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【落武者魂】 2011年09月12日
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落武者魂

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2011年のパリ・ブレスト・パリ。 もどるもどる。

PC CARHAIX-PLOUGUER 残り距離527km 到着時間18:00 閉鎖時間19:21



 ブレストの次のCP、Carhaixにたどり着く頃に思ったより随分時間が押していることに気がつく。下りでブン回した割にはかなり遅くなっている。大きなアップダウンでは下りの勢いで登り返せる量が少なくなってそれが速度低下につながっているのか。CharhaixのCPで食事をと思ったが、やっぱり臭いがこもっているのでチェックだけ済ませて自転車へ戻る。こんなことならCP手前の街中のカフェで食っておけばよかったよ、と愚痴を言いつつブレストの方へ戻るように走りだし下ったところにあるロータリー沿いのマクドナルドに入る。入口にはタンデムが一台、他の自転車が数台。まだタンデムなどのスペシャルバイクがあるのを見るとほっとする。CPからの残り527km。まだPCのクローズ時間には間があるけど、眠る時間が欲しい。なんとしても。断固として。



次の中継点のSt Nicolas du Pelemは補給だけのポイント。行きはレストランテントの中のベンチで仮眠した(結局、このブルベ中に仮眠所を使わなかった。どこにあるかもわからなかったし探す気力さえなかった。仮眠所は意外と親切なシステムだったらしい)けど、今回はトイレだけでスルー。だいぶ日も・・・といっても曇天だけど・・・傾いてきた。スタッフが参加者にライトの点灯と反射ベストの着用を求めている。



 ルディアックへ戻る途中に日が落ちてしまう。予定に対しての貯金を若干削ってきてしまっている。ルディアックでも最低90分の睡眠時間、ほんとうは3時間以上を確保したいと考えているが、前後の準備&片付け時間も考えると行動予定を変更したほうが良さそうだ。行動予定といっても大したことではない。コース進行上、ルディアックPCよりルディアックのホテルが手前にある。だから本来はホテルへ入り、仮眠したあとにPCへ向かってブルベカードにチェックをもらいドロップバッグ(着替えなどの入った袋)を預けるというのが無駄の無い動きだ。しかし、現在の進行タイムからすると少しホテルで寝過ごしたり片付けなどに手間取ったりすると制限時間オーバーになりかねない。そこで無駄な動きであることを承知の上、先にカードにチェックをもらってからホテルへ戻り、休憩後ふたたびドロップバッグを預けにPCに行くことにした。動線的には2kmほどの無駄。ルディアックのPCはフェンスで作られた細長い誘導路を行かなくてはならないので、めんどくさいのだけどそれも二回やらないとならない。それでもルディアックでタイムアウトさえしなければ完走はほぼ確実と思っているので、大事をとった作戦にしたのだ。

 ルディアックへ近づけば近づくほどなかなか近くならないもどかしさを感じる。もちろん、現実にはそんなことはないのだけど。暗闇の中でアップダウンを繰り返してもさっぱり達成感がわかない。進んでいる気がしなくなる。遠くに街の灯りらしきものが見えて・・・それだってさして明るくはないのだけど・・・ルディアックかなと思うが違う。ようやく町外れかな・・・と開いているバルの戸口にたつ男が「3km!3km!アレアレ!」とか叫んでいるので、もうすぐだと思うと街が途切れる。街が途切れるとあたりはすっかり暗くなって心も途切れそうだ。ほんとに3kmなのかよ。とても信じられない。だからルディアックのなんとなく見覚えのある景色に出た時の高揚感はひと味違う。うれしくもあるけど、同時に急いで睡眠まで行動を行わねば!という追い立てられ感。まだ450kmも残っていることに気づくのだけど、なんとか一番きつい日が終わったという思いもある。とにかく一番きつい日である中日が終わった。このときはそう思っていた。ルディアックのPCでスタンプを貰ってからホテルにもどりアルファ化米の赤飯をくって寝る。

PC Loudeac 残り距離448km 到着時間22:51 閉鎖時間01:26

 最終日・・・が始まった。またまた深夜発。深夜のスタート&ライドは嫌いだ。必要も無いのにわざわざやるものじゃないと思っている。今までの1000kmを超えるようなライドでは途中からはせめて夜が白み始めるタイミングで起き上がれるようにできていたけど、今回はまるでそうならない。制限時間の問題があるのと、平均速度の問題がある。だからまあ仕方がない。とにかく1時間半は眠った。大丈夫。俺は寝た。そうだ寝たんだ!口に出す。考えるまでもなく、もはや貯金はマイナス、こっからどれだけタイムアウトまでの貯金を積み直せるか、それが勝負。積みませなくとも、なんとか次のクローズ時間までには滑りこまなくっては。完走できるか否かだけがブルベでもとめられる結果なのだ、と後席に向かって言う。実際には折れそうな心の自分へ言っている。細君の心は全然へたれていない・・・。完走できるかだけ、それに破れればパンの耳ももらえない厳しい競技なのだ。わかったか!パンの耳ももらえないのだぞ!と細君(と自分)によく言い聞かせてルディアックを出る。

