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【落武者魂】 10 PCHR 200km
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落武者魂

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第一回さよならブルベ その二



 裏庭ではピザパーティが。庭にある釜で焼かれたピザやおかし、果物、ドリンクがテーブル狭しと置かれゴールしたサイクリストたちがすっかりくつろいでいた。Lisaへブルベカードを渡し、チェックを受けてからサインをする。9時間45分くらいでのゴール。おお、10時間切れたじゃないか。正直ビリだろうと思っていたのだけど「まだまだ。道に迷って電話してきてる人たちもいるのよ」とのこと。すでにゴールしていたライダーの多くはすでに見知ったーーーつまりブルベのベテランたちーーー人たちで、このあたりの道は目を瞑っていても問題ない連中ばかり。特に道に迷うところもなかったけど、慣れていないとつまらないところでミスをしてしまうのだろう。一回間違えると長い直線ばかりだから気づきにくいし復帰もしにくいのかもしれない。まあ、単純にゆったり飯をくったり景色を眺めたりしている人たちも多いのだろうけど。

 さてさて、くつろぎながら残っていたサイクリストへ最後のご挨拶。ありがたいことに残念がってくれる。Gregはここに残るためにとわざわざ仕事を紹介してくれようとしてくれたほど。さすがにそういうわけにもいかないけど。PBPで会いましょう、と伝えると彼とLisaは熱心に細君をタンデムでPBPへ参加するように口説き始める。タンデムは前方からスタートさせられるから道が空いてて気持ちいいんだ、とかホテルを押さえておくから気楽に来いとか。そういえば彼らと仲良くなったのは日本で唯一タンデムでPBPへ参加したkazさん夫妻と彼らが知り合いだったというところだったなあ。正直、今の実力でタンデム1200kmは考えられない。けど細君は少し真面目に考え始めているようだ。まあ、考えるだけなら・・・。

 ピザを食いペプシを飲みながら、ふと考えこむと涙が出てくるんじゃないかという気持ちにさせられてしまう。そろそろお暇することにしよう。ちょうど男女二人組のサイクリストとすれ違うように僕らは彼の家を後にした。そうだ、さっきの二人組は去年の300kmの後半、Santa Rosaあたりから抜きつ抜かれつ走ったんだよな。GGRのゴールでも出会った。300kmブルベのとき「なんであなたはいつも後ろから来るのかしら?」と聞かれたのを覚えている。いつか「やたら道に迷って、そのたびにあなた方に抜かれたんですよ」と言おうと思っていたのだけど、結局言えず仕舞いになったんだな。



 オシマイ。
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第一回さよならブルベ その一

 12月の半ばに一端冷え込んだものの、それから暖かい感じで過ごしている今日この頃。ついに---残念ながら---ベンチュラエリアでの最後のブルベの日がやってきました。最後のブルベなんだけど、今年最初のブルベ。いままでは早朝に2時間かけてスタート地点へ行っていたのだけど、今回は近くの街で前泊することにしました。というのも細君を連れてタンデムでの参加なので。細君にとってはこれが米国での最後のブルベ。日本ではタンデムの活動が著しく制限されているのでこれだけの距離を一気に走る機会ももう無いかもしれません。

 さて、6時にスタート地点へ到着するとコーヒーショップを借り切るような感じで受付をしています。ちなみにスタート地点とゴール地点が今回は若干離れています。といっても1km弱。ゴールは主催者宅なのですが、早朝にあまりに人が集まると近所からクレームがあるみたいで、近くのショッピングセンターがスタート地点になったよう。でもショッピングセンターも買い物客以外は駐車するな、という話になっているみたいで、そのコーヒーショップ割当分に駐車してくれとのこと。なかなか大変そう。それはさておき、受付へ行くとすでに近々に帰国することになってしまったことを伝えてあったので、残念だなあという話が少し。でも受付をどんどんしなくちゃならないし、スタートも迫っているのでそういう話は後ほど、ということで。



 参加者は70人弱。ずいぶん多くなったなあ。ちなみに今日の気温は最高19度最低8度とのこと。すでに10度を越えている感じです。つまり全然寒くない。一応ウィンドブレーカーも着て4枚重ね。去年は一日中ウィンドブレイクジャケットとウィンドブレイクタイツを着ていたことを思うとちょっと不思議なくらい。スタート前にいつも通りのちょっとしたブリーフィング。シークレットコントロールとかインフォコントロールなど、初参加者にもわかりやすく説明。「あやべえ、シークレットコントロールがあるって言っちゃったよ」「クイズの答えが『Randonneurs USA』に関する四文字だって言っちゃったよ」とかアホなジョークばかり。そんなこんなでスタート時間に。空があかね色に変わる中、65人ちょっとの集団が流れ出て行きます。



 スタートからしばらくは上り。夜が明けるに連れて気温の変化が起こるせいだろう、強い風が吹き始める。去年の直進すらおぼつかない強風を思い出すが、それほど強くはならず30分もしたら進路が変わったこともあるが風はやんでいった。寒さも和らいでいるけど、ところどころにひどく冷たい空気が溜まっている場所があり、さすがにこれ以上の薄着はまだできないな、と思いつつも人によっては半袖ジャージのみ。薄着過ぎるだろとも思うけど。どうして人によってこうも気温への感覚が違うのかと不思議だ。寒さ暑さへの耐性も訓練次第で鍛えることができるんだろうか。そんなことを考えているうちに空はどんどん明るくなっていく。そしてはっきりと日がでてくると日があたっているところは暖かいけど木陰にはいるとやはり寒いという感じに。下りで30miles/hが続くような場面では体の芯に寒さがしみとおってくる。足の先が痛い。やはり冬は冬、なめてはいけないのだ。



