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【落武者魂】 2009年10月

落武者魂

L  O  S  T     S  Q   U  A  D  R  O  N  .

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2009年10月

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2009/10/21  PEPSI 500
2009/10/19  後日談
2009/10/19  [LA600km 1017 RUSA]第三話
2009/10/18  [LA600km 1017 RUSA]第二話
2009/10/18  [LA600km 1017 RUSA]第一話

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PEPSI 500

NASCAR。ナスカーと呼ぶ。インディと並んでアメリカを代表するモータースポーツのひとつだ。「人生物見遊山」を掲げる自分としては、こちらにいるうちにみておきたいもののひとつ。調べてみるとインディもNASCARもほとんどは中南部で行われているのだけど、幸いなことにクルマで内陸へ一時間くらい行ったところにあるサンベルナルディードという町のサーキットでも開催されていた。さっそくチケットを確保。

さて、そこで細君に「F1とかNASCARとかってどう違うのか」という難しい質問を投げられる。とりあえずクルマの形が違う、と答えておく。彼女にそれ以上に説明しうることがあるだろうか?



NASCARはアメリカを中心に行われているモータースポーツで、市販車での草レースから立ち上がってきたものらしい。そのためクルマの形状は一般のクルマのように屋根もタイヤを覆うフェンダーもある。でも、GTカーとかそういうレースのクルマとは違って、ボディは樹脂でできたみせかけのもの。中身は鋼管スチールパイプで組まれたフレームが入っている。すごく単純に言うと、ミニ四駆みたいにシャシーにプラスティックボディがのっかってるだけ。エンジンはV8でOHV。OHV。オーバーヘッドバルブ。それを10000回転まで回して600馬力ほどをひねり出す。コストの高騰を避けるためにカーボン素材やチタン合金などの使用は禁止。なんというか豪快な車両に仕上がっている。





アメリカ各軍などの公共団体?のスポンサードするクルマも。

コースはほとんどすべてが陸上競技のトラックのようなオーバル。陸上競技というか競輪だな。路面にすごい角度がついていて高速を維持していてもコースから飛び出すことの無いようになっている。オーバルコースということで基本的に一方向ーーー左回りだから左だけーーーにしか曲がらないので、ハンドルもそのように設定されていて直線ではやや右にハンドルをきらないと直進しないらしい。コストを下げるために電子装備でのドライビングアシストなどは行われない上、古典的な後輪駆動、とにかく最高速を維持するだけというシンプルさがミックスされて一見豪快ながら非常に繊細な操作が要求されるのだそうだ。



レースは予選、前座など数日間にわたって開催され、その期間を通しての観客は駐車場にキャンピングカーを持ってきて”生活”しながら観戦しているようだ。僕らが駐車場へ到着したときもあちこちでBBQの肉の焼ける匂いが漂い、よくわからない輪投げのようなゲームをやっている人たちなどなどを見かけることができた。

茂木のオーバルコースには何度か赴いたことがあるのだけど、このオートクラブスピードウェイの方が一回り大きいようだ。有名なデイトナなどはさらに大きいという。チケットを早めに押さえたおかげかフィニッシュライン近くの前列に近い席であった。しかし、それも善し悪し。前の方の席はフェンスが少々じゃまなんだね。

ドライバーがおたち台にて一人一人紹介されたち、ゲストのハリウッドスターたち(らしい)や国歌斉唱、パラシュート降下など、飽きるほど長い前座が終わりに近づくと、どこかでドラムダラダラダララララと聞こえてくるなと思ったら、各車両がピットアウトしていくのが見えた。NASCARはF1のように並んでスタートではなくって、セーフティカーという先導車に引かれて2列に並んでコースを回り、先導車がピットレーンへはずれたところから走りながらスタート。と、思っているうちにこっちへ30台以上のレーシングカーがつっこんでくる!暴力的な轟音と突風をたたきつけて彼らは去り・・・わずか2マイルの周回はたちまち彼らを連れ戻す!あまりの音のすさまじさにフードをかぶってしまう。暑いのに。