 フランスの田舎道の闇は実に深い。街と街はほとんど闇の中を走っているようなものだ。街だって明るいわけじゃない。橙色の灯火がわずかに照らしているだけ。静まり返った街を行く・・・と行きにはあまり見られなかった様子が見えてくる。街の平坦なスペース、あちこちに自転車が無造作に置かれサイクリストたちが倒れ込んでいる。そのままの格好で・・・あるいは銀色のアルミホイルのようなエマージェンシーブランケットに包まって・・・。そういう人たちが大勢いるのだけど、やっぱり街は静かだ。自転車が行き過ぎる音だけが響いているかのよう。そんな亡霊に占拠されたような集落を過ぎると今度は亡霊さえいない真っ暗闇の田舎道。あたりは平原なのか森なのか村落なのかさえもわからない。そんな中でも時折、道端に赤いランプが止まっていたりしてごろ寝している参加者たちの姿。眠い・・・眠い・・・こちらにまでその眠気の呪詛が届いてきそうだ。そしてこれまでと違ったことがもうひとつあった。かなり寒い。急激に冷え込んでいく・・・。ウィンドブレーカーでは足りないくらいなのでモンベルのレインジャケットを着こみ、さらに細君はレインパンツまでも履いた。昨日までは湿気ゆえの暖かさだったのか。これからが本来の寒暖なのかもしれない。

 道半ばにして路上で明るい棒を振っている・・・スタッフが現れた。シークレットコントロール?どうやらそのよう。本来は深夜のロングライドの丁度いい箸休めになるストップだけど、今の僕らにとっては平均速度を落としてタイムアウトにさせる罠。チェックとトイレだけすませてできる限り速やかに立ち去ることにした。これで気が抜けたのか、このシークレットからあとのことはよく覚えていない。特にふらついたとかはっと目が覚めたということもないので、記憶力が低下していったのだろうか。全体的に夜の本当の闇の中でのことは思い出そうとしてもとっかかりがないので思い出せないのだ。走っている時は随分退屈で苦痛なのだけど、思い出せない。まあ、思い出せなくて幸せだ・・・。だいたい精神的にもつまってきてるし。



 そんなわけでシークレットの次のPCであるTINTENIACには明け方に到着したはずだ。予定より明らかに遅れ始めたのがこのあたり(これまでも1時間遅れだったが)。この時既に「シークレットから後のことはあまり思い出せないなあ」などと思っていたことを思うと、すでに相当やられていたようだ。なにしろふと気づいたら足首がかなり痛くなっていて驚くほど。いったいいつ、何がどうしてこんな捻挫痛が起こったのか!?おそらく記憶していないどこかでペダリングが変なことになってしまったのだろう・・・。普通にペダリングしている間はとりたてて差し障りがないので気にしないことにする。それにいつの間にか痛くなくなっているかも知れないし。さて、これまでは休憩時間を予定より減らすことで遅れを拡大させないこともできたけど、もうそれは無理な頃合い。もっとも予定時刻表の計算は後半ちょっと理想が入っていたので気にしないこともできる。それにこれ以降に大きな仮眠の予定は無いから、休憩込みでブルベルールの制限時間を守ればよいだけ。今のところ、それはなんとかなっている。自転車の走行ペースとしてはこれ以上落ちることはないだろうからPCやその他での休憩などに気を付けていけばいい。

つづく
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2011年のパリ・ブレスト・パリ。 かえりましょう。

PC BREST 残り距離612km 到着時間11:11 閉鎖時間12:49



 自転車を停めることのできる大きな屋根付き広場でブルベカードにスタンプとサインをもらう。この建物にはこれで用は無い。でも、マクドナルドはすぐ近くのようだったので、自転車を置きっぱなしにして歩いていくことに。すると実はマクドナルドの店舗と思っていたものはただの看板で、本当の店舗はワンブロック先にあるのだった。まあ、気分転換とばかりにてくてくと歩いてショッピングモールのマクドナルドへ。注文は英語は通じないけど、マクドナルドは世界の言葉なのでなんとかなる。やがてぽぽぽぽーんと、ビッグマック、フィレオフィッシュ、チーズバーガーなどいつもの仲間たちが目の前に!ぎりぎりお昼前に到着したので食べているうちにぐんぐんと地元の人達がはいってきて大混雑。超危なかった!食って食って飲んで飲んで。そしてトイレも広くて清潔。だけどレシートに書かれた番号がないとトイレに入室できないので要注意。



