さて、どう考えてみるかは読者諸賢にお任せするとしまして、見た感じで評価する都市対抗バイクシェアシステム大会のはじまりです!
パリ ヴェリブ-Velib
グレーっぽい車体がシックで街に溶け込むパリのヴェリブ。街中300mごとだかに設けられたという自転車ステーションですが、見つけたいところには見つからずどうでもいい時にはたくさん見かけます。観光客にはちょっと厳しいけど、地図があるのかな。借り方はまず自転車ステーションに立っている情報ポストをみつけ一日券を購入します。購入にはクレジットカードが必須。一日券は1.7ユーロ(1weekは8ユーロ)。その後30分以上乗るごとに課金されますが30分までは常に無料。なので30分以内ごとに返却・借り出しを繰り返すとどこまでも無料になります。さて、1日券を購入するとキーナンバーをもらえるので、それを情報ステーションの反対側の操作盤で入力、借りたい自転車の番号を打ち込み、で自転車スタンドのロックが解除されます。あとは自転車スタンドのボタンを押すと自転車が外せます。
ベリブ自転車はこのバイクシェアリングのために設計されたまさに専用車。ブレーキなど保安部品にはいたずらで手が加えにくいような部品が選ばれています。チェーン駆動で3段変速。ハブダイナモによりヘッドライトとリアライトが常に点灯します。またちょっとした所用の際に道端に停められるようチェーンロックも装備されています。ただ、その場合でも近くのステーションを探して止めたほうが30分ルール的にはトクかと。
パリは比較的平坦な都市ですが、モンパルナスの丘とかというようにセーヌ川から数段の河岸段丘の街でもあります。そのため高いところにステーションもあるのですが、そういったステーションには自転車が「戻ってきません」。ベリブ自転車は軽くは無いので街中の坂を登って返却するような人はおらず、むしろ丘の上から下りたい人たちばかりなのですね。なので、ベリブではそういう標高の高い場所にあるステーションを「プラス」ステーションとしてそこに返却することにイニシアチブを与えるような仕組になっています。たしか無料時間を増やしてもらえるはず・・・。それでもやっぱり丘の上のステーションがガラガラでした・・・。
※自転車道っていってもこんなよ。
パリ市はこのシステムを導入するのにあわせて自転車道を整備したそうです。たしかに自転車道、自転車レーンはありますが、石畳の古い町並みの限られた街路に首都としての交通量があるわけなんで、やっぱり気合一発で判断して走らないとならないことも多そうです。タイヤが太いおかげでロードよりは石畳でも乗り心地がよく、シャンゼリゼで観光トゥクトゥクのドラッグについて楽しめたりします。パリでベリブに乗ったのはそれほど長い時間ではありませんでしたが、街がすごく狭く感じましたし街路のカフェやショッピングを楽しむには非常に良いツールかと思いました。
リヨン ヴェロブ-Velov
白と赤のおしゃれなヴェリブ・リヨン版。カラーリングが違うだけのようです。というか、たしかリヨンとマルセイユで社会実験したあとにパリへ導入したはず。この社会実験の結果よりパリでははるかに破損・盗難・投棄が多いとか問題になってた記憶があります。さて、リヨンはフランス第三の都市ですが欧州の都市が大抵そうであるようにコンパクト。特にこの街は旧市街地以外は平坦なところに作られているので街中でたくさん走っているヴェロブを見かけました。自転車の作りも借り出し貸し出しシステムも同じ・・・。古い市街の丘からはたくさんヴェロブが颯爽と「おりていく」姿が見られました。あっとういうまに丘の上のステーションは空になってしまうでしょう・・・。
※こんなふうにタイヤがパンクしたまま(いたずらで壊された?)放置されているっぽいのもみかけました。あとサドルを前後逆につけられたやつとか。
サンテティエンヌ ヴェリヴァー卜-Vélivert
フランスで最初に自転車が製造された街、サンテティエンヌ。ということは今検索して知りました。この街を訪問する日本人はかなり少ないんじゃないかと思いますが、この街から少し離れたところにある村というか町フィルミニはちょっとばかし有名です。というのも建築家ル・コルビュジエがいくつかの建築物を残しているのがその町だからです。私もそういう理由でサンテティエンヌを通りました。さて、この少都市にも共有自転車が。けっこう丘だらけで平坦なんか見当たらない街なのに。フィルミニにも同じシステムが設置してありましたのでちょっと拝見・・・。
さ・・・さすがフランス自転車発祥の地、サンテティエンヌ。シャフトドライブです。たしかにパリでチェーンが落ちて困っているベリブの人を見ましたから、これは良いかも。この自転車はシェアリングバイクとしては完成形とも思えます。素晴らしい。ブラーボ!小都市といえ首都(パリ)や大都市(リヨン)の追従に留まらないこの心意気。惚れた。
