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【落武者魂】 12 中壢獅潭200km
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落武者魂

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台湾自行車極限挑戦 中壢獅潭200公里 其の二

 三湾の祖霊祭り? の混乱を抜けると、すっとのどかな山間の道に出た。このあたりからは、台湾に在住のMさんと前後して走るようになる。こちらは上りは遅く、下りは勢いがついてしまうタンデムなので、なかなか一緒に、という感じにはならない。Mさん夫妻には、この滞在中大変にお世話になった。今気づいてしまったのだけど、借りていたヘルメットリアライトを持ってきてしまった。ごめんなさい……。



 山間の県道124号線は走りやすく、ゆるやかな上り下りを楽しみながら、古く小さな集落をいくつも抜けていく。このあたりは国に指定された景勝地であるらしい。通り過ぎるだけになったけど、獅頭山風景区といって山の上にあるお寺は特にすばらしいらしい。そんな登山口門前を横目に見ながら、川沿いを行くと、ちょっと騒がしい町に入っていく。南庄だ。かっての炭鉱の町だったようで、一旦は廃れていたのだけど、客家の人々が暮らす古い町並みということで脚光を集めているようだ。




 ちょっと面白いものとしては、ここには乃木坂というのがあるという。あの乃木将軍が、ここの住民が荷運びに苦労しているのを見て、寄付したお金で作られた道だそうで。今でも乃木将軍の写真を飾ってあったりするらしい。こういう戦前のものだけでなく、戦後しばらくたってから新たに作られた日本人を祀る廟なんてのも台湾にはいくつもあって、ちょっと不思議。台湾の道教はかなり鷹揚な宗教のようだ。



 南庄の橋を渡って、小さな折り返しルートに入る。ここで先頭とすれ違った。先頭はパシフィックの小径車に楽しそうに乗るS氏。Mさんの旦那さんだ。さすがダウンヒルの元ナショナルチャンプ……。力があれば機材なんてどうでもいいんだよね……。



 この”小さな折り返しルート”は往路だけ通る盲腸線で、有人チェックで折り返す。有人チェックは小学校の向かいにある小さな商店に間借りしていた。判子をもらって折り返す。PC2を出てから、参加者の集団は大きくバラけてしまった。折り返してきた人たちの様子からすると、僕らは十~十五番手くらいかな。さっさと獅澤の折り返しまでがんばろう。ここから折り返しをはさんで仙山という山を往復する。
 往路は15kmくらいの上り。それを帰りは8kmほどで登り返す。帰路は平均斜度が8%ほどあるので、ちょっと怖い。まあいい。行かないと。



 実はこのあたり、事前にGoogleストリートビューで見ていた時にはちょっと不安だったセクション。というのも、道が狭くって車が多そうだったから。
 実際に行ってみたら、そうでもなかった。それに台湾の車は意外や、大きく避けてくれる。稀にすれすれを気にせず飛ばしていくのもいるけど。たいていは対向車線へ大きくはみ出して抜いていってくれる。こっちが車線の真ん中を走っていたって、全然煽られたりするようなことは無かった。
 ただし、ブラインドコーナーでも大きく対向車線へ飛び出して抜いていってくれてる……。ってことは、ブラインドコーナーから車線を割って飛び出してくる車を、常に想定しておかねばならないってことだ。実際、結構車線を割ってコーナリングしてくる車がいる。



 せっせと登っていたら、前走車に追いついた。どうもフラフラしている。眠いのかな、と思ったが、いくらなんでも200kmライドの100kmにも達していないだろうところで、居眠りするほどのことはあるまい。と思っていたらそのまま路肩へぶっ倒れた。
 側壁があったので、なんとか体は支えられたようだ。
 どうも、足が攣ったよう。
 大丈夫かい、と声をかけると、大丈夫、と返答(たぶん。言葉は通じないが魂で会話した)。少し休んでいけよ、と声をかけて先へ進んだ。やがて、紅白の梅郷を見下ろす道になり、写真を撮ったりしていたら、彼が後ろからやってくるのが見えた。どうやら大丈夫そうだ。



 暑い……。汗が吹き出す。
 台湾に来てからずっと雨か雨の降り出しそうな天気で、正直寒かった。週末になってようやく雨が上がり、ついに今日は晴天まで覗くようになったのだけど、そしたら一気に暖かくなった。初夏くらいな感じだ。ものすごい勢いで吹き出す汗を見て、細君が笑う。