このレースは500マイル耐久。だから250周もするわけ。数十周もすると、車列がコース全体にひろがり、轟音も・・・あんまり変わらないか。80周くらいまでみていったんスタンドから降りてあたりをうろうろ。耳栓を買ったりする。外におかれたスクリーンをみていると、イエローフラッグがでたようだ。イエローフラッグはコース上に何か問題がでた時に振られる旗。全車両は追い越し禁止でセーフティカーの後について走ることになる。なので、結構差が開いていても同じ周回ならしきり直しとなるわけ。

250周あるとはいえ、NASCARはこのようなルールをうまく運用することによって最後までだれないようにしている。というか最後を盛り上げるようにしていると言うべきか。NASCARにおいて終盤までのレースは最後のスパートに対しての位置取りにしかすぎない。終盤でのイエローフラッグ時に先頭を窺える位置にいるのが重要なのだ。しかし先頭でもよくない。なぜなら先頭は空気抵抗をまともにうけてしまって速度がのびてくる後方車両にかなわないから。

イエローフラッグはレースが細かく動いているときにはあまり使われず、逆に独走状態やレースが停滞しているときには細かく運用されるという。恣意的ではあるが、競技としてフェアである範疇でエンターテイメントを重視しているのだろう。




さて、実際レースが動いたのは220周を超えたあたり。それまで80周以上もなにもなく周回を重ねていて、全車両がピットストップを終えたあたりでイエローが振られた。セーフティカーが入ってコースのチェックをする。そしてリスタート、先頭の何台かが入れ替わる・・・が2周もしないうちに後方の車両が大きく接触、2台がスピンしながらコース内のグラベルをつっきっていってしまう。ふたたびイエロー。トップ争いも熾烈だけど、後方の車両だってひとつでもポジションをあげようと必死だ。

NASCARの車両はあるていどぶつけて走ることを前提にしている。多少ぶつかったくらいなら何の問題もないし、大きくまくれあがったり、割れてしまったりしてもビニールテープを大量に貼って押さえ込む。僕はその無理矢理なおして走っている姿が好きだ。満身創痍のクルマ200miles/hでかっとんでいくのが実にかっこいい。

[高画質で再生]


再開、しかしこんどはバックストレートへ向かうところでクラッシュ。まともな速度がでないクルマもなんとか完走をねらおうとコースの内側を走り続けている。これがまた走る障害物状態。さらに再スタートで残り周回一桁・・・しかし今度はレッドフラッグ。数台が絡んだ大クラッシュでコースが塞がれてしまったようだ。レッドフラッグは全車停止。クラッシュに巻き込まれながらも動けるクルマはピットまで何とか戻り再起を図るが、そのまましまわれてしまうケースも多い。そして20分もの中断の後、わずか4周ほどのレースが。244周を走ってきて、この4周でレースが決まるという理不尽。観客総立ちですさまじい歓声の中を彼らが駆け抜けていく。レースは最後のイエロー合戦が始まるまで先頭に立ったことのないレーサーが制する。すごい!もりあがった!さあ、渋滞がひどくなる前に帰らなくては!

[高画質で再生]
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後日談

 400km地点までのタイムではいつもと変わらない(僕だけ遅く到着だけど)のに、なんで11人ものリタイアがでたのかがGoogle Groupで話題に。「結構寒かったよね?」と聞いたら、地元の人に「いつもあんなもん。来月からが本当に冷え込む」とのこと。じゃあ、やっぱり送迎トラックの準備を見てしまったからだと思うなあ。

 とりあえず自転車をばらす。ヘッド周りのグリスを拭き取ると下側の上側(ワン?)にベアリングの痕がはっきりついている。くぼみというべきかな。諦めて予備のヘッドセットを持って近所の自転車屋へあずけることに。ヘッドの調整に関してはいつか見せてもらうことにしよう。組み直し方が悪かったかなあ・・・。いまのままじゃ、ランドナーのフォーク抜き輪行もできないよ・・・。