 ちょっとした峠のてっぺんにシークレットコントロール。主催者のグレッグにハンコを押してもらう。ウィンドブレーカーを脱ぎ、指ぬきグローブに。僕のタンデムにはトランクをつけているので脱いだものをしまいこめて便利この上ない。こういった装備は重さが気になるが、重さっていってもツーリング向けに製作されたタンデム自体が軽くないわけで・・・。ところで、写っているタンデムのカップル(本当はカップルでも夫婦でもない)は日系人のサイクリストで、おにぎりをボトル状の入れ物に入れてボトルホルダーに差している。タンデムの女性はよく走行中に周りの人達におにぎりを配ってまわるそうだ。ちなみに僕らも朝ごはんにおにぎりを食べてきていた。おにぎり最高。ついでに彼女はGRRを寝ずに完走したと誰かが言っていた。たしか70時間ほどだ。300km地点までは一緒だったから、そのペースから考えると本当に寝ないで走りきったのかもしれない。



 かなり日が出てきた。前にここを走ったときはひどく曇っていてつまらん通りだったけど、今日はカナル諸島の島々まではっきり見える。そうだよ、これが正しいカルフォルニアだよな。



 CP2は山あいの田舎スーパー。店員が「なんでみんなレシートほしがるのか不思議だよ」と言っていたと妻が言う。しかしタンデムでもそれぞれレシート取んなきゃならないからめんどくさいのよね。


photo by Shai

 長い上りでPCHRのSuper Randonneurs記念ジャージを手配したシャイに抜かれながら写真を撮られた。しかし次の長い下りで抜き返し写真を撮り返す。彼は初めての600kmでゆっくり寝てもなお30時間切りするほどの剛脚なのに、なんで苦しそうに登っているんだろう、と思ったらピストだった。この先の下りは伏せてるだけで60km/h超えるのに・・・。



 次の登り返しをインナーでダンシングしていたらキチン!という音がしてペダリングがすっぽ抜ける。あっと思う間はあったので右足をペダルから外して着地するが、後席の細君はそこまではできず結局倒れてしまった。この状況は明らかにチェーン切れ。Tour de Foothillのことを思い出す。あのときはちぎれかけたチェーンがディレイラーを巻き込んで破壊していたが・・・今回はただ切れただけのようだ。リカンベントのダンが登ってきて心配してくれて停る。どうしたんだ?チェーンが切れたみたいだ。つなぐのはあるか?無いみたい。9速用のはあるぜ?と申し出てくれるがこれは10速。でも使えるんじゃないかなと彼はリカンベントを路肩に寄せる。地面にヴィッパーマンのコネクトリングが転がっていたので拾う。片方だけだったが壊れてはいないようだ。もう少しあたりを探すと残りの一個もあってそれも壊れてはいない。ダンに大丈夫そうだと伝えてチェーンをつなぎ直す。ふう、なんとかなりそう。コネクトリングの予備を忘れちゃだめだな、と思い顔をあげる。あ!なんという偶然。ここはアメリカに来て初めてのブルベで細君が足をつって転んだところそのものじゃないか!






 CP3までの長い下りで一気に前グループとの差を縮めて彼らが食事しているところに追いついた。カーペンティリアという街で、ここでレシートをもらわなきゃならない。商店街になぜだか「Torii」がある。奥にあるのは小さな商店街。いったいなぜこんなところに「Torii」が・・・。

 残り100kmをだらだらと走る。CP4も「この近所でレシートをとれ」というもので、ウェンディーズがあるのを知っていたので迷わず突入。やたら混んでいて時間がかかったけど、ハンバーガーをおいしく頂きました。時間を考えると10時間は切れるような気がしてきた。今回の200kmは1500mしか登らないのでタンデムでチャレンジするのにちょうどよかったんだけど、10時間を着ることは結局できないだろうと思っていた。でも、このまま行けばなんとかなりそうだ。だけど多分、僕らがビリじゃないかなあ。ウェンディーズにいた時も誰も走り去るのを見なかったし、CP3からこのかた二人しか見かけてない。

 僕らのタンデムは平坦な場面ではそこそこ速度を維持できるんだけど上りが続くと辛い。もうなんども走ってなんども辛い気分なSanta Rosa通りもこれで最後だと思うと、でもやっぱり辛い。へたれていると後席から「立ちこぎ立ちこぎ!」「へたれない!」などと檄が飛ぶ。なんであなたはそんなに元気なのですか?でもたしかに立ちこぎした方が楽に登れていく感じがする。やはりふたり分の体重をこめるというのは侮れない効果があるようだ。

 Moorparkの住宅街に入り一気に下る。その勢いを殺さずGregの家へ走り切ると、自転車置きが路上に置かれていていくつか自転車が置かれていた。さらに家の前の芝生にも自転車が倒してあって、近所の子供たちがはしゃぎまわっていた。ちょうどGregが出てきていて、裏にまわってLisaにカードを提出するように言う。裏庭に回るとピザの匂いが・・・。

 つづく