 そして、終盤になって斜度が少しきつくなって、再び僕らだけに。
 高度は700m近い。ということはそろそろ山も終わるはず……。
 770mほどで、反対側の斜面へ出た。
 この山は仙山というのだけど、頂上のほうに展望観光施設や、大きなお寺があるようですごく賑やか。それを横目に見ながらPC4まで8kmほどの下りに入る。斜度がきついので、ブレーキを話した瞬間に速度が跳ね上がる。ドラムブレーキを使いながら、リムブレーキの温度上昇を避けつつ降りていき獅澤に到着。こちらも仙山の門前町ということで、かつては賑わったところだそうだ。今はちょっと寂れている。



 さて、105km地点で現在までの平均速度は17km/hちょっと。これからこの山を上り直すと一時的にギリギリになりそうだ。とりあえず、食事を買い、補修用のビニールテープを購入。S氏のアドバイスを受けて、急遽フェンダーを装備したのだけど、固定がうまく言ってなくってちょっとタイヤにこする。それをテープで縛り上げて回避しようってこと。
 スタッフの方たちといろいろ雑談。記念写真とかも撮ってもらう。あなた達は速いんだから、ちょっとこの近くの有名なゼリー(?)屋さんに行かない? と誘われるものの、そこまでの時間の余裕はないので、残念ながらそれは断念。仙山再攻略へと発進。





 いやはや、ほんとにキツイ。8km 8%。蛇行も用いたいけど、観光地だから交通量が無いわけじゃないんだよね。途中で座り込んでいる参加者がいる。押して歩いた人も多いらしい。追い抜いていく車から「加油! 加油!」と応援されまくり。「謝謝!」と返しまくり。返しまくってるのは細君で、僕はそんな声を上げられない。ペダルを押し込んでいると、やがてひとりマラソンで痛めた右膝が痛くなってきた。
 途中でスタッフの人達が道路の左右にたって応援してくれている。
「ここからが一番キツイよ!」
 って、これまでも十分きつかったんですが……。
 ただ、もうGPSが示す残り距離は少ない。
 カーブを抜けると、人が集まっている。なんだろう?
 なんとシークレットコントロール。折り返しルートだから特に必要はないんだけど ”ここで一旦安め”的なものなんだろうか。まあ、一息つこう。



 さて、みなさんにお別れして頂上まで最後のひと頑張り。仙山の南庄側の斜面はこちらよりは緩いので、かっとばしていける……と思ったら、自動車に追いついてしまって速度がのらない。ここで時間を稼ぎたいんだけど……と思いながら、結局ほとんどクルマの後ろでブレーキを引きながら降りてきてしまった。それでも、一旦は15km/h台まで落ちていた平均速度は17km/hくらいまで回復。残り距離70km。12時間くらいで完走できそうかな。



 南庄は往路で通った時よりもずっと賑やかになっていた。三湾のお墓参りの大騒ぎの方はすっかり落ち着いていたのだけど、街に入るとすごい渋滞。スクーターも溢れるように走っていて、ここからが正念場だなあと感じる。三湾のPC5はPC2の向かいにある全家。つまりファミリーマート。ここからは追いついてきたMさんと一緒に行きましょうかと思ったのだけど、少し走りだしてサングラスを置いてきたことに気付いた。
 ああ、せっかく三湾の街をぬけて走りやすくなると思ったのに、戻らないと……。

 国道三号線は交通量が激増している。
 日曜だからなのか、大型車は少なく走りやすい。ほとんどがセダンかクーペ。
 ロータス・エリーゼやランボルギーニなんかも通りすぎる。アウディR8なんかも。しまいにはスマート・ロードスターまで。日本で多いワンボックス系はほとんど見かけない。
 しかし……上り下りはきついね。
 なんとかかんとか進んでいたら、GPSの電池が切れていることに気付いた。コースはシンプルだから、GPS無しでも行けるかなと思ったけど、やっぱり危険なので電池を買うことにした。しばらく走っていたらお祭りをやっているような大きな街があった。タンデムを細君に任せて、小走りに街の中に分け入ってコンビニを見かけて電池をゲット。



 PC6で残り距離25kmくらい。6時か6時すぎに到着かな。ここからは特に交通状況が悪化するから、まずは事故の無いようにすることを第一にしないと。
 ありがたいのは、折り返してからずっと追い風が吹いていること。幹線道路の交通量が多いので、それも追い風を作り出しているようだ。国道三号から国道一号へのバイパスへ分岐する所で、交通量の怒涛に飲み込まれて難儀したけど、なんとかクリア。中壢へと向かう国道一号に戻るとほんとうの戦いが始まった。

