先週の埼玉300kmは多くの行程で風に助けられ、大勢の仲間達と一緒に和気あいあいと楽しくサイクリングペースで走り切ることができた。我が細君も初の300kmブルベを余裕綽々といった感じで終えることができたようだ。でも、こんなのはブルベじゃない!ブルベってのはねえ、真っ暗な峠を頼りないライトでぜえはあしながら登っていき、しかも雨はザンザン降って通り過ぎる山村も寝入って静か。そして見渡すかぎり他のライダーはおろか、人間存在を感じられるようなものが無いくらいの荒野を走っていくものなんだよ(偏ってます)!こんな楽しいブルベ走りきったからって俺は認めねえ、認めねえぞお・・・。
ということで連チャンで静岡300kmに参加してきました。静岡ブルベは今年はじめて参加しましたが、国道1号のイメージから離れた里山へ向かえば山あり谷ありつつ交通量に脅かされることもあまりないサイクリスト天国のような場所でした。そんな楽しい場所でサイクリングを夫婦で楽しもうよ、というのが本当の趣旨です。
さて前日は夕方くらいに袋井プリンセスホテルへ投宿。2泊二人で1万3000円くらいとリーズナブル。禁煙ルームが無いこと以外は良い宿でした。晩飯は浜北まで行ってうな吉といううなぎ屋さんへ。実にうまい。翌々日に某駅前の有名店に行きましたがうな吉の方が全然上でした。次もまたうな吉行きたい。
おわり。
ブルベの前の夜に寝付きが悪いと最悪。とくに早朝スタートの時には。今回は運良く寝入ることはできたみたいだけど、数十分おきに目が覚めるという次に悪いパターン。でも目が覚めるってことは寝てるってこと。自分は寝たんだ、と思い込めれば勝利。5時半前に集合場所へたどり着くと超寒い。天竜の方は-4度だとか聞こえます。まあ、そこを通るのはお昼ごろだから大丈夫だろうけど。
超寒いけど走りだせばなんとかなるもの。袋井市街を抜けてまずは北上。たしか今日のルートは大きな山がふたつ。それと小さなアップダウン無数って感じだったはず。それも中盤を過ぎるまでに山が多くって浜名湖へ降りていく終盤からは基本的に下り基調+フラット。そこまでうちの細君が耐えられるかどうかが今日のチャレンジ。袋井を抜けて「小京都森町」へ。この看板は前回も見たけど、川の流れる田んぼの平地のどこが小京都なのかわからぬまま。どこかに小京都な街並みなどがあるのだろうか、と思いつつ小さな集団においついたので細君を前に出して集団の後方へ回る。
すると小さなアップダウンを繰り返す場面で僕がちぎれる。悪いことに向かい風ということもあって、どんどん引き離される。そのまま視界から消え去られるところまで・・・。少しするとルートは道にはいっていき、ようやくそこで細君に追いつく。
茶畑の合間を縫うような坂道を行く。路面に水が流れてるな、と自転車で横切ると「バリッ」という音が。まずい、凍ってる・・・。登りの間に2回ほど凍結した路面が現れたものの、踏みつければ割れる程度だったので問題なし。下りだったらまずかったかもしれないけど・・・。そうか、やっぱり登って行くと寒いよね・・・。と570mほどの峠を下るとキュン!と寒い。やがてトイレ休憩していたinainaさんに追いつかれ、おしゃべりしながらPC1へ。inainaさんは用事があるとのことでPC1の前でDNFして引換されて行った。僕らは大井川沿いをさらに北上してPC1のミニストップへ。大井川沿いは少しダンプが多いが、これは不満を言うようなレベルではなかった。
しばらくPC1からは大井川沿いを引き返す。途中路肩によってルートを検討しているような集団がいたので下りの勢いで突き抜けながら「まっすぐでしょう!」と叫んだら違っていた。誰もついてこなかったので被害なし。数百メートルを登り返してルートへ復帰。問題なし。
木漏れ日のさす杉林の道を登る。花粉チャージされた山の様子を見るとげんなりだけど、体力を使って抵抗力が落ちているからか鼻水までしか症状が進行しないのはありがたい。普段は夕方にはひどい頭痛と肩こりでインフルエンザかと思うくらいだものな・・・。日陰は僕には肌寒いくらいだけど、陽が当たっていれば春の訪れを感じることもできる。そんな林道を登っていると視界がひらけた。
標高600mにも及ぼうという人里はなれた山の上に開ける茶畑の集落。なぜ、人類はここまでして茶を栽培するのか・・・。そこまでして人類は存続していかなくてはならぬのか・・・。まさに”業”。つまり”カルマ”。お茶はうまいからな・・・。そんなことを思いつつ、名も知らぬこの天空の茶畑を僕は涙しながら抜けていく。茶か杉か。まさに生きるか死ぬか。