[LA600km 1017 RUSA]第三話

 ああ、少しだけ大事なことを忘れていた。木曜日の天気予報ではこの週末は気温20度くらいということになっていて、夜間に峠を登るので思い切ってウィンタージャケットを持って来ていた。ただベースメントはいつも通り、半袖ジャージを略することにして昼間の暑さに対処、という感じ。昼間は背中に背負ったキャメルバッに冬装備をつっこんでおく。・・・と暑い・・・。陽が昇って来たらぐんぐん気温が上昇、どう考えたって20度とかじゃあない。つうか曇りのはずだったよね?追いついて来たライダーに「天気予報じゃ曇りだっていってたのにー」というと「そーそー、気温5度以下も覚悟してたんだけど、木曜”夜”の天気でがらりと変わって一部じゃ100度(30度を遥かに超える)もありうるってよー」とのこと。なんだそりゃあ。ついにダブルボトルの水を全て飲み干し、立ち止まってジャージを脱いでスキンズだけに。もじもじくんそのものの姿に変身・・・。下着で走ってるみたいな気分だ。休憩地点で「お前真っ黒い格好だけどどうなのよ?」とリカンベント乗りに言われる。「死にそう」と返す。彼はそのあと上半身裸になってルートへ復帰していった。

 さすがに小さいキャメルバッグには脱いだ冬物長袖ジャージは入らないのだけど、なんというのかバッグのベルトにくくりつけるようにしてクリア。昔の兵隊の背嚢みたいな感じになってしまっている。問題なのは大量の汗がお尻のシャーミークリーム(自転車用パンツのパッドとお尻の間の潤滑クリーム)を流してしまっていて、さらに水で濡れたパッドのせいでお尻の穴と毛がこすれて痛くなって来ていること。ジャーミークリームをけちったのが悪かったか。今回はシャーミークリームを持っていたのでトイレのたびに塗り直しでクリア。つうか、座り方がおかしいんだな、そこはパッドにあたらないはず。うーん、しばらくちゃんと乗ってなかったからなあ・・・。

 しかし自転車でバッグを背負うのってものすごく否定されることが多いけど、ウェアをいくつかつっこんどく程度なら特に問題は無いと思いますよ。登坂が続くと少し肩がこるなあとも思うけど、搭載量を欲張らなければ大丈夫。かと。




 さて、グレッグが戻ってこない。ようやく戻って来たら「胃が痛いんだ」と。僕も良くなりますよだいたい400kmくらいから。でも今回はまったくその予兆がないなあ。いいことだと内心で。リサがグレッグに「ジュンも一緒に走ってくれるって」と伝えると「ありがたい!でも少し待ってくれる?」はいはい、もちろん。

 そのまま彼は床に寝転がってしまう。どうも体調が悪いようだ。どういった類いの体調の悪さかはわからない。僕も相当お腹が悪くなることにかけては知っているので、その類いならトイレを恐れつつも走ることはできるだろうと思う。彼はこのブルベを主催しているPCHランドナーズの会長で、ベテラン。速さはないものの、淡々とペースを守ってクリアしている。一般参加者と走るときには後方をまとめて走っていることが多い。彼らと走ればペースを整えられるし、多分仮眠も考えがあるだろう。これは助かるし、闇の中をお互い単独で走るのは辛いから。

 結局、前に出発した人たちの1時間遅れで僕らもスタート。今思えば少し横になってうつらうつらしておけばよかったなあ。もう外はすっかり暗くなっていた。彼らのタンデムは初めのうちこそゆったりだったものの、だんだんと調子が乗ってき30km/h弱で安定する。なんだ、これなら大丈夫だろうと併走。登りではさすがに待たなきゃならないけど、下りでは見失うほどの差がついてしまう。いずれにしろ、このあたりは前回の300ブルベと同じルートなので気が楽だ。

 見るからにつらそうだったグレッグも、落ち着いてきたようなので(英語スキル的に)がんばって世間話をしたり。これならつらい夜もだいぶ楽になるなあ。

 待ったり待ったり待ってもらったりしながらも、悪くないペースで「ここより先80km商店なし」のマクドナルドへ。9時くらい。次のコントロールはインフォコントロール、その先が80キロ先のブルトンという町で、そこには4時55分までに到着すればいい。200メートルと500メートルのヒルクライムを含む田舎道の山岳というのが悪いニュースだが、なんやかんや言って7時間ほどあるというのは良い情報。ブルトンには仮眠所が設置されているというので2時間以上休んでもCPのクローズタイム前にリスタートできるかも。そっからがんばればCarpentiliaの町まで100キロも走ればバイクショップがある。うまく行けへっどを調製してもらう時間もとれるかもしれない。


いい自転車に乗ってるな!?ドナルドよお!?  !?

