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【落武者魂】 2008年09月13日
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落武者魂

L  O  S  T     S  Q   U  A  D  R  O  N  .

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090608BRM アタックビーフラインUSA その三

夜の町は速度が上がらない。すこし町外れになると途端に路面がわるくなるので侮れない。対向車のライトの幻惑は相変わらずだ。発電所だか変電所だかがあって、頭上で高圧電線がジリジリとうなっている。時にスパークが散ったりしていてきれいと言えば奇麗。しかし寒い。6時も過ぎれば日も射してくるだろうと信じて走る。

いくつかの小奇麗なハーバーを持つ町をすぎて30kmほどたつと断崖絶壁のPCH、太平洋岸道へでる。微妙に霧雨(アルバムの写真ではオーブみたいなのが写り込んでますね。自動発行のフラッシュのせいです)。ここからマリブまで30kmはずっとこんな感じなはずだ。そして折り返して30kmほど走る。なんというか、こういう景色って写真とかで見ていると感動ものだけど、実際に日常に組み入れられてしまうと”それなり”なんだよねえ。あるときものすごい勢いで他のサイクリストに抜かれる。ものすごいパワフルなスピード。まるで発動機がついているような、そんな迫力が伝わってきた。いや掛け値無しに”自動車と同じ勢いで走ってる”!。まあ、こっちは400km走ってきてるんだからそのくらい差がつくわな。と思いつつもすっかり速度の乗らない自分が悲しくなる。なんとか平均時速20kmキープがせいぜいだ。

とか考えているとさっきのサイクリストが反対車線を走り抜ける。僕の名前を叫びながら。ゴールドラッシュジャージの女性。ええーもう折り返してきたの・・・?あっという間に30kmほど差がついたっぽい。あれがRAAMソロ完走者の走りか!悪夢のようだ!いやマジで!!

彼女とすれ違ってかなりの時間がたった気がする。ようやくマリブ。ここではスターバックスのあたりがCPと書いてあるが、なかなか見つからない。うろうろしていると名前を呼ばれてスターバックスのベランダ席にいるスタッフを発見。PBP完走者カップル、アントニーたちも入ってきてしばし休憩。「ここから先はだいたいフラットさ」と言われるが信じない。アントニーたちが出て行った後もだらだら休んでから出発した。しっとりとぬれるほどでもない霧も薄れ、しかし雲はまったく陽光の差し込むのを許さない。カリフォルニアらしいというえばそうだ。今日も前半曇り、後半晴れになるのだろうか。

折り返しの30kmは特に下り基調という訳でもないけど、ほんの少し短く感じられる。PCHの入り口近くで名前を呼ばれる。対向車線をマリブに向かって走るサイクリスト。僕がモーテルを出たときに入ってきた人だろう。内陸へ入る。太平洋はこれでおしまい。太平洋沿いだけで200km以上走っているだろう。内陸に入ると、なんだか千葉というかなんというか。えーと、宇都宮ライドみたいな感じ。これが水田だったら日本だなあ、と思うものの道幅は比べ物にならないくらい広い。さっきのPCHやここら辺はやたらサイクリストが多いなあ、やたらとすれ違う。

ああ、あれはLAからベンチュラへ行く途中に見かける町並みだなあ、というところを通る。そういうのってなんだか嬉しいし楽しい。と、いうことはあっちの山並みを越えるとロサンゼルス?ほう、じゃあ家まで150kmくらいじゃね?なんで同じくらいは知って遠くへ行くんだろう。ここらあたりではすっかり雲は無くなっていていつも通りの南カルフォルニアの空。暑い・・・。

新興住宅地っぽい高台を目指す。距離的にはそろそろCPなんだけどなあ。もう登りが続くとまともな速度は出てこない。歩くよりはマシかな、くらい。高台をすぎて下る。嬉しいが、CP到達距離になっても見当たらない。多分、どこかのショッピングモールの中にあるマクドナルド付近なはずなんだけど。GPSの指示通りに脇道にあるショッピングモールに入ったので「お、ここかな」と思うもマクドナルドは無い。仕方が無いので従業員さんにキューシートを示し「モースパークのショッピングモールってどこ?」と聞く。この先の??を??で??だよ、とのこと。よくわからんがもう少し先なのか。念のため「そこにはマクドナルドはある?」と聞くとあるとのこと。

しかし下った先にも無い。2マイルほど走って不安を感じ、キューシートとGPSを読み直す。どこでミスコースしたかわからない。ここしばらくは下りが続いた。もし、あれを登り戻るというならリタイヤしてもいいかも・・・と弱気に。やめようかと思いつつもじっくり考えた末に、多分、このGPSデータはルート作成のときに使ったか、あるいは過去のデータであって、今回のコースと違う部分があると判断。本当のCPの在処をGPSをにらんで推定する。しかたなく戻ってやりなおし、マクドナルドを発見。ふう、助かった・・・。

