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【落武者魂】 2017年02月23日
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落武者魂

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2017年02月23日

JT2LV 300km "荒野の2輪"

まず、こちらを観ていただきたい。

JT2LV300

見渡す限りの大平原。抜けるような青い空。笑顔あふれるサイクリストたち。暗くなりゆく西部の大地、その彼方に輝く不夜城、ラスベガス。
U2のアルバム名にもなったジョシュアツリー国立公園から州境を越えてラスベガスまで300kmのワイルドで楽しそうなライドにしか見えない。累積高度も2700m程度できつそうには思えない。これはぜひ走ってみたい。走ってみたいと思うでしょう?

ライドの説明によれば、出走の前日にサンタ・アナ空港まで迎えに来てくれて主催者宅で少し休んで翌朝午前3時からスタート地点であるジョシュアツリー国立公園付近へ移動。走行後も主催者の車で戻ってくることができるという。大変ありがたく主催者のWillie氏に頼ったが、僕以外は主催者宅に泊まった人はいなかった。
彼の家は技術者工作者の天国のようなところであったけどその話は割愛する。超巨大な壁掛けディスプレイでダウンヒルの映像を見せてもらっていたら、動画酔いしてしまったのでほとんど食事も取ることができず寝込んでしまった。

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この日の天気予報は「朝にかけて霧雨。その後曇り」というもの。だが幸い雨は降っていない。乾燥と補給の難しさを考えれば曇りくらいが丁度よいのではないか。むしろラッキーなのではないか。そう思うことにする。
雨具防寒具はスタッフ(といっても2名)の車で(2台)PCまで運ぶよ、とのこと。僕は今後のこともあるので自分で背負って走ることにするが、ゴアテックスレインジャケットなんかいらなかったなというのがこの時の思い。

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スタート後はしばらく固定ギア3台を含む集団に入って快走。固定ギアの人たちは「速い」。ひとりは女性で全米で初めてSR600を取得したという方。その固定でかと聞いたら200kmしか固定では走らないと笑った。あと一人知った顔でシャイという男性。もう8年くらい前に知り合った人で、ちょっと頭がおかしくって1200kmも固定で走るやつだ。10日くらい前にFaceBookでかかとの骨が割れてるレントゲン写真をあげていたので「大丈夫なの?」と聞いたら「自転車は片足で漕げるから。やばかったらPC1でやめるつもりだから」とか言っていた。ちなみにしっかり完走して「大丈夫じゃなかった! 痛かった!」とかニコニコしていたので、やっぱりちょっとおかしいのだと思う。

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初めの登りの途中でウィンドブレーカーを脱いだ。

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ひとつめの峠の下り。残念ながら向かい風であんまり速度が乗らない。本当に残念。だって今回のコースは片道かつ一直線に北上するだけのものだから。つまりほぼ全線で向かい風ということになる。

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塩田。

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”頭のおかしい”シャイと長大編成の貨物車が通過するタイミングを待つ。この先がPC1。約100km地点。

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ルート66! コースを逆行すればさほど遠くないところに「バグダットカフェ」があるはず。
この写真にある幾つかの建物のある場所がPC1。スタッフの車で給水し、こぶりなマフィンをふたつほど食べた。だがそれだけ。ちゃんとした食事を摂ることができるのか不安なまま再スタートしていく。

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PC2であるKelsoは「No Service」だそうだ・・・。腹減って死ぬ。ここはモハベ砂漠の中心地。かつ二番目の上りの途中だ。コースプロファイルを見たときはなめていたが、1000m近く登るのだ。恐ろしく単調な道を。もう飽きたよ、大荒野。

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巨大な砂丘であるKelso duneを横目に見ながら・・・巨大なんだけど、ちっとも巨大に見えないこの大荒野・・・Kelso Depotへ到着。第二次世界大戦の輸送路の要として発展した土地だそうだ。それと刑務所。とはいえ、現在残る建物はかつて食堂と宿舎を兼ねていたという駅舎と、向かいの郵便局? だけ。 