 ところがグレッグはマクドナルドのプラスチックのベンチで倒れたまま動かない。リサもいくらか食べるとテーブルにつっぷして仮眠。僕も背もたれによっかかって目をつむるものの、眠るには至らない。残り時間とコースを考え続けてしまう。

 ようやく10時半をまわって動きが。グレッグがものすごく寒いと言い出す。いや、たしかに僕は冬装備だし、あなたは薄着だけど・・・そこまで寒くは無いよなあ。明らかに彼の目の下が青い。遠回しにリタイヤをほのめかすが、そのつもりはないかのよう。あるいは僕が一緒にいるから悪いと思っているのかもしれない。そうだったら悪いことしたな・・・。いずれにしろ、ブルトンまで行けばいろんな選択肢があるよ、と自転車を準備。もうタイムアップを考えないとならない時間になってきたし。

 ややあって、しかしまだマクドナルドの店先。彼はもううずくまってしまって動けない。もう続行は無理なのは誰の目にも明らか。リサが「You had better go」と僕に。いや、僕も付き添いますと言うのも彼らの負担になるだろうと、一人での出発を決意する。辛い。あそこでどうやって助けを求めるのか、自分があの立場なら途方にくれてしまうところ。電話は・・・彼らの電話はつながるだろうか。僕の電話は電波がとれなかった。店の人に電話を借りることはできるだろうが、少なくとも僕がブルトンにたどり着ければ状況を報告できる。しかし同時にもとより一人で走っておけば2?3時間は余裕ができてたなというセルフィッシュな思いも。一緒に走ったことにまったく悔いはないけど。

 しかし、こうなってくると俄然足が回るようになってくる。なんだか高揚してきたほど。歌を歌い、ケイデンスをあげて真っ暗闇っをつっきっていく。もはや楽しいとまで言えた。なんというこのわくわく感。峠もその調子であっさりと突破。インフォコントロールまで全体平均速度を回復し、つまりタイムリミットまでの余裕も増やせた。ここらで320キロ、20時間ほど。つまり300キロなら20時間を切っているわけで、十分まにあう。月曜日のことを考えなければ。

 その次のルートで快進撃も終わる。一番辛いセクションと見込んでいたところだ。おそらく腹が減っているんだと思うが、なぜだか補給食に手がでない。長い登りが続く。1台の車がすれ違い際に僕に道を聞く。知るもんか。しかしよく彼も12時頃に半径20キロはろくな集落もないような場所を走っているサイクリストなんかに声をかけるものだ。つうか、乗せてってくれ・・・。

 前を走るライダーとは3時間ほどの差があるはずだというのも気を重くさせる。でもこの500メートルの峠を越えればあとはダウンヒルで次の有人CPへ行けるはず。2時半くらいかな。と、思うものの闇が心をさいなむ。長く緩い登りが続く。なかなか高度があがらないのがいやな感じだ。と、残り1キロを切ったところで残り高度が100メートルほど。やっぱなにか腹に入れておくべきだったと29Tを使って10%超えの坂としばし格闘。街灯が少ないというか皆無なので、流れ星がキラリ・・・というよりギラリと流れるのが見える。オリオン座も美しい、ふと見上げると満天の星空だ。他のグループがここらで寝転がって星空を眺めたというのを後ほど聞くことになったが、そうするだけの勝ちはある。

 登り終えてさてさあ下ろうと思うが、路面が思ったよりひどい。見通しも悪く20キロ以上は出せない。ちょっと不安になって自転車を止め、ハンドルを揺するとやっぱりひどい。ヘッドセットのボルト?が手でゆるむ。ベアリングまで見えてしまう。深いため息。自転車にまたがったまましばしハンドルにつっぷして目を閉じる。こりゃだめかもなあ。