 ●食事
 基本的にはPCにレストランが併設されているので其れで済むはず。僕達は時間制限が気になっていたのと睡眠時間を確保したかったので、並んでいるレストランは基本的に利用しなかった。並んでいても、カフェテリア形式なので絶望的に時間がかかるわけではないだろうと思う。並んでいるかそうでないかは運次第。ただ、特に後半になるとツンとした汗臭さが充満した建物になる・・・。PC内での食事はいろいろ。おいしかったりおいしくなかったり。まあ給食みたいなもの、あまり期待してはならない。最後の方のPCで食べたミートソースパスタは美味しかった。フランスでのパスタは信用ならなかったのだけど、試してみるものと思った。レストラン以外にもサンドウィッチが売っているカウンターが別途設けられている場合もあった。サンドイッチを買って芝生の上で食ったりもした。フランスパンに挟んでいるのでおいしいけど固くって噛み切るのに疲れる。またPC以外では上記のようにマクドナルドがコース上に2件。さらにルディアックから少し離れたところにも。。味はさすがにマック、安定しているので安心。商品も基本的なものは日本と同じだけど、テリヤキバーガーなどはない。個人的にはバーガー類を店内で食べて、アップルパイを背中にいれて補給食にするスタイルがお勧め。寒い時には特に。他にカフェなどもちょくちょく見かける。カフェによく置いてあるクロワッサンは食べやすい上にバターが多く使われているからだろうか、エネルギーにもなりやすいようだ。ただしまとまなカフェやレストランでまともな時間に食べると、かなり時間を取られると思うのでこれまた注意。ちなみに僕達は約2000kcal(二人合わせて)分のエナジーフードを持参してスタート。ドロップバッグにも3000kcal分ほどを入れておいた。少々かさばるがウィダーインゼリーは瞬時に流しこめて味もしつこくなくて便利。また、食事という面ではアルファ化米も役に立った。お湯で20分、水で1時間待てば結構おいしいご飯ができる。なんとなくアルファ化米はおいしくないイメージがあったけど、技術力の向上というのはありがたいものだ。



 ずっと足の裏が気になっていた。いやもう足の裏どころかいろいろと傷んでいるんだけど、靴の中敷きがずれているというかめくれているというか、そういう感覚があるのだ。途中のPCでも見てみたけど中敷きがどうにかなっているということはなさそう。テーピングがめくれているのかなあということにして出てきたのだけど、どうにも違和感が。靴の中で足の指を動かしてみると中敷きがずれているという感覚が確かにある。そこでマクドナルドで食べ終わったついでに靴を脱いでよく見てみる。やっぱりどうにもなっていない。うーん、どうも脚の裏を支える筋肉が疲れてどうにかなっているのが、中敷きがずれているという感覚で伝わってきているようだ。一種の幻痛?これはもう無視するしかない。大抵の痛みは無視するか、痛み止めを飲むかだ。痛み止めを飲むと胸やけもあるていど収まるので二倍オトク。



 店を出てブレストのPCまでてくてく歩いて戻る。自転車持ってくればよかったなーとちょっぴり悔やむが、市街地の商店街にタンデムを置くのも面倒くさそうだから仕方ない。マクドナルドのあるショッピングモール周辺は、道も狭く昼食時とあって人も多くって込み合っていた。まあ、こんな時のために今回はSPDシューズで来ているのだ。てくてく歩くのはロード用シューズより随分らくちんちん。PC近辺はひっきりなしに参加者が走っていて街の交通をボランティアの方々が一生懸命整理している。フランスのドライバーは「おとなしい」運転をするわけでは決して無い(断じて!)がクラクションひとつならさず、罵声ひとつあげず。PBPの最中、そういった場面にはひとつも出会わなかった。運が良かったのもあったろうが、狭い狭い坂道の真ん中をのそのそと登る自転車の後ろを静かに追走する自動車を何度見かけたことか。そして追い抜くときには頑張れよ!ってなるのだ。こんなトチ狂った挑戦だけど、みんなが応援してくれている・・・。

 ブレストの街を走る。PBPの道路は総じて路面が悪くなかったが、やっぱり街中はちょっとナーバスだ。まあ、言われてるほど路面は悪く無いじゃんと思っていたのはタンデム自転車のおかげもあったろう。28cのエアボリュームと25kgほどの自転車重量に二人分の体重。さらにロングホイールベース。大抵の事は勢いで乗り越えていける。真っ暗闇の石畳だろうとまったく気にすること無くつっこんでいっていた。タンデム自転車ならではの面倒といえば、抜重ができないので速度抑制の段差なんかはちゃんと声を合わせていかないとお尻に大ダメージがはいってしまう・・・。そうだ、エアボリュームといえば空気を入れなきゃ入れなきゃと思いつつここまで来た。指でタイヤを押すと少しゆるいかな・・・でもメンテナス場所まで持ってくのがめんどくさいし、メンテナンス待ちの時間がもったいない。いきなりパンクするほど酷い路面にも遭遇しなかったし、もう少し先まで行ってみよう!



