よくまあ、こんな体たらくでこんな遊びを続けているものだ。
I氏はしっかり食べているようで羨ましい・・・ねたましい・・・。
ちょっとテーブルにつっぷしてまどろむ。
もう時間なんかテキトーなんで、どんくらいこの店にいたのかわからなかったが、ログをみてみると一時間以上は滞在していたことは確かなようだ。ずいぶん休んでたんだな。デニーズにはドリンクバーは無いなあ、と思っていたらI氏が「飲み放題オプション」があることを発見し、温かいお茶も飲むことができた。まあ、多少なりと休めた。次のPCまで行こうか。
次のPCの芦川駅に行く間にコンビニによる。これからの気温の低さを恐れて、レインパンツを買うことにした。レインパンツなんていうおしゃれなもんじゃなくって、雨合羽だな。ついでにカッターも買って膝丈で切る・・・つもりが切りすぎて小学生の短パンみたくなってしまった。まあ、しかたないね。カッコ悪いけど、それを履くことにした。まあ、考えようによっては蒸れなくていいかも。
芦川駅は特筆することもない小さな無人駅。時間をみると既に12時。
えーと、このまま行くと山中湖は4時くらいかなあ。ちょうど夜明け前で中途半端だなあ、思い切ってどこかで休めば朝の素晴らしい景色の富士山を望むことができるんじゃないだろうか。
道が盆地を抜けようとし始めると、交通量もさっぱりと減ってしまった。最後の大きな峠、若彦峠(トンネル)。だいたい2~2時間半かな、と目星をつけて登り始める。疲労と眠気であまり出力が出ない。ひたすら登り一本の峠道。こういう場面では、どうしても集中力が散漫になりやすい。どこかで寝る場所はないかと思うが、I氏はこの峠に多いというイノシシを懸念して、もう少し良い場所にしようという。
イノシシで思い出したが、八ヶ岳周辺では野生動物に注意だ。麦草のてっぺんのあたりでは多くの鹿をみかけた。また、野辺山からの下りでは、目の前を狸が横切ったことも・・・・・・。一歩間違えれば事故につながりかねないだけに、疲労の極みにあっても念頭において注意しながら走って欲しい。
さて、I氏に置いていかれて一人旅。どうもこの谷間は風が吹き込んできて寒いな、とか思いながらとぼとぼと登っていく。どれほどたっただろう、I氏が「ここで休もう」と道の駅のようなところへ案内してくれる。建物の中には入れなかったが、いくらかは風をふせげる場所をみつけ、二人で休む。もう若彦トンネルまではひと頑張り。
しかしまあ、寝ては見たものの・・・寒い、僕の寝床は風が巻き込んできている。なんとか調整するものの、うまくいかない。風邪ひきたくないなあ、などと思いつつうとうとしていたら、枕元(枕なんかないけど)でカツカツカツカツと足音がしてハッと目が覚める。でも誰もいない、何もいない。その後も、誰かが僕らの寝床をのぞき込んでいるような気がして、台湾の参加者が追いついてきたのかな、と目を覚ますものの、やっぱり何もなし。うーん、夢うつつというやつだったのだろうか。それとも野生動物が通りがかったのだろうか。
ここを30分ほど休んで立ち去り、若彦トンネルを越えたのはもう午前3時過ぎ。残り時間は7時間を切ったが、もう残り距離はあまりない、ような気がする。でも道志みちだけでも3時間くらいはかかるよな。余裕があるとしても2時間程度かな。下りきればそこは河口湖畔。セブン-イレブンへ突入し、しばし休憩。I氏はとても眠そうで、どうみても疲れているのだけど、全然疲れていないという。たぶん、疲労というものについての感覚というか概念が違うのだろう。ちなみに、こういうやりとりをするといつも漫画「キリン」の中で出てくるやりとりを思い出す。若者がベテランのライダー”キリン”に「カタナは高速になるとハンドルがぶれますよね」と聞くと「ぶれねーよ」って返され「後ろから見てたってあんなにハンドル取られているのにッ」って思う場面を。
僕はといえば、相当疲れている。体がエネルギーを欲しているのでペヤングを食った。外は寒いので「海外のコンビニみたいに店内でテキトーに飲食できればいいのにな」と思いながら食す。北海道ヘブンウィークでは、夜間にずぶ濡れのランドナーたちを店内でパイプ椅子まで出してきて食わせてくれたコンビニの店主がいたなあ。あれは根室だったか。本当にありがたかった。
