袋井では常宿にしているホテルが有り、夕食を食べてからチェックインをした。その後歩いていける生協まで行く途中に、急に感情が湧いてきて涙がこぼれそうになる不安定さだったが、生協で福井の羽二重餅が売っていたのでこれを静岡のスタッフの方々へのおみやげにしようと思って気持ちを落ち着けた。ゴール後、「福井の羽二重餅です。おみやげです、どうぞ」と渡すと「ああ、さとうさんは福井のご出身なのですね」と言われたが、「いえ、違います。福井に行ってきたわけでもありません」と混乱に陥れることができた。ちなみに羽二重餅を食べたこともない。自分用にも買っておくべきだった。
さて、それはさておき静岡は風が強い地域なのだそうだけど、今年もほとんど風がなく、日が出れば暖かささえ感じる気候。このコースはPC1までの100kmにほぼ補給する場所は皆無だとわかっているので、朝飯を多めに食べ、補給食も多めに背中に突っ込んでおく。この準備さえあれば、まず問題はない。
その前半の100kmは内陸の山を抜けていく。茶畑と山林を縫うように進み、清水の近くで海へでる。
この海岸の通りは通称いちごロード。今年は冬休みが週末まで続いているのだろうか、生徒くらいの年齢の若い「いちご娘」が呼び込みをやっていた。ちなみにこれまでは「娘だった人」ばかりだった気がする。でも、職業意識的には「だった人」の方がレベルが高そう。「現役」の人たちからは、「かったりー」ってオーラがにじみでていた・・・。
日本平で折り返し、今度は御前崎に向かう。
焼津の手前で海鮮三色丼を食す。じつにうまい。これだよな、これ。サイクリングの醍醐味だ。
御前崎まで向かい風にさらされながらたどり着くと、はるか前方を走っていたはずのJさんが途方にくれた様子でコンビニの前に座っていた。聞けば、パンクを二回してしまい、もうタイヤが無いのだそうだ。さすがにチューブラーを余らせている人もそういない。そこでマクガイバー力を発動して、瞬間接着剤とチューブ用のパッチで凌ぐことにした。なんとかなりそう・・・。だが、走りだすとあっという間に空気が抜ける。なんでだ? 穴のあった場所は空気が漏れてないはずだぞ、と水をかけると、タイヤ全周の側面から小さな泡が吹き出ている・・・。なんだこれは・・・。
タイヤが古いのか、潰れたタイヤで少し走ってしまったのが悪いのか。
いずれにしてもどうしようもない。
Jさんは、先に行ってくれ、と言う。どうするつもりかと聞いたら、「全周の側面を瞬間接着剤でコーティングする」とのこと。なんというマクガイバー力。まさに豪腕。
手伝えることもないので先に行く。夕日が沈みゆく静岡の大地に「XX町のYYさんが行方不明です」という放送が流れていた。ちょうど日が沈むころにゴールにつくと、「XX町のYYさんは無事みつかりました」というアナウンスが遠くに流れていた。