ここのスタッフはCoolBreezeのスタート&ゴールの面倒を見てくれた夫婦であった。嫁さんはどうした、とかそういう話になる。きつかったと言ってたと伝えると、あのブルベはけっこうきつかったよ、こんど一月にやる200kmはフラットだからまた連れて来なよ、みたいな話に。水やなんかをもらい、昼はマックでランチするというとついてきてくれて一緒に食うことに。僕の前のブルベライダーたちは45分くらい前にでてったそうだ。そして僕の後ろは3時間くらい開いているらしい。待つのも大変だなあ。しばらくがんばって歓談していると日本人のブルベライダーと見知ったことがあるとのこと。後にわかったことなんだけど、それはPBPのときで日本人唯一のタンデム夫婦であった。そしてこのスタッフもタンデムでPBPを完走したらしい。

2時間半くらいしかねてない、という話と家までクルマで2時間くらいという話をすると、奥さんの方が大変心配してくれてカフェインの錠剤をくれる。ここまでで500kmくらいになっていて睡眠不足もあるのだろう、マクドナルドの食い残しと一緒に携帯をゴミ箱に放り込んでしばらく気づかなかった・・・。

「ここから先は長い登り、そのあとはゆるやかなアップダウンがある程度でフラット。最後は向かい風だよ」というアドバイスを背に出発。たしかに長い登り。それをだらだら登っていると、タンデムスタッフがわざわざクルマで追ってきて「水はまだあるか?氷はあるか?頭にかけるか?」と声をかけてくる。せっかくなので少し水をもらう(あまり飲んでなかったけど)。まあ、次のライダーまでしばらくあるものなあ。

またしばらく登っていると今度はSAG(サービス アンド ギア だそうです)の張り紙をしたクルマが並走してくる。PCHのスターバックスでCPをやっていたスタッフだ。「水はいるか?大丈夫か?」とのこと。大丈夫ですよ!と答える。まあ、前回は反芻以上が(おそらく熱中症で)DNFだそうだから慎重なんだろうなあ。さらに登り続け、ようやく山のてっぺんが感じられるようになった頃にSAGカーがやってきて僕の前で止まる。「君の前に何人いるか?」そんなのわかるものか、とは言えない「5人って聞いてるけど?」「いや後ろに4人いるはず。抜いたか?」「抜いてないよ」「え?抜いただろ?」「抜いてないってば。前のCPのスタッフが僕の後ろに2人って言ってたよ」「フムン。でも二人抜いてると思うよ」「よくわからないな」「OK、もういいよ」ってな感じのやりとり。なんで僕が怒られるんだ(w

たぶん、その二人はどっかで飯でも食ってるかしてるんじゃないかなあ、と思いつつ(おそらく抜いてない)登る。でもここまで来たら登り終えれるよ。ただこの区間は追い抜いていくクルマが怖かった。この程度で怖がってたら日本に戻って走れないかもしれないなあ。峠のてっぺんからは一気呵成の下りなんだけど、あまりの雄大な景色に下る途中でとめて写真を撮ったりする。あーなんだか峠らしい峠だったなあ。もう少し日陰があれば・・・。

コースとしては一番右上の端っこへ向かって走っている。蠅がうるさい。あるとき気づいたのは25km/h以上なのに蠅が僕の周りを周回しているということ。僕が臭いというのではなくって、僕より速く飛んでいるんだ。うーん、もしかして強い追い風?素直には喜べない。喜べないんだ・・・。

ついに最後のCPへ到着。残り50kmちょっと。しかし”すごい”向かい風。午後2時15分なので、がんばれば4時半くらいにはつく。本来ならば、ここからは下り基調なんだから5時前には問題なくつくだろう。BobbiがこのCPにいたのだけど、先にクルマででていく。すごい向かい風だよねって言うと「トレーニングにぴったしだよなあガッハッハ」とのこと。だめだ。サイクリストってやつぁ駄目だ。しかたなくそのスタッフに挨拶をして僕も出発。

ここから向かい風の中、僕は心を閉ざし何も感じないように感じないようにと進んでいく。モチベーションは既に失われ、ただ時間が行き過ぎればいずれはゴールに到達しているはずという心境。2時間後なのか3時間後なのか4時間後なのか。それは知らぬ。ただ、眼前にある現実は「50km全部向かい風」という一点のみ。550km走ってきて、世界が僕に与えた答えはそれ。やがて幹線道路をはずれるところの奇麗な新しいGSでトイレを。ここらは古い開拓地らしく、当時の写真などがパネルにして貼られている。歴史を誇っているようだ。

ここからは町中を走っていくのだけど、古くからの町だから道は悪いし、車中からガキがなんか叫んでくるしでもうgdgd。そこから心をとざしたまんまで1時間ほど走ってふと気づく。あ、ここはベンチュラのはずれなんではないかな?はずれもはずれ、まだ10milesくらいあるんだけど、だんだんゴールへ来たんだなあという気がしてくるから不思議。残り5miles地点くらいの商店街に「ANIME GAME」のショップがあって気になったけどパス。残り1mileでダウンタウン。そしてゴールへ滑り込む。ゴールではBobbi夫婦(夫婦だったんだ、この人たち)がRAAMステッカーの大型バンでお出迎え。ブルベカードを提出する。あ、ブルベカードに名前住所を記載していなかったなあ、と思ったら印刷してあった。17時45分、ついに到着。