PC1を出てから誰とも会っていない。このPCもスタッフの車があってマフィンをひとつとポテトチップスをボリボリ食う。手持ちの補給ジェルを整理。しばらくダラダラするけど誰も来ない。残り130km。

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またもやひたすら登る。3%前後なのだけど、速度は全然でない。弱りすぎだ。疲れて疲れてどうしようもないが、本当に同しようもないのか、エネルギーが足りないのかわからない。でも本当に速い人達ってあんまり食べてるイメージないんだよね。
なんか足を止めたいが信号が全く無いので30〜1時間ごとに「仮想信号待ち」をすることにして少し休んだりストレッチしたり。だんだん自分に甘くなってくるが、現実は甘くなってくれない。

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だいたい登りきっても景色は変わらない。標高1300mでも峠の鞍部があるわけでなく高原に導かれているだけ。この競技、ほんとうに楽しいか? もうやめたい。引退したい。

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このサボテンのような「木」がジョシュアツリー。ジョシュアが神に祈るような姿だから、というがまったくそうは見えない。
このあたりで立ち止まると「キーン」という耳鳴りが聞こえてくる。静かすぎるのだ。

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おお、見よ。ゴウランガ・・・。虹が。

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背中方向から伸びゆく強烈な太陽光が、進行方向の先にある雨に散乱して虹がうまれているのだ・・・。この意味をこの時の僕は知らなかった。

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下りなのに向かい風で漕いでも20km/hをだすのも精一杯。そしてどこからか湧き出す雨雲。雨粒がひゅんひゅん飛んできてウィンドブレーカーを濡らす。しかし絶対的な湿度が低いので濡れるまでには達しない。今のところは・・・。

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後一時間くらいは明るいはずだったのに、雲はドンドンと厚くなるばかり。雨足も少しづつ。ここはモハベ砂漠。なぜ雨。さむいしぬ。
最後の登りに差し掛かるところで完全に日が沈んだ。真っ暗だが、ラスベガスには近づいているせいか車通りがいくらかある。道は広いが路肩は狭いのでいくらか緊張する。こんな時間、こんな場所に自転車がいるとは思っていないだろうから。上りの途中でゴアテックスレインジャケットを着込んだ。いままでの画像を見て分かる通り、風を防いだり、雨を避けたりする場所はない。そして暗い。気持ちも暗い。もうやめたい。他の参加者はどうしたのか。地平線までその姿は見えない。

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ネバダ州境へ向かってフリーウェイの路肩を下っていく。ライトの光軸が下過ぎたのと、雨でブレーキの効きが心配なのであまり速度を出せない。雨のブレーキが下手すぎるので、普段はディクブレーキのやつを使っているのだけど、今回は一般的なキャリパーブレーキのバイクなのだ。
地平線に光が広がっていくのが見える。ネバダ州。

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早速、カジノホテルのお出まし。

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次の町がPC。エビデンスはなんでも良いみたいだったので、マクドナルドでレシートをもらうことにした。雨は降ったり止んだり。あ、これがこの日ではじめての「食事」だな。残り50km。

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ラスベガスのゴール。このカジノホテルの名前しか書いてないが、とくにゴールが設営されているわけでもなく、広大な駐車場をうろうろする。シャトルバスのバス停で雨宿りしたりしながら30分以上ぐだぐだしていたら、Willie氏のトラックが偶然通りがかった。どうするのか聞いたら、預けてある荷物があるならおろしてとのこと。特に無いんでホテルへチェックインして終了。ゴールタイムは自己申告w 実際のところPC通過タイムも自己申告のようなものだ。Willie氏はDNFの参加者を回収しにいったり安否確認に行ったりするところだったようだ。
ゴールタイムは16時間32分
16人参加で10人が完走。

ホテルのビュッフェの食事は安かったがくそまずく、腹いせにポーカーマシンで20$をかけて10$勝った。アメリカ経済にささやかながら打撃を与えたのであった。

なお、翌日の天気はすばらしかった。
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