 ブレストの街も、そこから抜け出てもアップダウン。下り、登り、下り、登り、と同じ視界に入る苦痛。ここまで来て、残り半分この調子のこのコースを走りきれるのかどうか。走りきれるとは思う。思わないとやってられない。本当に完走できるんだろうか、と口にしつつ絶対やりとげられると思っている自分がいる。でもどういう状態になって走り切ることになるんだろう、これから僕らがどうなるか想像もつかない。けれどもここまでのことだって想像できていたわけじゃない。細君は何も疑っていない。ともすればネガティブ発言を繰り返す僕をケ・セラ・セラと歌で答え続ける。

 延々と下り、登り、下る、さらに登る。ブレストの隣町はちょっと小奇麗な川沿いの町だ。参加者たちも立ち止まって記念撮影したり、カフェに立ち寄ったりしている。和やかなひとときが視界に入ってくる。交通量はちょっと多い。ブレストからしばらくは往路とは違うコースになるのだけど、大きめの丘を登ったところで元のコースへ戻った。元のコースへ戻ると、対向車線にはこれからブレストへ向かう車両が続々と続いている。なるほどこれが・・・と5000人以上という規模を思い知らされる。僕らのスタートは午後5時半だったけど、最終スタートの組は翌朝午前5時(一般車両制限時間84時間の部)から始まるはず。スタート時点でゆうに12時間ほどの差があるわけだ。タンデムやリカンベントなどの特殊車両もみかける。この時間にここを走っているようではタイムアウトだろう・・・と思うが、考えてみれば僕らのスタート時間とは違う特殊車両のスタート時間もあったはず(制限時間も違う)なので、それなのかもしれない。特殊車両の中で特に珍しいのはドイツから来ていた三人乗りのトリプレット。フロントにはオートバイのカウルをつけ、リアのホイールはディスクという空力特化した仕様。さすがに横風に弱くなりそうだが、タンデム車を上回る全長と重量によってそんなことは気にもならぬのだろうか。乗員も屈強なドイツ青年たちであった。もうひとつ不思議な車両はリカンベントタンデムのバックトゥバックと呼ばれるモデル。これは背中合わせに二人が座るというもので、つまり一人は後ろを見続けるわけ。怖くないんだろうか、下り坂とか・・・。


※カフェに入りつっぷして少し寝た。


※町のカフェでのむコーヒーはおいしかったよ。紅茶党の僕が言うから間違いない。

 再びあの峠を登る。やっぱり斜度は緩いが長い。朝に通ったときには霧で何も見えなかったけど、今は晴れ渡っていて遠くフランスの平野を見渡していけるのは幸い。しかも行きよりもずいぶんと短く感じた。頂上付近には付近の住民の人たちだろうか、車をあちこちに停めての大声援。アリガトウ、アリガトウと手を振りつつ通過していく。こっからは、長い長いダウンヒル!自転車の上に伏せて回し倒し時速70km以上まで加速。そっから重力にまかせて突進開始。行ける時に一気に距離を詰めないと・・・!



 ここらあたりのコースも行きとは違っていて大きく登って大きく下るようなパターンが何度か。84時間クラスのオダックス埼玉メンバーに追いつかれ始める。下りでは速いねーという言葉をいただくが、それ以外ではまったくついていけるどころの話ではない。下りと平坦を利用して次の登りまで時速60km弱をキープし続けたところもあったのだけど、上りに入った瞬間に後ろにくっついてきたサイクリストたちから「メルシー!」「サンキュー!」「グラーチェ!」と国際色豊かな感謝を投げかけられ使い捨てに・・・。まあ、国際貢献ここにありということにして・・・。下りでは「ON YOUR LEFT!(左通るよ!)」を連呼し、登りに入った瞬間、毅然とした姿勢で右によるというハンドサインを出してインナーローでくるくる回しながら端っこに寄って、追い抜いてきた人々全てにじゃまにならないようにして追い越される。それがスマートなタンデムライディングです(嘘)。

それでは、しばらく広大なフランスの大地をお楽しみください。




つづく