 さらに残念ながらダウンヒルは期待していたようなものではなかった。少し下って、少し登っての繰り返し。ときどき走りながら手でヘッドを締める。ようやくブルトンまで下ってきたらなぜだか恐ろしく寒い。高度は下がっているのになんだこれは。なんとかブルトンのモーテル6へ到着。午前3時半前。CPになっている213号室へ入り、ヘッドの調子が悪いんだけど工具借りれますか?と言う。工具はあるわよ、その前に寝る?食べる?とスタッフのキャシーが聞いてくるので「とりあえず寝る」と床に倒れる。グレッグたちが体調不良で前の補給地点で止まってることを告げる。それはすでに伝わっていて、なんらかの解決が行われていたようだった。ほっとしつつとりあえずうつらつら。部屋に出入りする人たちもいるので寝た実感は無いけどいつの間にか5時20分頃になっていた。ここのクローズに対し40分ほどのビハインド。工具箱を見せてもらうが、レンチがかろうじて一個だけ。締めてもやはりうまくいかぬ。あーもう、だめだ。いろいろ思いはあるものの、なにより走る気がぜんぜん無い。しばし自転車を見下ろし、それから彼女に振り返って「DNFします」と告げた。



 それからベッドに倒れて目を瞑るとこんどはすっかりと眠れた。2時間ほどで目を覚まし、あまりに臭いので顔を洗う。着替えをここへ送っておけば良かったのだけど、ゴールまでほぼ休まず走りきるつもりでいたので荷物は全部向こうだ。幸いにもクリートカバーだけはある。ふとメンバー表をみるとDNFがやたら多く見える・・・ってなんですでに10人も死んでるのよ? 朝飯を食べながら聞くと、どうもあのイヤなセクションとイヤな寒気のあとにモーテルで休んでいるうちにリタイヤを決めてしまった人が多いようだ。特に部屋をとっていて着替えも送っていたらもうだめ。なにしろ、ブルトンでやめると巨大なスタッフカーが待っているというのが最悪。

 それでも先頭は26時間でゴール。コース設定者でリカンベントの彼は、途中途中でコースの注意点を携帯メールで発信しながらのゴール。次は例のクリス・ハンソンだったようだ。まだ結果はみていないけど完走者が50%を切ってるという妙に完走率の低いブルベとなった。ブルトンを出発できれば、ほぼ完走できたようだった。やっぱり悔しいね。

[LA600km 1017 RUSA]第二話

 闇は心を蝕みます。沈黙のまま集団が進んでいきますが、単独になったら辛いだろうなー。日本の闇とは何かが違うように感じるのは、やっぱり自分が異郷にある人だからでしょうか。闇が僕を拒絶しているようにも思えて来ます。そしてこういう無駄なことばかり心に浮かんでくるから嫌なんだよね。とはいえこの季節だと12時間くらいは闇の中を走らないとなりませんから、心を強くもたないと。

 霧もでてきた。いきなり何も見えなくなる。なんでみんな速度を落とさないでいけるんだろう?路面もひどくてディスクホイールを履いているエリックのリカンベントの近くにいるとガンガンと音が。自分自身も何度が穴に突っ込んで、ハンドルが前に下がってしまいました。いきなりこれか。しかもケアレスミスでライトの充電がカラになってしまっていることが発覚。3灯つけているので1灯なくてもいいのだけど、念のためにC2.1Eは残しておいて乾電池ライトで走る。周りはなんだか知らないけど、超強力なライトばかり。C2.1が弱く見えるもの・・・。

 霧が濃くなってのダウンヒル。怖くてついていけない。ちょっとぼんやりすると上下感覚が麻痺してしまうから。この何も見えなさをカメラに収めようとしたらカメラが無いとあわてる。路面が悪くて跳ね回っているのでどこかでふっとんだのか。さっきはGPSも台座からふっとんでいったものなあ。カメラが無いとかなりしょんぼり。ちょっとトラブル多すぎ・・・。CP1でライトは見つかったのだけど(バッグの中がぐちゃぐちゃになって奥に落ち込んでた)気分はかなりナーバス。自分でグリスアップしたヘッドセットも大丈夫かねえ(大丈夫じゃなかったわけです)。