PC2は天竜市街の北側。天竜ってすごく田舎なイメージだったけど、こういうルートでくると大都会のようだ。なにしろコンビニがある。コンビニ飯をばくばく食いながら、あとはそれほど大きな山は無いと細君に告げる。あまり気づかないようにしているのだけど、僕程度の脚力では自転車の重量はしっかり効いてくるらしくって、斜度によっては細君においてかれることがままあった。そんな具合なので、今日は天気も良いことだし体力的にはあまり心配はしなくていいようだ。でも、サドルとの擦れなどの股ずれ系や、自転車経験の少なさから来るトラブルとかは心配。心配してもどうしようもないので今度は天竜川沿いに北上開始。
そして頭上に見つけたのが・・・

ついにロングライドは月へ到達。38万キロの虚空を抜けて・・・。これは小さなペダリングだけど、人類にとっては大きなケイデンス。天竜川沿いには左右両岸に道路が通じているものの、走るのはあまり交通量のない左岸。そこへ渡るところにはでっかい灯篭が。
真っ赤に塗られた鉄橋と合わせて秋葉神社への参道ともいった感じ。ワクワク感が溢れてきます。天竜川沿いの道も旧道っぽい感じだけどもなんだかゆったりと走りやすい。アップダウンを繰り返し進んでいくとこんな場所に。
「こういう場所ってさー」と僕。「気持ちとしては下る方に行きたいんだけど、コースは登りなんだよなあ」と大声で。細君が「下る方に引きこまれちゃうよねー」とか言いつつ右の道へ。僕は自転車が重くちょっと遅れ気味ではあはあと。はあはあと。はあはあと登っていると赤い自転車の方が追い抜いていく。すぐに細君も追いぬかれ、二人揃って情けないなあとGPSを見ると200mを突破。天竜川沿いには120m前後のアップダウンしかないぞ、と言ってたのにこれはまた責められるな・・・。と思いつつはあはあ継続。細君が「これは9%くらいあるよねえ」と。「あるかもねえ」と返す。もっかいGPSを見て、そして気づく。こ・・・これはエクストラステージだったのだと!
エクストラステージ 「秋葉山ヒルクライム(途中)」 高低差約260m 平均斜度7.7% 距離3.5km
ここに至ってついに登坂中止を決断。地図で見るとここは「空」という地名らしい。月に向かいて空へ。そして諦める・・・。詩人・・・。さて、急な坂を下るとて誰ともすれ違わない。やっぱりミスコースか・・・。GPSにトラックとルートをぶち込んでナビさせてるのにこのミスコース・・・。まったく役にたたねえGPSだなあ。
また見てしまった・・・。
天竜川は愛宕山へぶつかるところでぐるりと進路を南西へ向ける。地図をみると不思議な流路だ。ここからは南下ルートなのだけど、単なる下りは期待できない。だって川の上流へむかっているのだから。どこかに天竜川上流の分水嶺となるポイントがあって、その先からは下り。それを信じてペダルを回し続ける。
それは丁度愛知県との県境。そこを超えた先にPC3があった。しばし休憩してスパゲティを食い、陽が傾きつつある中をひたすら南下。西風が体力を少しづつ削っていくけど、もう後半だしどっかの時点でコースの進路が東向きになる。そうしたら後は追い風って訳で、気も楽だ。
そうして新城の方からコースは東南向きに。浜名湖へ向けて走る頃にあたりは暗くなる。丁度5時?7時くらいが交通量の増加する魔の時間帯。しかも浜名湖沿いになって道も狭くやや気を使う感じだ。気温も落ちてきた。日中ももっとも暖かいところで11度程度。このころには7度前後くらいだったのではないだろうか。
しかし新城だ、天竜川だ、大井川だと書いているけど土地勘がないので実はよくわかってなかった。全く何も知らない土地を走るのって不安もあるし疲れがちだけど楽しい。知らなければ知らないほど膨らむ楽しみってあると思う。知っていたら秋葉山になんか登らなかっただろうけど、登ったからこそみつけた楽しみもあるに違いない。真っ暗な雨の中のミスコースなんて楽しくないけど。
だんだんとPC間が短くなってきて精神的には助かる感じ。このPC4からPC5までは45km程度。しかもフラット追い風とあって、ついに鉄血長征号が火を吹いた。いままでたくさん飯を食ってきたおかげか脚がぐるぐる回ってくれる。ふと気づくと後ろに長い列が。そのままミスコース。ミスコーステロ。再編成し、ふたたびボイラーに火を。やがて後ろには細君をあわせて数人しかいなくなったところでPC5到着。
PC5の手前にはこんな歩行者用トンネルが。なんか未来的・・・。The Death Star Attackって感じ。
PC5からゴールまではわずか21km。すっかり気温は下がりきりキンキンに冷えた星空の下を二人走り続ける。真っ暗な農地の中の道を静かに走り続けていると西海岸でのライドのことを思い出す。そういうと彼女もそう思っていたとのこと。静岡には西海岸の(内陸の深夜のブルベ走行の)雰囲気があるよ!山も海もあって海の幸も山の幸もうまく温泉もあって、さらに西海岸の(内陸の深夜のブルベ走行の)雰囲気もあるなんてすごい。静岡に暮らすのもいいよなあと二人でこつこつと走りきり・・・ゴール。
秋葉神社と秋葉山頂を見れなかったのは心残りだけど、まあ勘弁してやるってことで・・・。
おわり