。作業が終わってからブルベカードにサインをもらう。予想していた最低の時間にはまだ間に合っている。こっから先が本当の山岳だけど、まだ大丈夫っぽい。豆料理と吹かし芋を食う。30分程で出発する人にあわせて出ようとするとジョーンズ夫妻のタンデムが到着。お、遅れを回復しているみたい。グレッグはあたふたとトイレへ。リサ・ジョーンズが「15分で出るわ、遅れを取り戻したい」と話しているので「僕も一緒に行くよ」と、彼らを待つことにする。ちょうど陽が沈んでしまったところ最後方を一台で走るのは不安だろうし、遅れがちな僕も12時間の闇を独りでくぐり抜けるのはあまりに辛い。

 でも、グレッグ・ジョーンズはいくらまってもトイレからでてこなかった。

 つづく(明日書きます)
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