さて、これを撮影しているのはフィルミニのコルビジェステーションなのですが、この町にはステーションがみっつ。ここと駅とその中間。一番標高的に上にあるのがここ。なので一台しかなく借りるのは諦めました・・・。ぜんぶ下に溜まっているんでしょうね・・・。
ミラノ バイクミー-BikeMi
超お洒落シティミラノでも共有自転車が!シックなにくいヤツは、フランス諸都市のものとはちょっぴり雰囲気が違います。不思議なのはステーションのスタンド。前カゴのあたりにあるフックを引っ掛けるようになっています。ポール式のスタンドが嫌だったんだろうか?基本はシマノのネクサス・・・ベリブと同じ部品を使っていますが・・・いや、違うな。これもシャフトドライブです。かっこおい。さらにライトが縦二灯でちょっとかわいい。お洒落です。
ここは平坦な都市で、かつステーションはドゥオモ周辺のフラットな商業・観光地域に多くなっているために利用者も多く見られました。見ているとほとんどの街路が石畳で、かつトラム(路面電車)の路線が縦横に走っている車道を走るのは怖そうなんですが、普通のおっちゃん姉ちゃんが気にせず走ってました。
ミラノやリヨンはレンタカーを借りて走ってみましたが、東京のような町で運転に慣れているからかさほど怖いとは感じませんでした。フランス、イタリアというと街中ではクラクション鳴らしまくりのイメージでしたがそんなことはあまりなく、静かなもの。やはりパリ、ローマなんかの大都市と中小都市ではぜんぜん違うみたい。歩行者・自転車への自動車の道の譲りっぷりは(少なくともこのあたりの中小都市では)清々しい物がありました。ただ、つっこみは鋭い事が多いので「本当に横断歩道の前でとまんのかよ?」って感じることがあるけど。止まります。
この街は観光・ショッピングで訪れる人には大きな街ではないので、地下鉄・トラムの整備もしっかりしていますが自転車の気軽さは光ります。webに一枚絵のステーション配置地図もあるので、利用されて見てはいかが?
ローマ バイクシェアリング
ローマにも・・・あります。歩行者としてカフェの並ぶ狭い街路を歩いていてもなお、自動車の脅威にさらされてストレスたまりまくりのローマにも、あります。7つの丘に囲まれ、どこへいっても自動車にあふれた表通りか、路駐に埋め尽くされた裏道しか無いローマにも、あります。
ローマのステーションはフォロ・ロマーノから北側・スペイン広場周辺に多くが設定されています。そう多くはありませんが、なにしろローマには広さに対して地下鉄が2系統しか無いなど不便な場所も多いので大活躍・・・してほしい。でも、とあるステーションでは借り出された自転車のスペースに駐車車両が並べられて(中で居眠りしてたり)いて事実上利用不能。さすがに”民度”という言葉が脳裏をよぎります・・・。
ローマの共有自転車は・・・イタリアの首都の誇りにかけて・・・いや、かかっていないようでただのママチャリにステーションのスタンドへロックするためのフック部品が取り付けられているのみ。サンテティエンヌの完成形を見習うようにとは思いませんが、せめてベリブ程度の・・・。本当に普通のママチャリで、ブレーキなども普通。どうせ盗まれたり壊されたりするから安物にしておこうということ?それならそれで達観しているというか・・・。
ヴェネツィア バイクシェアリング
ヴェネツィアの中でも「ベニスに死す」の舞台となった(見たことないけど)島は自動車が走れるのですが、ここには共有自転車もありました。内容はローマと同じ。ちょっと新しいだけ。ステーションの数も少なく、やる気ない。努力しなくても観光客が集まってきて金を落とす街なので、やる気がないのでしょうか。この二都市はほんと疲れたのでネガティブコメント(w
まとめ
真面目にやっている街は、観光区域のみならず実際の住民が暮らす街区にたくさんの、むしろ観光区域よりも多くのステーションが設置されていました。また、ステーションの規模も巨大で高架下に百台規模のステーションがあるのもみかけました。郊外から市街の外側の駐車場に車を置いて繁華街までは共有自転車を使う、という使い方もされているようです。30分以内に返却すれば無料というシステムもあって、比較的気軽に利用されている市民の足にもなっているようです。
一方で、やはり共有所有物に対する扱いはあまり良いとは言えずいたずらで壊されているものも見かけましたし、借りる人も壊れていないか確かめるのに蹴りを入れるなどという人も。あと気になるのは、やはりステーションの位置を知らないと不安になりますね、返却とか。停めるつもりできたらそこはいっぱいで入れないとかありますから。
なお、日本でも札幌で本格導入されているようです。ポロクルというのだそうで。