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【落武者魂】 2010年10月23日
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落武者魂

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2010年10月23日

=☆= Big Sur 600km全部盛り -3-

 VickieといっしょにVickie宅で休む。コーラやラザニア、ふかし芋なんかが用意されていた。ラザニアはちょうど最後。超おいしかったので間に合ってよかった。トイレや補給も済ましてすこし休む。この時点で僕らの後ろには3人しかはしっていないとのこと。ただ、全体的にペースは遅いらしい。さっきのクリスのようにBig Surあたりは観光気分で写真とりまくりという人が多いとのこと。確かに師匠であるクリスも途中であったときに「80kmで50枚以上写真とってるおー」って言ってたな。



 もう真っ暗になってしまった夜の下、僕らは走りだす。次のCPであるLompocまでは100kmくらい。あまり商業施設もない地域だ。そしてLompocからはLompoc loop。どこでどのくらい眠れるのか、それが問題。すでに時間的余裕は2時間くらいしかない。つうことは眠れてもせいぜい1時間か。十分とは言えない。まったく十分ではない。もう後ろの人なんか眠っちゃってるんだぞ・・・。

 このセクションはかなり辛かった。途中で補給をとったのかどうかさえ憶えていないくらい。後半になるにつれ、だんだんと寒くなる。Vickieが「残り距離、速度をあげるけどついてこれる?」と言うので「なんとかする」と答えて10マイルくらい速度を25km/hくらいに必死で維持。でもついにはちぎられた。マシュー君に「すまん、俺はあれについていけない」というと、彼は「気にするな。あの人は腕を折っててもはえーからね。僕も追いつけないし」とかいろいろと励ましてくれる。ありがたい、が正直眠い。眠すぎる。残念ながらタンデムの前の席は眠ってられない。それどころかうとうととしてバランスを崩したら、この重量級の車体を立て直せる自信が無い。そしてこんなところで事故を起こすわけにはいかない。寝台列車さくら号といえど、運転手は眠れないのです。こんな地平線まで街灯の無いような荒野、そしてこの12時を回った深夜、さらに携帯は圏外。いったいここで何か起こったらどうやって助かるというのだろう。サバイバル、生き残らなければ。この異国で。この異郷で。この辺境で。そしてまずなによりも。ついに長い長い登りの中でずっと考えていたことを口に出す。

「路肩で、5分、眠らせてくれ・・・」

 こうして深夜にアメリカの荒野のフリーウェイの路肩、広くなったところで一人横になることになった。遠くでコヨーテの吠える声が響き、ときおり通過するクルマののシャアアアアっていうタイアの擦過音が行き過ぎるのみ。全部着込んでいるおかげでそれほどは寒くないのが救いだ。寝転んでみれば眼前に空へ落っこちそうなほどの星空・・・一瞬で10分すぎた。目は覚めたのか?少なくともさっきまでの麻薬的な眠気ではなくなっているようだ。よろよろと立ち上がり、草むらにつっこんでいたさくら号を引っ張り出す。重くて倒しそう。もう何度が倒してしまっている・・・しょんぼり・・・。



 それからしばらくしてLompocへ到着した。下りでは突き刺すような寒さだったけど、止まっていれば大丈夫なくらい。気温が高くて助かったようだ。気温が高いといっても、すでに分厚いプレミアムウィンドブレイクジャケットまで着込んでいる。他の人も、それぞれに着込んでいるので、僕だけがおかしい訳ではないようだ。おそらく気温3?5度程度。さて、Motel6へ入り僕はチェックイン、マシュー君と細君はスタッフが抑えている部屋へ。僕もすぐにそこへ入って一心地つく。スタッフの方からスープをもらい体を温める。あとはトルティーヤチップス。ベーグルなども用意されているけど、まずは寝たほうがいいか。チェックインした部屋へ向かい、1時間ばかし眠ることにする。疲れているマシュー君とタンデム自転車を部屋に持ち込むかどうかで少し議論に。でもさすがに40kgくらいある自転車を階段で持ってくることは諦めたようだ。スタッフルームの前だもの、だれも盗まないよ、マシュー。さて、現時点で余裕時間は1時間ちょっと。午前3時におきよう、そしてすぐに出発だ、と僕は着替もせずベッドの上にタオルをしいてごろり。細君はシャワーをあびて着替えたようだったけどよくしらない。いずれにしろ、3人ともベッドの上で休むことができた・・・それがひとときであっても。