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 けれど、人は慣れる……というか、案外走りにくくない。スクーターが大量に走っているおかげで、一緒になってしまえばすごくスムーズなのだ。クルマが渋滞で詰まっても、スクーターが走る場所は基本的に確保されている。不思議とクラクションを鳴らすクルマは少ない。進路を邪魔するようなこともされないし、無理やり前に割り込むこともない。なんだか、だんだん楽しくなってくるほどだ。
 わざわざ台湾に移り住んでメッセンジャーを開業しようという人がいるってのも、わからないではないな。



 ゴールまで1kmほど。中壢の街の中心に入り込んで、いよいよ交通ラッシュに突入。車列の隙間にスクーター軍団と一緒に流れ込み、ネオンの街を走り抜ける。なんかもう、ブルベって感じじゃない。しかし、意外とタンデムでも走れるんだね、こういうところ。もちっと取り回ししにくいかと思ってたけど。まあ、全長が長いったって、自動車用に作られた道なんだから、全然問題無いってほんとだ。



 中壢のゴール会場に戻ってきたのは6時過ぎ。テーブルを並べて待っていたスタッフの方々にブルベカードを提出した。サインをして終了。また記念写真を撮ってもらい、そのあとはMさんご夫妻と夜市のスパイシーステーキ屋さんへ。



 いやまあ、なんというか、思ってたより楽しかった。天気も良かったし。



 おわり
 
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台湾ブルベ 中壢獅潭200公里 其の一

 2012年の初ブルベは、なんと台湾で走ることになった。
 東京から飛行機で3時間ちょっと。交通費は京都へ新幹線に行くのとそう変わらないし、宿泊費を考えると断然オトク。それになにしろ南国! 暖かいはず!(東京比)

 参加までの詳しい経緯や、参加のための方法は別に記すこととして、今回のコースのお話から。
 タイトルは「中壢獅潭200公里騎乘活動」。略称仙山200km。中壢市と獅潭という山間の町との間を折り返すルートで、獲得標高は3200mほどらしい。ほんとはこんなきつそうなの嫌だったんだけど、台湾ブルベの一覧を見ると、どれも獲得標高が200kmで3000を超えているので選びようがない。
 スタート地点となる中壢市は、台湾の国際空港である桃園空港からタクシーで20分くらい。2012年2月レートだと、だいたい750円くらいで移動できる。タクシー、安い……!



 さて当日。直前までバタバタしていたせいで、あんまり眠れなかった。
 スタートは朝6時、車検は5時からということで、まだ真っ暗な街をそろそろとタンデムで走りだす。台湾の街中は、クルマとスクーターの混沌たる怒涛に溢れていたので、おっかなびっくりだったのだけど、さすがにこの時間では交通量は少ない。

 スタート会場にはテントが張られていて、すでに参加者やスタッフの方々が賑やかにやっていた。
 僕らは宣誓書をもらってサインをして、車検を受ける。宣誓書にライトや反射ベストなどのチェック欄があって、ひとつひとつ判子をもらわなくてはならない。けっこう、厳格だ。そのあと、ブルベカードやヘルメットに貼るゼッケンシールなどが入った袋をもらう。ちなみにキューシートは数日前にメールで送付されるだけ。今回はGPSデータだけwebに用意されていた(公式かどうかは不明)ので、それを事前にいれておいた。

 ブリーフィングが終わると、みんなでスタート。40人以上が走りだす。まだ交通量が多くはないけど、帰りはどうなっているのかなあという一抹の不安。中壢はそごうなどもある中核都市なので、夕方になったら交通量は大変なことになるだろう。
 中壢から国道1号を南下。信号待ちが多い。しかも結構長い。カウントダウン式の信号が多いんだけど、1分以上待たされるのがざらにある。そして集団で走っているんだけど、先頭以外はあまり速度を出さず、しかもふらふらしている人がいたりするので結構怖い。それで前方がクリアになったりしたら、思い切って前へ出るようにしてるんだけど、すぐに信号で止まる。
 そんな感じで、郊外へ出るまでの10kmちょっとで、平均時速が17km/hくらい。あまり芳しくない。というのも、このコースで平坦なのはこの最初と最後の10kmくらいだから。今回は中盤に仙山という結構な峠を往復したり、獲得標高があるので、時間を稼げる所では稼いでおきたい。