ここでも30分休んだ。走りだすが、I氏はあまり疲れがとれてないようにも見える。夜明けの時間だからな。ふと見ると、視界一杯に富士の姿が群青の闇の中から浮かんできている。なんたる巨大さ。刻一刻と変わる朝の光の中で、富士は様々に色と姿を変えていく。こんなのを見るのは初めてだ。群青の空を背景に、赤く染まる富士。ああ、これはまさしく赤富士だ。それはほんのひと時の事だったが、これ以上に忘れえぬ富士の姿はもう見ることは無いだろう。
河口湖からはだらだらと登って山中湖。すっかり空は晴れ渡り、PCでの撮影スポットではこれまでにないほどパノラマ的な富士山を撮ることができた。風もなく湖面に映る富士もくっきり。初日の闇・霧・雨の渋峠に佇んでいたことがウソのようだ。台湾チームもこの風景を見ることが出来れば良いが。
そういえば、僕のボトルだが、K氏は残念ながら体調不良でDNFしたようだった。しかし一日目の夜を渋峠で過ごし、二日目の夜は美ヶ原で過ごすとは・・・・・・。それだけで体調不良になってもおかしくないだろうと思うが、丈夫な人たちのことはよくわからない。結局、ペットボトルで過ごしてきたのだけど、思ったよりは不便ではなかった。登りは山道で交通量も少なく速度も出ないので、ペットボトルの蓋を開けるという作業はさほど支障がなく、下りでは飲む必要は特にない。平坦路が長く続くような所では、やはり自転車用ボトルでないと面倒がありそうだけど、幸いながらこのコースにそんな場所はほとんど無い。一番大きなデメリットは、カッコ悪いことだけだ。どうみても初心者っぽい。
道志みちへの入り口、山伏峠はもはや峠という峠とも思えない。いつのまにか通過してしまった、くらいの感じで道志の渓谷へ入る。ここからはほとんどダウンヒル。陽も昇り、どこかで防寒装備を脱ぎたいなと思っていたが、いくらか眠気も強まって来たので広い歩道で少し休むことにした。・・・・・・あっという間に30分たっていた。ふたりともアラームもなく寝転んでいたので、一歩間違えるとタイムアウトしそうだったな。これで余裕時間は1時間前後になった。パンクの一回二回はなんとかなるが、大トラブルがあるとビミョーだ。それに道志が終わって相模に入ると、意外とアップダウンがあるんだよな、とぼんやりした頭で思う(実際には高尾へ向かう道にはアップダウンは面倒なほどではない)。
道志ではやたら飛ばすクルマに時々出くわしてうんざりするが(日中の方が平和っぽい。朝方は観光に向かうサンデードライバーがかっこつけて飛ばしているようだ)、津久井あたりからの通勤ラッシュはそれに輪をかけて酷い。週末といえど、土曜日は物流が動いているのでダンプカーとトラックが多く、高尾南方のか細い道路はどれも詰まってしまっているのだ。便秘状態でどうにもならない道路を「ああ、最後まで気分よく走れればなー」とか思いつつだらだら進み、ゴールの高尾駅へ滑り込んだのはタイムアウトの一時間前。想定通りといったところ。
しぶとく走り続けている台湾チームのふたりを迎えてから、風呂と仮眠をとるべく高尾の健康ランドへ向かった。なんというか、もう走らなくていいんだと思うと、ものすごい開放感・・・・・・。
自分なりのSR600Fujiコメント
・登りでの大変さを、下りで取り返せる無理の無いコース設定。ただし、下りでのワンミス・ワンアクシデントは、致命的な結果を招きがち。十分に注意し、注意力が低下したらただちに休憩しましょう。
・下りで取り返せるコース・・・・・・は天候に左右されやすいです。とくに高所が多いSR600では天候不順である可能性もありますが、無理はしないように。あくまで遊びです。楽しめる程度の「無理」で。
・標高2000メートルの気温は、外界とは全然違います。悪天候下では簡単に低体温に陥ります。防寒防雨装備は十分にしたほうが無難です。下りでも役立つし。
・途中、補給が難しい場所が続く場面があります。緊急用の補給食は常に備えたほうが良いですよ。
・ボトルを置いてかないように(台湾の人もボトルを置き忘れ、たまたまK氏が拾うという心あたたまるエピソードもw)。
そんなわけで、SR600 Fujiでした。特にこだわりがなければ時間の制限の(ほとんど)無いツーリスト部門で参加し、絶景を陽の光の下で楽しむといいと思います。それでは事故に気をつけて、みなさんも楽しんできてください。布団の中から応援しています。