 起きたのは結局3時半ごろ。スタッフルームへ行ってベーグルなんかをかじろうと思おうと、マシュー君がスタッフと深刻な顔でなにか話している。というか寒くて疲れて眠くて深刻な顔しかできないんだろう。スタッフの女性(この人が一番寝てないと思う)が「とにかく、Buelltonまで頑張って!」とか言ってる。考えて見れば次のBuelltonまでは30kmちょっとしかないのに実は既にここのクローズタイムを過ぎようとしている。Lompoc loopを回って次にここに戻ってくるまで約60km。正念場。このLoopはきついの?そうでもないの?と聞くと「多少アップダウンがあって、ひとつふたつちょっと長い上りがある程度」とのこと。「OK、7時前にはここにもどってこようぜ」と言って出発進行。

 ・・・。何だ急にこの向かい風は・・・。びゅーびゅー耳元で風切り音がするのですが・・・。まあ、なんとか速度を保ちながら・・・って保ってないな・・・。クローズ時間ぴったしだと計算して、次のPCまで時速15km/hを切らないようにして走ればタイムアップは無い。そう思ってはいたものの、メーターは非情な数字をたたき出し続けている。さらに速度が落ち・・・さらに・・・さらに・・・。そして登り。この上りに入ったところで山が風を遮ってくれたようで向かい風の影響は少なくなった。ありがたい。登りといっても斜度がきついわけでもないので、一漕ぎ一漕ぎを大事に進む。そういえば後ろの人の反応が薄いなあ。少し休憩とかいれちゃうとおしりが痛い痛いとうなってしまっていたのに。それどころか時々ペダリングがかっくんとなる。どうも眠りに落ちているらしい。そのくせ「スタンディング!」の掛け声であわせて立ちこぎはするし、それなりの出力は出続けているようだし。あとで聞くと「かっくん」とペダリングが止まることすら覚えていないとのことなので、もう無意識の中でペダルを回し、掛け声に”反射”して立ちこぎをする、そんな「シャカリキ」状態だったようだ。



 途中でクリスとその”怪しい関係”の女性ライダーと一緒になり、ちょっと会話したのだけどそれも憶えていないというから驚く。眠っているうちに600kmを走り終えられるんだったら、なんとうらやましいことか・・・。4台で5人になったグループはなんとかBuelltonに5時半ごろ到着。眠り狂四郎パワーでクローズまで30分まで貯金回復・・・。ホットチョコレートを飲んだりして休んでいると、さっき僕らをちぎっていったVickieが後ろから到着。ぼくらよりゆっくり寝てたんだろう。いずれにしろ、コース担当がまだいるってことは僕らの心を暖かくした。次のブロックはひたすら幹線道路を突き進むもので、やっぱりアップダウンはあったけど大声でいろんな歌を歌いながらクリア。夜が明けていく中をなんとかクローズ30分前にはLompocへもどることができた。一応、400km地点で27時間以内なので満足です・・・。


・右側の女性がKathy。まったく寝ることの出来ない過酷なボランティアの方です・・・。

 細君をしばらく寝かせ、ファミリーレストランで朝食をとったせいでLompocをでることができたのは8時半くらい。クローズから30分ビハインド(w もうどうしたらいいのか・・・。ファミレスで食ってる場合じゃなかったろって心のなかで罵りながら最後のロングヒルクライム。数十キロにわたってゆったり登っていくいやらしいセクション。ここでは本当に心折れまくり。バキバキと折れる心を一生懸命に拾って走る。後ろの席の人の弱音を聞くとこっちの心がもたないので、後ろの人が言う前に自分が泣き言を言い続けることで弱音を吐かせない。とにかくいわゆる「足が終わってる」状態だし、暑いし、日陰はまったく無いし・・・とにかく長い・・・。しかも時間も無い。・・・っと!、心がまたもげ落ちたので拾ってくっつける。時間が無いというのがこんなにも気持ちを弱らせるなんて!何度も何度も偽りのピークをすぎて・・・永久とも思える時間の後に・・・下りが始まった。時速75km/hオーバーで太平洋に向かってつっこむ大ダウンヒル大会!!!