ああ、ようやっと終わったなあ。モーテルのトイレで顔をごしごしと洗い、頭に水をかける。ああ、ようやっと終わったなあ。Bobbiからピザをもらいコーラを飲む。ああ、ようやっと終わったなあ。皆にさよならを伝えてクルマへ戻る。ああ、ようやっと終わったよ。

ああ、楽しかった。多分、楽しかった。楽しい人たちと走れた。楽しい人たちと出会えた。この楽しさをしばらく反芻して楽しんでいこう。今年は参加できるブルベはもうないだろう。ああ、楽しかった・・・。
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090608BRM アタックビーフラインUSA その二

長く走れば走るほど、感想は短くなっていく。たぶん、脳の記憶能力には限りがあるので、短いライドのことは詳細まで覚えておけるし、長いライドになるとはしょるように記憶しているんだろう。けれどもこうやってこつこつと掘り起こしていると、圧縮された記憶の隙間が開かれたりする。今書き留めておけば、それをいつの日か思い出して楽しみ直すこともできるだろう。いつか自転車に乗れないような日が来ても、今までのライドを反芻していける。

自転車に乗っていていろんな人と出会い、いろんな出来事があった。辛かったことと楽しかったことばかり思い出す。嫌なことは忘れてしまっているのだろう。それは記録されないから。記録しないから。

この600kmも、今思い出し思い出し書くのは苦痛ですらある。眠いし。眠くなるし。でもここで書いておかないと、あとで思い出せなくなってしまうだろう。せっかく苦しんだのだから、後でゆっくり楽しむ日が来るといいなあと思って、綴っている。

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「あなたの後ろにあと二人いるわ。三時間遅れで」とBobbiは言う。それから食事にするかシャワーにするかを聞いてくる。ここは事務本部みたいな扱いなのだろうか。他にブルベライダーのために部屋が取ってあり、後でそこで寝るように促される。パンクして参りました、と僕は言う。食べてからシャワーにします。Bobbiがスープとシチューを皿にいれてくれ、あとベーグルを食う。日中とはうってかわって気温が下がっていたので、暖かい食事がなによりありがたい。エネルギー不足もあって下がっていた体温があがってくるようだ。

「あのクルマにRAAMのステッカーが貼ってあるけど、このグループで出るんですか?」と聞く。Bobbiは「x年前にサポートしたときに貼ってはがしてないのよ」みたいなことを言う。そして「来年は4人チームで出るの」と。はあ、やっぱりRAAMなんですね・・・。「xxxいるじゃない、xxx」多分、ゴールドラッシュジャージの女性のことだ「あの人は去年女性ソロで完走したのよ」という。150mile差だったけど、みたいなことも加える。

「日本でRAAMに出たい人間がいるんですが、どうすればいいんですかね」と聞くと「クォリファイするだけ」と言われる。まあ、そうなんだけどさ。Bobbiは来週もロングディスタンスレースに出るんだそうだ。「ユタでやるの。500、まあ570milesだけど、私遅いから」とのこと。サイクリストの「私は遅い」を信じることほど愚かなことはありません・・・。なんだよ570milesのレースって・・・。

それから僕はフロアポンプを借りてパンク修理したばかりのタイヤに空気を入れ、シャワーを浴びてクルマから持ってきていたTシャツ短パンに。礼をして部屋を移る。時間は1時前くらいか。何時に出発するのかと聞かれたので(予定では3時出発だったな)と思い出し、はっきりと「4時過ぎに出ます」と答える。クリスも4時って言ってわ、3時半に起こすわねという話になって僕はベッドに倒れ込んだ。

結局よく眠れるわけもなく、3時半。クリスは準備を終えてうっすら目を開けていた僕に合図をする。やれやれっていう感じで僕も起き上がって、ポポペクジャージに着替えてBobbiの部屋へ。朝飯としてスープを飲んでいるとクリスが「行くよ」と。僕は眠いんで「もう少ししたら行く」と答えると彼は先に出発(彼は6時間以上睡眠をとっている。おかしいな250kmまで一緒だったのに・・・)。入れ替わるようにブルベライダーたちが入ってくる。僕の後ろを走っていたふたりだろう。かなり消耗しているようだ。

彼らは7時まで眠ろうとかいう話をしていたけど、僕は部屋を出て出発の準備。ゴールドラッシュの女性がまだ部屋着のままで外にいた。「霧が酷いから朝方は走りたくないのよね」というようなことを言っている。たしかにそうなんだよね。なんだかRAAMの話になって、最後のセクションまでついていってた相手が増速して「きゃーついてけなーい」みたいになったとのこと。多分、そんな話。

辞してクルマへ荷物を置き(くさいジャージ、その他)静まり返ったベンチュラの町へ。そして海岸沿いを南下しはじめる。午前4時半すぎ。予定通り200kmを12時間なら16時半ごろゴールだろう。