 モントレーの近辺ではすでに一人旅。80km地点のCP1までは単独になりたくなかったなあ。多分自分の前に10人くらい、後方に8人くらい(全部で20人か19人だと思う)。いきなりアップダウンがあったからジョーンズ夫妻のタンデムなんかは遅れてしまったようだ。一緒に走りましょうと言っておいたのに、悪いことしたな、とか思いつつ有名観光道路17milesドライブを数百メートルだけ走って太平洋岸自動車道(PCH)へ出る。キューシートに「ここから40km補給不可」とあったけど、まだ暗くダブルボトルも半分以上残っているのでCP1まで直行することにする。あとで「80km補給不可」という荒野の山岳があるのだけど大丈夫かなあ、トイレ的に。

 右足は足のアーチを支えるテーピング、踵からアキレス腱を支えるテーピングもしてみて、クリートも前日にずらしてみたのが正解だったのか、思ったより問題無い。でもあまりトルクをかけずくるくるだらだら走ることにする。アップダウンが続いてペースがあがらないけど、悪くならなければ問題無いだろう。うーん、これは行けるかも。若干の追い風もあって心が乗ってくる。だんだんと空が茜色に。茜色の夜明けが近づいてると口ずさみながら走る。いや、これがまた素晴らしい光景。紫雲がたなびき、うっすらと明けていく荘厳な海岸線。なんという美しさ。今俺は仏陀に祝福されてここにあるのだ

 でもカメラは無い。なので記憶だけにとどめるしかない。ずっと変わりゆく空の色を眺めつつ第一CP Big Sur General shopのあるあたりに到着・・・するけど無いなあ。Big Surはキャンプ施設とかそういう感じのホテルとかが点在しているエリア。キューシートの距離あたりには何もなかったので1マイル程もどったところの店の人に「この紙に書いてあるここって、これ?」と聞くと「3マイル先だぜ」とのこと。やれやれ。停車のついでに、下がってしまったハンドルの角度を直す。しかしまあ、随分下がったもんだ。ハンドルを揺すってみたりするが、まあ大丈夫っぽい。

 次のライダーがやってきたので「ここじゃないよ」と言う。「え、そうなの?」といいつつかれも確認。先に出て行った。少しあとを着いていく。しかし行っても行っても当該の店は無い。かなり登ったところで彼は停まり「もしかして通り過ぎちゃったかなあ」と。いやー見てないぜーというと彼はCPの店へ電話をかける。どうもこの山をさらに登ったところにあるようだと確認がとれる。ほっとした。

CP1ではレシートを受け取るために朝ご飯を購入。ブレックファーストブリトー。けっこう大きい。そして熱い。なかなか食えない・・・。しばらくふたりでもぐもぐしていると、リカンベントの二人が到着。さらにジョーンズ夫妻のタンデム。初手から結構遅れちゃってるね、という会話をして僕らは出発。たしかに80kmを5時間近くかけてしまっている。おかしいなあ、そんなにまでスローペースだった記憶も無いのだけどなあ。



 登りあれば下り有り。でも平坦がちっとも存在しない。伊豆みたいな感じかな?延々とそれが続く。CP2までは100km近くあるのだけど、後半は補給できないので補給地点がキューシートに紹介されていた。しかしリカンベントやタンデムには過酷な道じゃないかね、これは。













 いやー景色だけは本当にすばらしいなー。でも飽きた。飽きた頃に補給地点へ到着。ダレダレ状態の人たちがくつろいでる。



 やたらでかいツナサンドイッチをゆったり食う。なぜだか結構みんなゆったり休むんだよねえ。だいたいこのころで8時間経過かな。このペースだと寝なくても36時間くらいかなあ・・・。みんな景色がいいからまったりなのかな?とか思っていたが、このころ既に先頭は200km突破していたはず。うーむ。



 ようやくアップダウンが緩くなる。追い風も復活、期待していた程ではないけど平均速度が30km前後まで復活する。リカンベントの人たちも楽しそう。しかしこのカーボンリカンベント、僕の鉄血長征号より全然軽いのです・・・。





