気温一桁。降雨。払暁の中を走り始めるブルベ集団。前を走るBMCが跳ね上げる水しぶきが視界を覆う。口の中で砂を噛みながら俺は走る。
ライトスピード乗りは言う「ふざけんな!また山があるぜ!」
「この峰を越えれば下りですよ」語りかけられた女性ライダーはもはや答えることもできない。
「このジャージの文句はまさに俺たちのためにあるな!」スペイン系サイクリストが笑う。
急減速するカウルドトライク、斜面を転がり抜けて行くボトル、独り向かい風のサイクリングロード、油の流れ落ちたチェーンが鳴く。
”制限時間一杯使えばおいしいものをいろいろ食べながら走れるよ”
”レースじゃないから、全然ラクちん”
”むしろ寝れるから超余裕”
嘘 を 言 う な !
土砂降りの中、深夜の渓谷沿いの山道を一人登り続ける。あと200km、あと300km。「なんで俺たちは走り続けるのか」と自らに問い続ける。それがブルベだ!それがブルベだ!それがブルベだ!
9h44m
次回予告 アイドル☆マスター さとう☆
「ロサンゼルス300km」