埼玉400km九十九里は稀に見るフラットコース。フラットであることにすべてをかけ、すべてを捨てた、そんなルート設計。走りきって思う。関東にこんなにも平坦で信号の無いストレートコースを作れるものなのかと。奇跡。これは日本ブルベ界に花開いたフラットコースの奇跡なのだと。いまだに深夜の土手脇2車線道路を走り続けている悪夢にうなされて跳ね起きるほどだ。
週の半ばまで天気予報は「雨」だったのだけど、最終的には雨は前にずれこんで「にわか雨の可能性」に落ち着いた。ただし気温は最高27度~最低5度(weathernews調べ)、風速10メートル程度と嫌な感じ。念のため耐寒装備として長袖ジャージとレインジャケット(ウィンドブレーカー兼用)、それとシューズカバー。つま先だけを覆う奴を持っていきたかったのだけど、どっかにしまいこんでしまったらしく見つからなかったので、真冬のようなシューズカバーをフグバッグへしまう。荷物量的にはもう少し小ぶりのバッグでよかったのだけど、うちにはこれしかないので仕方が無い。
スタートしてからはしばらくいつものコース。とグループで走っていた一人のライダーが落車によって怪我を負いDNF・・・。むう、残念・・・。
そこまでは比較的悪くない感じだった風向きは、ここらで変わって向かい風に・・・。そして向かい風のまま80km地点のPC1まで。あれ?この区間、何があったか全然覚えてない。えっと・・・たぶん・・・平らだった。
PC1からPC2まではほとんどが利根川の土手に沿った道。ここは結構な追い風で40km/hオーバーですいすい走れる。でもなんだか楽しくない・・・なんでだ?前を向いても・・・
後ろをむいても・・・
同じ景色のせい?そうなのかな?よくわからない。なんだか追い風の割りに空気抵抗がでかい気がするんだよね・・・。体幅から余裕ではみ出しているフグバッグのせいじゃないのかといぶかしむ。たぶん、それは小さくないと思うんだよね・・・。特に速度が上がれば上がるほど。でも去年中盤あたりはこれで乗り切ってきたんだし、自分自身が駄目になっているのかもしれない。
利根川の河口近くの橋を渡ってPC2なのだけど、この橋が(想像してたけど)狭いのにトラックが多くって怖い。乗っていたトレインを見送って、トラックを全部先に行かせてから渡る作戦にて通過。しかしもうすこし立派な橋でもいいんじゃないかねえ。河口堰と一体だからむつかしいのかな。
PC2から折り返しまでも・・・ごらんの通り。こんな感じか、あるいは集落の中を抜ける感じ。僕と細君は途中で列車を降りてコンビニを探すも、それさえまったく見当たらない。そして向かい風が・・・どんどんきつい・・・。
日が落ちる段になって、風が弱まってきた。弱まってきた?風向きが変わり始めてる?いまはそれより早くPC3へ・・・。そこは折り返し地点。
折り返し地点でグループの先行者においつく。それほど遅れずに1時間遅れスタートのポンチャンまで登場。速いねー。僕はもうだめなのに・・・。いやマジで・・・。だって、また向かい風になってるよ・・・。あたりはすぐに真っ暗。日が落ちきると変わらないタイミングで僕らもグループから脱退。細君を引いて淡々と走るが、淡々のレベルがいい具合に落ちていく。だいたい17~18km/hで巡航。信号が無いのが救いだけど、この区間、70kmも続くんだよねえ・・・。現在速度から割り出すと・・・うーん、遠いなあ・・・。それでも普段のブルベより悪くないタイムにはなっているんだけど、どうにもそんな感じがしない。なんだろう?このもぞもぞ感。
とある集団が僕らを抜いていく。細君が「ついてけ!」というが「無理無理」と返す。しかしすぐに、たまたま信号に捕まっていた彼らにうまく合流できてしまい、金魚のフンとして走ることになった。すると不思議なことにさっきまで17km/hでくるしーくるしーと思っていたのにいまや30km/h付近で走り続けるグループにくっついていけるようになっていた。駄目だと思うから力が出ないゆったり走行になってしまっていたのか、ゆったり走行で体力が回復していたのか。いずれにしろこれは天の采配、神の遣わした船。千切れるわけには行かない。
30kmほどを彼らにくっついて走っていたが、そこでコンビニによるということになったので、僕らは去ることになった。もうこの魂殺し(ダエモンキラー)な九十九里の道路から逃げられると思うだけで感涙。PC2として通過したコンビニがPC3。ということは次は「あの」土手脇道路なんだな・・・。そして次のPCまで80kmもあるのか。これはこのコースの見せ場なんだな、きっと。
ちぎれた。眠くなる予兆なのか・・・というかやる気が売り切れた。しばらく脚が回らない。やがて体内のエンジンが再起動をはじめ、速度が上がりだす。今度は足首が痛い。重に右足首のくるぶしの下あたり。どうしようもない。あと左足のペダリングがスムーズでなくって、ときどきかかとが下がって踏み込んでしまう。意識していても不意に。そうしていると段々と痛みがでてきちゃうようだ。まいったな。
全体的にだるいムードもあって80kmを一気走りする気も起きず、永遠かと思われた土手道ロードを外れたところのコンビニでいったん休憩。しかしそこは決して安息の場ではなかった。というのも、、、寒い。きりきりと寒いのですが、何か?
最後のPCまでたどり着いたのはいいものの、なんだか敗残の兵臭がプンプン。細君はガクガク震えて話すことやることに余裕が見えないので結構眠いのだと判断。持ってきていたすべてのウェアを着せて、暖かいものを飲ませる。たしかに・・・寒い!使い捨てカイロを買ってやったりとしているうちに結構このPCで時間をとってしまった。外で眠るわけには(ほとんどの通常スペックの人間には)いかない寒さ。眠くって寒い細君をどうするか悩む。とにかく危険にさらすわけにはいかない。いつものようにサドルのうえで「こくっ」としたらそのまま吹っ飛んでしまいかねないのだ。
出発してすぐに車道から奥まったところにコインランドリーが見えたので、車列からちぎれてそちらへ向かう。それはちょっとだけ大きめの店舗で幸いなことに板の長ベンチがあったので、そこで寝かせる。ラジオがガンガン流れていてお世辞にも快適睡眠環境ではなかったけれど、20分ほどの仮眠を取らせる。僕は幸いなことに前回の600kmに引き続き、それほど眠気が進行しなかった。
いっそ明るくなるまで寝かせて(&寝て)しまおうかと思ったものの、交通量が増えるのもなんだな、と細君を起こして再出発。短い睡眠だったけど、彼女の脳はそれでスッキリしたらしく寒さへの震えも大分軽減されているようだ。速度もちゃんと乗ってきているし、なによりも受け答えがテキパキしてきた。人は少し眠るだけでずいぶんと変わるものだなあ。
足首が痛い。かなり痛くって困っているが、もうゴールはすぐそこ。すぐそこだからがんばんなくて良い理論が炸裂し、どんどん速度は落ちる。あまりにひどいので細君を先行させ坂の上で待たせる感じにさえなる。そしてゴール。走っている僕らはともかく、スタッフの方々は体を動かしていないのでこの寒さはずいぶん堪えるのだろう、みな厚着だった。ブルベカードを提出し、400kmブルベ終了。それから細君に告げる「とりあえずスーパーランドナー達成おめでとう」と。
フラットコースを・・・なめてました・・・。