 モロベイへ到着。たしかサーフィンなんかで有名。湾の中央にモロロックという岩があります。強烈な向かい風が続いて僕はスローダウン。しかし、なんか有名なコーヒー屋なのか、皆がそこでくつろいでいる間にごぼう抜きです。どうも視界に全員が入らないくらいの5名程のゆるーやかーな集団?が形成されているような模様。モロベイの先の街のラルフズというスーパーマーケットがCP3。200kmくらいだったかな。はじめの160kmで2000メートル以上登ったねえ、みたいな話をした記憶があります。今回は一応7000メートル超とアナウンスされてるからねえ、というような会話。SD1000が初めの600kmで9000メートルくらいあったから、なんとかなるだろうと思っていたけど、僕自身は月曜の朝から外せない用事があるんだよな・・・と嫌な気分。翌日どうとでもなるのだったら、走行終了後、バタンキューしてそれからゆっくり帰ってもいいんだけどねえ。

 ふと自転車を前後にゆすると・・・ガタガタ・・・というかがっこんがっこんしている。ヘッド周りにあふれたグリスがてんこもり・・・。さらに暗い気分。手でまわせるところまで締め込んでみるが、どうにもなるまい。

 走り出すとリカンベントチームが「あと少しでビッキーの家だぜ」と言って追い抜いていく。足首を労って追わない。ビッキーは参加者の独りで、この「ゆるやかな集団」になぜかまじっている。なぜか、っていうのは彼女は恐ろしく速いライダーのひとり。こないだの300kmブルベの後半を用事があるから問いって150kmを3時間ちょっとで帰ろうとしだしたほど。さすがに周りが着いていけず諦めてたけど。彼女の家がCPになっていて、食事なんかも用意されているはず。さらに工具だってあるだろう。そこまで行けばなんとかなるかな。

 

 モンキーレンチが一本のみ。うーん、とりあえずこれでやってみるしかないな。でも工具がちゃんと揃っていても出来なかったのだから、どうにかなるものでもないだろう。とにかく残り距離をごまかし走れればいいのだけど、と締め込む。作業が終わってからブルベカードにサインをもらう。予想していた最低の時間にはまだ間に合っている。こっから先が本当の山岳だけど、まだ大丈夫っぽい。豆料理と吹かし芋を食う。30分程で出発する人にあわせて出ようとするとジョーンズ夫妻のタンデムが到着。お、遅れを回復しているみたい。グレッグはあたふたとトイレへ。リサ・ジョーンズが「15分で出るわ、遅れを取り戻したい」と話しているので「僕も一緒に行くよ」と、彼らを待つことにする。ちょうど陽が沈んでしまったところ最後方を一台で走るのは不安だろうし、遅れがちな僕も12時間の闇を独りでくぐり抜けるのはあまりに辛い。

 でも、グレッグ・ジョーンズはいくらまってもトイレからでてこなかった。

 つづく(明日書きます)

[LA600km 1017 RUSA]第一話

 中央カルフォルニア縦断ブルベは残念ながら400km地点を手前にしてDNFとなりました。ブルベ初のDNFで少々ショックです。これを書き始めた今がちょうど40時間リミットで、メカトラブルを言い訳にした脱落にすぎないんじゃないか、走り続けていたらどうとでもなったのではないかとか。まあ、いずれにしろちょっと休んでゼロからの再出発。この戦いは敗軍ですが再び攻勢発起点へついて再興を図りたいと思います。それまでちょっと一休み・・・。




 今回で今年のブルベはえーと・・・12個、600kmとしては3回目。1000と1200も超えて来ているので、ちょっとダレが出ている感じ。というか右足首周辺が相変わらずなんかおかしいのでいまひとつモチベーションがあがらない。でも申込料は払い込んだし、前泊の宿はとったしアムトラックのチケットも持ってるし。スタート地点のサリナスまで1日がかりってのもすでにお疲れ気分にさせる要因。2時間かけてゴールであるOxnardへ車をデポし、そこからアムトラックで7時間弱でサリナス。成田からLAXまで行けちゃうよ・・・。

