ぼやきはそれくらいにしておいて、Tour de Foothillは名前こそ威勢がいいのだけど、距離は説明した通り100km(50kmも選択できる)。総上昇は1000mと平凡で、コースも全体的に平凡なもの。ロサンゼルス内陸の郊外住宅地をくるりんと回る感じ。自宅からはクルマで1時間前後かな。7時スタートというので6時半には到着するように家を出発。気温はやや低めということなので、年のため長袖ジャージに防風ベストを着て。
さて、会場に到着するものの、去年と同じく駐車場は埋まってしまっているので、やはり去年と同じようにほんの少し離れた会社の駐車場へ置くことにする。誰も停めていなかったけれど、僕が停めるとあっという間に皆が続きすっかり駐車場は埋まってしまった。アメリカ人でも「あの人がやっているから・・・」という意識はあるんだなあ。でもまあ、別にこの駐車場は停めちゃいけないわけじゃないのだけどね。早速クルマから自転車を降ろそうと外へ出ると・・・寒い。キーンと冷え込みが! 気温は約6度。初秋装備じゃちょっと寒い。走り出せばちょうどいいんだろうけど、暖かい車内から出てくるとかなりきつく感じる。細君は気分悪くしてしまうものの、いつものことなので様子を見ながら準備をする(なんだかマラソンとかツーリングとかの寒い朝になると酷い吐き気がするんだそうで。どうにもならなないけど)。しかし、去年は寒かった記憶なんて無いけどなあ。天気も曇ってるし。まだ山火事が続いているようなので、その影響で日が翳っているのかね。地面が若干濡れていて、少し雨が降ったのかも。そういえば、周りの参加者のウェアも去年より厚着のよう。
落ち着いたので、受付を済ませスタート地点へ。若干人が少なくなっているような気もするけど、それでも十分な参加人数。隣と前にタンデムの人たちがいて、横のタンデムはなんと5本もボトルを。三カ所もレストストップのある100kmライドで、しかもこの気温ならどう考えてもデッドウェイトだろう・・・。と思っていたら「君、Cool Breezeでも走ってただろう」と言われる。Cool Breezeは8月頃にベンチューラで開催される自転車イベント。僕らは200kmの部に参加したのだけど、200kmは僕らしかタンデムはいなかったのでどこかで話したわけではなく、どこかで僕らを見かけたらしい。まあ、タンデムも十分少ない上にアジア人だからな。来年も出るの?と聞かれたので「来年は日本に帰るんだ」と細君が答える。


-寒そう・・・。
スタート前に懐かしいLiveSTRONGの黄色いバンドが配られ、合図とともにみんな腕を突き上げて欲しいとのこと。日本ではバンド「ブーム」として終わってしまったけど、別にブームのためにやっているわけじゃないんだよね、この黄色いバンドは。アームストロングの自伝を読む限り、人となりは好きになれないけど、活動を続けていることは素直に尊敬。日本のホワイトバンドはいったいどこへ行ったのか。世界から貧困は消えたのだろうか。
スタートしてしばらくは街の大通りを数百のサイクリストが埋め尽くす。寒いうちは関節がこわばって、とくに足首がきしむので軽く軽く。そのうち体から発する熱で寒さも感じなくなって来たのでタンデムらしくぐいぐい加速。なにしろずーっと平坦な大通り一直線なので、こういうところはタンデム自転車は得意な場面。ああ、気持ちいいねえ自転車サイコー!