 緩やかにコースは登り続け、350mくらいから下りに転じて、国道三号へ。それからはアップダウンが続く。よくある幹線道路のアップダウン。
 そうそう、今回の200kmブルベのPCは6箇所。かなり多い部類。基本的にはコンビニチェックで、買い物をして店員さんにブルベカードに判子を押してもらい、あわせてレシートを受け取る。コンビニはセブンイレブンとファミリーマートだった。ファミリーマートは台湾では「全家」と表記される。ロゴやカラーリングは日本と同じ。売っているものも、だいたい似ている。セブンイレブンではウィダーインゼリーやランチパックもあった。おでんなんかも。それに、たいていイートインのスペースが用意されているのもありがたい。



 内湾線というローカル路線沿いに竹東を抜ける。街中に入ると急に交通量が跳ね上がる。特にスクーターが一気に増える。はじめは怖いなと思っていたけど、スクーターが大量に走っているおかげで、かえって走りやすいことにも気づいてきた。というのは、スクーターが走るスペースが確保されているということなのだ。また(日本にも昔あったが)、信号では二輪の停止線が別に用意されている事が多いので、渋滞していても大きな顔をしてそこまですり抜けていける。
 また、スクーターがすぐ脇をすり抜けて行ったり、ぐいぐいと割り込んでいく車はよくみかけたが、意図的っぽい幅寄せや、煽られたりすることは今回は全くなかった。スクーターがママチャリのように扱われているので、ママチャリのようにゆっくり走るスクーターも多い。そして路上の誰もが、そういう混沌を前提にして走っているからだと思うのだけど、意外と慎重で、歩行者を無視して突っ込んでくるようなことは少ないようだ。
 そんな感じで、わかってくれば、恐怖感はなくなる。けれど、もちろん安全だというわけではなくって、なんというか、(混沌は)お互い様的なルールが根底にあるというだけ。台湾って、もっとクラクション鳴らしまくりだと思ってたから、そのイメージの差から安心しちゃったのかもしれない。
※北部~北東部のトラック街道はかなり怖いみたい。



 竹東から三湾までは広いけど交通量が少ない。アップダウンは続くけど、ダウンのときに一気に速度が稼げる。そのうち、前方の方に異様な車列がゆっくり進んでいるのが見えた。なんというかお祭り? 政治集会? あまりに遅いので、追越車線側から一気に前へ出ちゃおうとやってみたら、この車列が長い長い。





 長い長い……やばい……、道が上りになってきた。それなのに、車列の先頭が見えない!
「加油! 加油!(ジャーヨウ! 頑張れの意)」と声をかけられたりしながら、ふんばる。
 日本のデコトラみたいなトラック。上に載せられているのは関羽のような中国武将なのだけど、かかっている音楽はヒップホップだったりする。太鼓を載せて叩いているトラックも。ロケット花火を打ち上げているのもいるよ! しかし……どこまで続くのこれ?





 急に左側からデコトラが追い抜いていって、ちょっと先で止まり、並んで走るトラックの運転手と何か話している? しかたないのですり抜けようとしたら、ドアがバカッと開く。でも、もう台湾的混沌を理解しているので、そんなのは既に予測済み。自転車を倒しこんでそれを避ける。余裕です。





 ドンドンバンバンと花火や爆竹の音がどんどん派手に。
 PC2の三湾はすっかりクルマとバイクで埋め尽くされてる感じ。その先では、たくさんのカラフルな祠にたくさんの人が集まって大騒ぎしている。戦争みたいな騒ぎ。たぶん、これは台湾のお墓で、先祖を祀るお祭礼みたいなことをやっているんだろう。路駐禁止とかここには無いみたいで、停める場所を探す車でなかなか進みにくい。それでも、気づけば平均速度は20km/hを超えるくらいまで回復。やっぱり信号の連続は山岳くらい時間を食うなあ。



 コースはここから県道124號へ。三湾南庄道路へ。南庄っていうのは、台湾で最近有名な観光地になっている町。客家が多く暮らす土地だそうだ。昔は炭鉱で賑わったみたいで、そういう施設なども見かけることができた。現在は台北などの都市圏から近い自然地区として親しまれているらしい。
 そんなわけで、ルートもぐっと山間の景勝地へ入っていく。先の方にはそびえる山脈も見えてくる。なにしろ台湾には4000メートル級の山もあるのだ……。



 つづく