 楽しい時間は常に一瞬でしかない。ダウンヒル直後のサービスエリアでトイレに入り・・・どうもここにいる自分たちも含めた数人が最後尾らしい。そして先頭はゴールしたとのこと。はええなあ・・・。





 まだタイムアップまで余裕はないけど、コース的にはもうきついところはない。海岸段丘を横切るゆるやかなアップダウンを波乗りのようにこなしていけばいいだけ。相変わらずペースが上がらないのでマシュー君には申し訳ないが、だらだらとしたペースでサンタバーバラのPC。ここのPCは「通り沿いのお店どこでもいいからレシートとってこい」というもの。ファストフードでハンバーガーを食ってレシートゲット。残り110km。タイムオーバーまで1時間弱の余裕まで回復。出発時には15分位の余裕まで後退・・・。


・サンタバーバラ


・サンタバーバラ

 110km。この道を通るのは何度目だろう。もうキューシートもGPSもいらない。あそこを右へ曲がり、緩やかに登り、下り、脇道に入り・・・と自動的に体が動いていく。Lompocのあたりでは細君が「もうやめたい」と言ってくれないかなあとか思っていたが「わざわざ海を越えてこのために来たんでしょうが」とたしなめられてよかった。風も背中を押してくれているようだ。勝てるのかこの勝負と聞かれれば「勝てる」と答えることができるだろう。道はVenturaへ入りOxnardで最後のPC。やっぱり残り時間は1時間弱のようだ。追い風でなければどうなっただろう・・・。




・RAAM・・・。



 単調だが懐かしく、そして別れ行く景色を走る。最後はおなじみのSanta Rosa Road。うんざりする長い登り。日はすっかり落ちて三度目の闇だ。この坂、20kmほど続く上に最後は10%くらいまで斜度があがる。日中に登るとものすごく乾きに飢える上に商店がまったく無いので水の入手もできない場所。むしろ日が陰ったこの時間でよかったかもしれない。ほぼ頂上の目印となる高校前を左折し、一番きつい登りに。そこを登りきれば・・・ダウンヒル。もう一回少しだけ登るが、これは最後だとわかっているので気持ちが全然違う。マシュー君のダンシングもなんだかノビノビした楽しげな感じに見える。メーターも600kmを超えた。あとは住宅地の間を抜ける道路を気持よく下り、そしてゴールのMoorparkにあるJones氏宅へ。ガレージの前ですでにゴールした人たちが歓談していたが、僕らを見て「おめでとう!」「よくやったな!」と声をかけてくれる。「裏庭で最後のチェックだ」と僕らは僕らの自転車を裏庭まで押していく。そこではピザパーティになっていて、そのテーブルへブルベカードを提出。ゴール時間は8時5分。39時間25分での完走。ブルベビギナーを後席に据えた鉄の塊のタンデム自転車「さくら号」を携え海をわたり、時差ボケに悩まされてろくに眠れないまま突入したBig Sur 600km。時間の余裕もなく、美しき地獄のBig Surを越えて闇夜の荒野の頂上に立ち、凍えながら星を眺め、酷暑の峠を涙ながらに越えてSanta barbaraに集う楽しげな人々の間を縫って走り、懐かしのMoorparkまで39時間25分。いらぬ苦労満載オプション全部盛りのぜいたくブルベ。





 もうここに来ることはなかなかあるまいなあ・・・と感慨にふけっている僕にPCH Randonneursの完走者から声がかけられる。
「日本じゃタンデム自転車のれないんだって?じゃあ、来年もこっち来てタンデムでPBPのクオリファイ取りゃいいじゃん」
 いやいやいや・・・。

おわり

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