そのうち農村ぽいエリアに入り、小さなアップダウンが繰り返されダンシングなんかも入れながら走る。今日は調子いいよ本当に、ヘメットダブルセンチュリーのときはダンシングもろくに出来なかったもんねえ、あれは長旅のあとだったからやっぱり無理だったんだよ、いやいや長い出張の直後に300kmブルベとか大丈夫だったぜ、とか会話しつつ短い急坂を立ちこごうとした瞬間、後ろの方でガリガリガチャン!という不穏な音が。なにか落ちた?でも普通に走れてる、ように思える。なんかしゃりしゃりいう?かな。坂の上の方で一旦とめてサドルに座りながら見ると、特に変わったことはないかな。そのまま登り切って広い通りに出たところでフロントディレイラーを変速しようとすると、変速しない。え?何?と停止して自転車から降りる。すると・・・フロントディレイラーが台座ごと下方にスライドしてしまっているようだ。しかもガイドプレートも歪んでいる。マジかよ、と考える。とりあえずフロントディレイラーを諦めてフロントの変速は諦めるか、手でかけ直すというのが思いつく。昔、糸魚川ファストランで変速機をぶっ壊したときと同じように。しかしまだ30kmくらいなのにこれか・・・。100kmでもDNFしかねないな。神も仏もありやしない。足を痛めつけ、心を砕き、自転車までを壊すとは。神なんかいない。悪いことは確率論なんか無視して重なッていくんだ。
すると、スタート地点で前横にいたタンデムの人たちが現れて「大丈夫か」と聞いてくる。正直に「大丈夫じゃなさそう。フロントディレイラーがね・・・」とやっていると、彼らも自転車を置いて変速機をグイグイとひっぱりあげようとする。台座を緩め、ワイヤーを外し、総掛かりで。さらにSAG(サービスアンドギア)車までやってきて、大手術だなと言ってくる。確かにフロントディレイラーだけが問題なのではなかった。チェーンも半ばぶち切れそうになっていて、あるチェーンのコマは片側だけのプレートだけでかろうじて繋がっているのみ。よかった、ダンシング中に切れなくって・・・。二人分の体重と脚力をこめた立ち漕ぎ中に切れていたら、酷い落車になっていただろう・・・。彼らは手を真っ黒にしながら僕の自転車を直してくれる。なおすったって、元通りになるわけはなくフロントの変速は限定的なものに。限定的っていっても、歪んだプレート、歪んでしまった台座、歪んでしまった変速機である程度は変速できるのだからありがたいというほか無い。僕のタンデム「さくら号」はフロントトリプルなのだけど、そのうち一番内側が使えなくなってしまった。一カ所だけ大きな坂があるけど、なんとかなるだろう。足首への負担がでかくなったことは、今日以降の問題になるだろうけど。
彼らが来るまでは、最悪は3連続DNFかとも思っていたがなんとか心を完走側に引き止めることが出来た。もしここで、あるいはこれが原因でリタイヤしていたらなかなか立ち直れず、来シーズンへ突入するところだった。10kmほど進むと休憩所。水を足し、マフィンを食って再スタート。片足のタンデムライダーの女性をみたものの、自転車に乗っているところは見かけることが出来なかった。そういえばマラソンでも片足の人は結構みかける。そうだ、どんなどんなことにでも立ち向かうことができるはず。ようは気持ちの置きようだ。信じればなんでもできる。強く信じれば、明日にでもサマージャンボ宝くじが当たるはず!本当に、強く願えば!


さくさくさくっと走って、このライド最大のクライムポイントへさしかかる。さっきの故障を知っているサポートの人が「グランニーギア(フロントの最小ギア)が使えないんだろう?大丈夫か?」と聞いて来たので「練習に丁度いいぜベイベー」と答えておく。たしかに厳しい場面は数度あったものの、なんとか立ち漕ぎでクリアできる範疇。むしろ、最近は29Tに頼り過ぎで坂をしっかり上ることを怠っていたのでちょうどいい考え直しの機会となったくらい。

坂を上り切ると給水があったが、それはパス。このあと下り切るとすぐに次の休憩所だし。実際にはその休憩所もほとんど長居することは無くゴールまで走る。長い長い直線はタンデムの持ち味発揮でシングルライダーたちをごぼう抜きできるものの、信号ストップがあると加速が悪い僕らのタンデムは一気に追い越される側に回ることに。それでもなんとかお昼ちょっと前にゴール。去年はメキシカンだったが今年はイタリアンの給食。残念ながらアイスクリームの配給が無くなっているところに不況を感じるが、そもそも寒くて食う気はしなかった。最後に助けてくれた人たちに挨拶すると、次回の参加イベントの話になりどうやら2月のエルカミノリアル&ポーカーライド(320km)で顔を合わせることができるようだった。そのときを楽しみにしながら、今日の日はお別れ。危うかったけど、楽しい一日であった。