 通勤渋滞の時間をかいくぐってOxnardへ。出発の手配を整えていると他の参加者たちもぞくぞくと現れてきます。! ヘルメット忘れた! いきなり駄目です。やっぱりチェックシートを作んないと駄目だな俺は。なんとか近くのバイクショップで3000円ヘルメットを購入しますが、やっぱりどうも歯車がかみあっていない感。そういう考え方はするなとよく叱られるのですが・・・。

 さて、今回の列車はコーストスターライト。ロサンゼルスからシアトルまでをつなぐ長距離列車です。いやもう超長距離と言ってもいいでしょう。総走行距離は2300km。34時間をかけて西海岸を縦断します。僕の乗ったOxnard-サリナスの区間は半分くらいが海岸沿い。すばらしい景色ですが、ブルベで何度も走っているコースということもあり少々食傷気味。席を離れて展望車でくつろいでいたら国定公園(および軍基地)を通過するところではレンジャーの方々がずっと解説をしていました。どうもロケットやICBMなどの打ち上げ実験で有名な場所のよう。


すごいUターンで真横に先頭車両が見えます。

 
展望車。知らない人同士でも適当に座ってポーカーしてたり、長旅を楽しんでます。僕は逆転検事をずっとやってたら少々頭痛くなってきました。

 途中でとなりに座って来た大学一年といインド系の女の子と世間話をしたりしているとようやくサリナスへ。なんとか寝ずに来れた??。ロングライドの夜は毎回寝れなくって1時間睡眠とかで走ることになるけど、これだけ頭痛くて眠ってないならなんとかなるだろう。








行ってしまった・・・。もう走るしか無いのね・・・。




 さて、今回のコースとスターライトはいつのものパシフィックサーフライナーとは違い、自転車ラックはありません。自転車を載せるにはバイクボックスなるものを利用します。バイクボックスは駅で販売されている15ドルの段ボール箱(別にこれでないと載せられないわけではないはずなので、バイクショップで箱をもらってきてもOKです)。





 上下方向前後方向は十分に余裕があるものの、幅が狭いのでハンドルはまげないとNG。ペダルも外すように書かれているけど、そのままでもなんとか入りました。あとは駅員さんが運んでくれます。飛行機みたいな感じで。当然積み降ろしはちょこっと投げてます。飛行機みたいな感じで。




 サリナスのモーテルに到着すると大勢のサイクリストがすでに集まってます。このモーテルが翌朝のスタート地点。朝4時の出発。いつもの「ヘイジュン」攻撃に出会いますが・・・ってクリス!なんでそんな整った口ひげはやしてんの!?今朝気付いたらはえてたぜHAHAHAって、なんだそのアメリカンジョークは。まあいいや。こちらに来てからずっと世話になっているジョーンズ夫妻もスタッフではなくって走るよう。明日はご一緒しましょう。なんだかリカンベントが多いな。

 残っていたピザを食って部屋に戻りベッドについたのが8時半。でも午前1時半までは時計をみつめてました・・・。あいかわらず小心で寝れないのです。どうすればサクっと寝付けるんでしょうか?そういう考え方もするなとよく叱られますが・・・。2時半には目が覚めました。でも1時間くらいは寝たはず、運動能力は睡眠不足の影響を受けないのだ、と言い聞かせて出発準備。15分前に部屋を出てオリエンテーションへ加わります。

 

 こっからOxnardまで走るのかあ。どうもまだ現実感がないなあ。でも600kmくらいならなんとでもなるんじゃないかなあ。どこで寝るのか寝ないのか、時間配分はどうなのか、そういったことも何にも考えてない。とにかく長距離に渡って商店などが無いエリアが多いからそれだけ気をつけよう。

 思ったより寒く無いのはラッキーだけど、初冬装備が無駄になるかな。それはそれでいいけど・・・っとスタート。いつものように一斉ではなく、なんだかまばらに走り出していきます。自分も出発し、しばらくすると約20人の集団になって・・・さあ、600kmいっくぞー(現実感ないけど)

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